第55話 ボルテックファイアの力

翌日になり葵の言う通りに朝から勉強をして過ごしているが、時間の使い方が自分では無いようで変な感じだ。ただ今回は俺の集中力が切れる前にサバイバーの端末が鳴ってくれた。


『『ピピッ』』

「葵、行こう。せっかくだから一昨日買った貼るカイロも使ってね」

俺も念のために貼るカイロを張り付けてから装備を整えて部屋を出た。

「それじゃあ、今日は最初に『ボルテックファイア』を使って見るから葵はいつでもフォローに入れる様に待機しておいてもらえる?」

「はい、分かっていますよ。安心して下さい」


俺と葵は、いつもの様にロードサイクルを飛ばして現場へと向かう。


「葵、今日モンスターを倒し終わったら手袋を買いに行ってもいいかな。スピードを出すと流石に手が冷たくて厳しい」

「分かりました。勉強が一段落したら一緒に行きましょう」


勉強が一段落したらか……

葵はちょっと真面目すぎるんだろうな。俺は別に一段落しなくても良いんだけどな。

そう思いながらロードサイクルを走らせると前方にモンスターの大きな姿が見えて来た。


「トロールが二体か!」


以前見た巨体のモンスターの頭部が二つ見える。

前回は耐久力の高いトロールを倒すのに、使える全てのスキルをほとんど打ち尽くす事になってしまった。

今回は『ファイアボール』の代わりに『ボルテックファイア』を携えて挑む。

『ヴォルテックスファイア』はまだ一度しか使った事がないから射程距離がイマイチ掴めていない。確実に当てる為にも、出来るだけ近づいた方がいいだろう。


「葵、右側のやつに撃ち込んでみるから援護を頼んでもいいか」

「もちろんです。任せてください」


トロールに気取られ無いように距離を詰めて行くと、そこにはトロール2体の他にオークも2体暴れていた。

先にオークを仕留めた方がいいか?

でも、消耗する前に『ボルテックファイア』の効果を見たいしな。


「葵、まかせた!『アイスジャベリン』」


俺は走り出しながらオークに向けて『アイスジャベリン』を放ち牽制してから、オークの対応は葵に任せて今回のメインターゲットであるトロールを目指す。

あと二十メートルという所まで近づいたが、敵が大きいので既にかなりのプレッシャーを感じる。

ただ、確実に当てるためにもう少し近づきたい。

速度を緩めずにそのままトロールへの距離を更に詰めスキルを発動する。


「あたれ!『ボルテックファイア』」


炎雷の塊が放たれ一直線にトロールに向かって行き、そのまま胴体部分に命中し風穴を開けた。

腹に大きな風穴を開けたトロールはそのまま消滅してしまった。


「うそだろ……トロールを一撃。どんな威力なんだよ」


『ライトニング』二発でも仕留めきれなかったトロールを一撃で葬りきってしまった。

やはり神木さんは規格外だ。

劣化した俺のスキルでこの威力。彼のオリジナルスキルは本当に凄まじいものがある。


「凛くん、残りのモンスターも頼みます」


葵がオーク二体を相手にしているので、まだトロールが一体残っている。

俺はすぐさま距離をとって『ウインドカッター』をトロールの足に向かって連発した。

これは前回学んだ。トロールの足を潰してから集中攻撃をかける。

自重で倒れたトロールに向けて『ライトニング』を2発放ちその後続け様に『エクスプロージョン』を放ちとどめをさす。

前回である程度パターンが作れたのでほぼ完勝と言っていい出来だが、同じタイミングで葵もオーク二体を葬り去っていた。

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