第90話【エスカの実力向上と新たな課題】
エスカの修練は意外と順調だった。
魔力を安定させる指輪の効果とエスカ自身の魔力上乗せが順調に会得出来たからであった。
「聖なるマナよ。癒しの光となりてこの者の傷を癒したまえ。ヒール!」
エスカの力ある言葉に光輝く魔力が患者人形を包み込んだ。
特訓当初は傷を塞ぐのが精一杯だったエスカのヒールは今では下手なハイヒールよりも回復させる事が出来るレベルになっていた。
「よーし。切り刻まれ人形での特訓は合格だ!
次は毒に侵され人形での訓練に入ろうか」
僕の言葉にエスカは本当に嬉しそうに答えた。
「本当ですか!?ありがとうございます。
これで今まででは治せなかった怪我人を治療することが出来ます」
エスカは傷口の塞がった切り刻まれ人形を抱き締めて感慨にふけっていた。
端から見るとエスカがおっさんに抱きついているようにも見えて何ともコメントしづらい様子だった。
「まっまあ、良かったんじゃないかな」
僕は気を取り直して次の患者人形をエスカの前に置き、説明を始めた。
「今回は単純な怪我ではないからヒールでは治らないよ。
これは毒虫に刺された時を想定してある毒に侵され人形だ。
この患者の治療方法は主に二つあるんだけど、まずは簡単な方は『解毒薬』を飲ませてからヒールをかける方法。
もうひとつは『解毒魔法』をかけてからヒールをかける方法だ」
僕はそう言いながらテーブルに用意していた解毒薬の瓶の蓋を開けて人形の口から流し込んで飲ませた。
すると人形の顔色が徐々に良くなりグッタリした人形となったのでそこにヒールをかけて回復させた。
「こんな流れになるんだけど、今の治療方法は幾つかの問題点があったんだけど分かったかな?」
回復させた人形のリセットをしながら僕はエスカに質問した。
「えっと、解毒薬がその患者が侵されている毒にあっているか不明なこと、あと口から液体を流し込む際に患者に意識がない場合はかなり危険な行為であること、えーと、あとは顔色で毒が抜けたと判断してましたけど本当に抜けたのかが不明な状態でヒールをかけたこと・・・ですかね」
その答えに僕は少しばかり驚いた。
まさかそこまで完璧な解答が出来るとは思ってなかったからである。
「凄いな、完璧な解答じゃないか。
じゃあ、ついでに模範行動を示してくれるかい?」
「はい。えっと、まずは・・・」
そう言いながらエスカはリセットさらた毒に侵され人形の前にひざをついて容態確認を始めた・・・が、次の瞬間、くるりとこちらを向くと涙目で訴えてきた。
「そう言えば私、鑑定スキルを持ってないので毒の種類の確定が出来なかったんでした。
どうしたら良いのでしょうか?」
勇ましく患者に向かったので何か策があるかと思ったらやっぱりいつものエスカだった。
「まあ、そんなところじゃないかと思ったよ。
ちょっとこれを使ってみようか」
僕はエスカにある魔道具を手渡すと使い方の説明をした。
「これは患者の状態をスキャンする魔道具だ。
この部分を握りしめて魔力を通してから輪っかになっている部分を患者の体にそって動かしてみてくれ。
その魔道具に登録させている毒や病気ならば解析結果が表示されるのでそれに対応した薬を使えばいい」
エスカは言われた手順で患者をトレースし、解析結果を確認した。
【毒虫の毒:毒レベル中*早急に治療が必要、放置すると悪化の可能性大】
「!? 何この魔道具凄い!こんなのどこで手にいれるんですか?
これが治癒士の間に広まれば治療ミスもかなり減るんじゃないかな?」
「あはははは、それはオルト君のオリジナルだから今のところ何処にも売ってないと思いますよ」
シミリからも補足と言うか突っ込みと言うかの説明が入った。
「まあ、魔道具のことはひとまず置いておいて患者の毒が特定されたよね。
で、その魔道具でこの解毒薬もスキャンしてみてよ」
エスカはまたまた言われるままに薬瓶をスキャンした。
【毒虫の毒専用解毒薬:毒虫の毒を完全に消してしまう薬。
他の毒には効き目が薄いので注意】
「なにこれ?こんなピンポイントな毒消し薬なんで初めて見ました・・・いえ、そうじゃないんですよね。
この魔道具のおかげで分かっただけなんで、今までもそういった薬はあったのに鑑定スキルがないから知らなかっただけなんですよね」
エスカは魔道具の性能に驚きはしても、すぐに理解をして正確な分析をしていた。
「どうやら理解したようだね。
それが分かったならば一つ目の方法は簡単すぎて練習にもならないだろうからいきなり二つ目の方法、魔法で毒消しをする方法に入るけどいいね?」
新しい魔法を教えるとの言葉を聞いたエスカはさらに真剣な表情をして僕の話を聞いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます