第29話 二人で初出動
俺は今までオリジナルのダブルスキルホルダーを見た事は無かった。
恐らくダブルスキルホルダーなど俺たちの学園内でも数人いればいい方だろうが、もしかしたら葵一人だけかも知れない。
しかも葵のスキルはどちらも攻撃スキルかつ違う系統のスキルだ。
これだけ恵まれたスキルを持っているサバイバーはそうはいないだろう。
また葵にレベルやスキルの事を詳しく聞く事が出来た。
学校の授業でもある程度の内容は学ぶ事は出来るが、実際に優秀なサバイバーから話を聞く機会など無かったので非常に勉強になった。
葵のスキルにも俺のスキル同様に使用回数制限というものがあるが、回数は俺の3倍程もあった。
正直これだけのスキルと回数が使えるのであれば、俺より断然上だと思う。先日の件も自力でもなんとかなったんじゃないかとも思うが、そこは予想外の数のモンスターに襲われて動転してしまったと言う事だろうか。
いずれにしても他のサバイバーと詳しく比較した事は無かったが、俺の『フェイカー』で模倣したスキルは威力だけで無く回数も劣化して減少するようだ。そしてレベルアップと共に使用回数が増えるところは同じらしい。
もう一つは、レベルアップする事でスキルの威力が上がるらしい。
俺のスキルは元々大幅に威力が減退しているので今まで気付く事は無かったが、もしかしたら俺のスキルも同様にレベルアップと共に威力が増しているのかもしれない。
『ライトニング』の威力が増す様ならもっと上のランクのモンスターにも通用する気がするので期待したいところだ。
そして最後の情報は、俺の常識とは異なる物だった。
それは、ごく稀にだが、サバイバーの中にはレベルアップのタイミングで新しいスキルが発現する者がいるそうだ。
これは、最初に発現したスキルはそこから変わる事が無いと言う一般的な常識に対して抜け穴に近い情報だ。
発現したスキルが変わる事は無いが増える事はある。
これが学園の授業でも意図的に伏せられているのか、それともあまりにレアケースなのでスルーされている情報なのかは俺にはわからないが『フェイカー』以外のオリジナルスキルを発現する可能性があると言う事は、俺には結構大きな事だった。
『『ピピッ』』
俺と葵の端末が同時に音を発した。
「葵、モンスター討伐の依頼だ。準備しよう」
「はい、分かりました」
葵は自分の部屋に支度に戻り、俺も装備を身につけて準備を済ませてから部屋の外に出て葵を待つ。
葵もすぐに出て来たが、彼女は特に目立った装備品を身につけてる様子は無い。
い。
「葵は、防具とかつけないの?」
「私は動きやすい様にアンダーアーマーを着ているんですよ」
「武器は?」
「残念ながら、モンスターと白兵戦をする自信はないので持っていません」
確かに割り切った感じで有りだとは思うが、流石に武器無しは心配になってしまう。
「良かったらこれ使ってよ。いざと言う時の護身用。まだ一回も使ってない新品だから安心してよ」
俺はそう言って予備の小さな刃のナイフをホルダーごと葵に差し出した。
「いいんですか? 嬉しいです。ありがとうございます」
葵はそう言って笑顔でナイフを受け取ってくれた。
これで少しでもリスクを減らせれば良いが、いくら近接戦闘が苦手でもナイフの一本も持っていないとは、葵は案外抜けているところもあるのかもしれない。
それからロードサイクルに乗って現場に向かうが葵も俺と同じくロードサイクルに乗っていた。
しかも見るからに俺の二万円のロードサイクルよりも高性能な感じの自転車だ。それなりのスピードで飛ばしているが葵は難なく並走してくるのでもしかしたら同じロードサイクルでも性能差があるのかもしれない。
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