第119話【夢を実現させる具体的な行動】
「それで私は具体的に何をすればいいか教えてくれるかな?」
「そうだね。僕はまず領主に会って話をするからそれに同行して欲しい。
会う名目はセーラ嬢の定期検診だ。
そこで話をあげて協力を要請するつもりだ。
話が上手くいったら知り合いに協力を要請していくからその時はシミリにも幾つか回ってもらうことになるだろう。
とにかくまずは領主への協力要請からだ」
僕はそう言うと薬の準備をして領主邸を訪問した。
「ようこそおいでくださいました。セーラお嬢様がお待ちです。こちらへどうぞ」
一応、準備の最中に先行して手紙で領主邸に訪問の旨を伝えていたが、あっさりと通されるとは思ってなかったのでほっとした。
「こちらでお待ちください。お嬢様をお呼びして参りますので……」
応接間に通された僕達はセーラ嬢が来るまで部屋に準備された紅茶を飲みながら打ち合わせをしていた。
「かちゃり」
入ってきたドアが開く音がしたと思ったら誰かが飛び込んできた。
「お兄ちゃん!いらっしゃい」
セーラが元気いっぱいに挨拶をしてきたので僕も目線を合わせる為に片ひざをついて笑いかけた。
「これはセーラお嬢様。体の調子はいかがですか?」
「うん!あれから目もよく見えるし、体の調子も凄くいいよ!」
「それは良かったです。では念のために失礼して検診だけさせて頂きますね」
僕はそう言うと彼女に鑑定魔法をかけて確認した。
「うん。特に問題ないですね。
前の病気も完治していますし、新たな病気も発生していません。
すこぶる健康体ですよ」
そう言うとセーラは笑顔でお礼を言った。
「ありがとう、お兄ちゃん」
その時、ドアからクロイスが執事とともに部屋に入ってきた。
「これはクロイス様。お久しぶりでございます。
お嬢様の病気は完治しております事、確認させて頂きました。
今後は成人された時に念のために検診を受けるくらいで大丈夫かと思います」
僕の報告を聞いてクロイスは満足そうに頷いてセーラの頭を撫でて言った。
「うむ。そなたには世話になったな。
おかげでセーラも元気になり家の者達にも活気が戻ってきた。
本当に感謝している。後はセーラの成人の儀の時に側に居てもらえれば助かるだろう」
「はい。その時は必ず伺うようにしましょう」
頭を下げる僕にクロイスは
「ふむ。今日はやけに素直でおとなしいではないか。
以前の振る舞いからは考えられないが何か
クロイスの言葉に僕は素直に答えた。
「
「願いだと?」
「はい。これは領主であるクロイス様にしか出来ない事であり、この領地の発展のためにやるべき事になります」
「ほう、面白い。話してみるが良い。
そなたにはセーラが世話になった恩もある。本当に我が領地に利となる話ならば考えてやろう」
「では、順を追ってお話します。
まず、私は先日女神様にお会いし、知の富を広めるように言われました。
その使命を遂行するために女神様は私に知の祝福を与えてくださりました」
「なに!?女神様と会ったと?さらに祝福も頂いたと言うのか?」
「はい。そのおかげで私は薬師でありながら他の職業に関してもアドバイスを行えるようになりました」
「それを証明出来るものはあるのか?女神様の名前を出したからには虚偽だった場合は娘の恩人と言えども庇うことは出来ないぞ」
「もちろんです。試しにどの職業の事を聞かれてもお答え出来ると思いますが、これを見て頂く方が納得して貰えるかと思います」
僕はそう言ってステータスプレートをクロイスに提示した。
もちろん数値偽造バリバリのプレートであったが……。
「これは……。確かに追加スキルに『女神の祝福』とある。
それで女神様は具体的にそなたに何をするようにおっしゃったのだ?」
(普通にお願いしたところで無理な事でも女神様の言葉とすれば聞いて貰えると踏んで準備していて正解だったな。
でも僕の能力を一部ばらさないといけないから正直気乗りはしなかったけど、どうせやろうとしている事は能力をばらさないと矛盾が出てしまうからここで領主に話して協力を得た方が得だろう)
そう思いながら僕はシミリと考えた作戦を話し始めた。
「女神様は私に得た知識を使って多くの職業の発展に貢献するようにとおっしゃいました」
「では、この街に学校を造りそこで弟子をとるか?」
クロイスの言葉に僕は首を振り、自分の考えを言った。
「私達は先日までクロイス様の領内にあるリボルテの街へ依頼で出かけておりましたが、馬車で10日と遠方であるが為に道中で盗賊に遭うことがありました。
しかも往復ともちょうど中間地点でした」
「何?盗賊とな?それならばすぐに衛兵を送り討伐させよう」
「いえ、盗賊はすでに討伐しておりますので大丈夫なのですが、あの場所に中継する場所、出来れば村程度で良いので商人が安心して休める場所が提供できないかと考えておりました、そうすればあの周辺の治安も良くなり、リボルテへ向かう馬車もカイザックへ帰る馬車も安心して行き来が出来ると思います」
「なるほど、確かにな」
「私はその村にシンボルとして学校を建てたいと思っています。
確かに双方の街から5日とへんぴな場所ですが勉強するのに不要な誘惑が少ない方が上達が早いかと思います」
僕の話にクロイスは考え込んだ。
確かに突飛な話で実現するにはかなりの投資が必要だ。
しかし、領内の治安と街を繋ぐ商人が安全に旅が出来れば街間の発展や税収の向上が見込まれる。
「クロイス様。女神様は私に多くの職業の発展を手助けするようにと言われましたが、この領内でとは言われておりません。
クロイス様が不服であれば別の地方にて女神様のお言葉を守ることも出来ますが……」
「ま、まて!分かった。その話を了承しよう。ただし、一年待ってくれ。
街道の途中に村を整備するなど簡単に出来るものではないからな」
「ありがとうございます。
では概要が完成した暁にはお礼にお嬢様の魔術師としての才能を開花させて差し上げましょう。
きっと素晴らしい魔術師に成長されるでしょう」
僕はその後、クロイスと新しい村の全体像を話し合い領主邸を後にした。
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