第82話【彼女が決闘で賭けるものは】
「オルト君、この雰囲気ではどうやら逃げられそうにないですね。
周りが殺気立っていますから断ったらおそらくですが、このギルドでは今後仕事は受けられない可能性が高いですね」
「まあ、そうだな。
正確に言うと【このギルドに顔を出すのが難しくなる】だけどな。
ギルド自体が依頼受注拒否はしないからね」
僕はため息をついて「仕方ないな」と彼女に向き直り答えた。
「別に他の冒険者達がどうとか正直どうでもいいのだけど、ここのやり方があるなら話くらいは聞く事にするよ。
だけど僕は君の名前さえ知らない状態で君が何を考えているか分からないんだ。
まずは、それから説明をするのが筋ではないかな?
但し、こんな公の場で僕達に不利益になる不確かな情報を発言すればそれなりのペナルティーをおって貰うからそのつもりでお願いするよ」
「わかりました。自己紹介が遅くなりすみません。
私の名前は『エスカート』と言います。
職業は治癒士です。決闘の方法はリボルテギルド特有の『酒豪決闘』でお願いします」
「「「おおっ!!久しぶりだぜ!!」」」
周囲の冒険者達から歓声が上がる。
そしてエスカートが続けた言葉に一同騒然となる。
「それで賭ける対象ですけど、私が勝った時には私をあなたの弟子にして下さい!」
その言葉を聞いた僕は頭の上にクエスチョンマークが飛び交っていた。
「は?治癒士の君が薬師の僕に弟子入りしたいとか理屈がわからないな」
僕の疑問には答えずにエスカートは続けて超特大の爆弾発言をした。
「そして、私が負けたら・・・下働きでも何でもしますから私と結婚してください!!」
「「「「「はあっ!?」」」」」
今度は僕だけでなく、周りの冒険者達も声を上げていた。
「いや、待ってくれ。
全く意味がわからないし、いきなり結婚とか言われてもこっちが困るよ」
「オルト君?どういう事か説明して貰えるかな?」
後ろからシミリの冷たい視線が刺さりまくっていた僕は逃げ道を探したが、結局エスカートに説明を求めるしかなかった。
「すみません。私、思い詰めると考えがエスカレートしてしまって短絡的に行動してしまう事があるんです。
だって、こんなにも綺麗で心地の良い魔力の持ち主に出会った事は今まで無かったんですもの!」
(そう言えば魔力濃度が分かるスキルがあると話していたな。
かなりの希少スキルだとは思うけど特殊すぎて周りの認知度があまりないのかもしれないな)
「話はなんとなく理解したよ。
でも、悪いんだけど僕にはすでにシミリという妻がいるし、今の生活に他人を入れるつもりはないよ。
特に畑違いの弟子なんかとるつもりは全く無いから」
少し強めの言葉てハッキリと拒絶した僕にエスカートは目に強い意思を秘めて答えた。
「分かっています。ですから決闘して欲しいのです」
「いや、だから僕の都合は・・・」
今一つ煮え切らない僕にエスカートが言葉の追い討ちをかけてきた。
「わかりました。では、私が負けたらあなたの奴隷にしてください!」
「いやいやいや!待ってくれ、話が飛躍しすぎだ!」
どう話を矯正しても絶対に諦めないエスカートだった。
「わかったよ、決闘は受けよう。
但し、条件は僕が決める。君が勝ったら君の疑問に答えてあげよう。
僕が勝ったら僕の事は諦めて必要以上の過干渉はしない事。いいね?」
「うー。わかりました。でも、ひとつだけお願いがあります」
「何?」
「酒豪決闘では回復薬や回復魔法を使わないでください。絶対に不公平になりますから」
この娘こ、前に酒豪対決したことがあるのか?それとも他の人が対決していたのを見ていたからなのか?
(マズイな。前世の僕はともかく今の僕はあまりお酒を飲んだ事が無い。
正直どれだけ飲めるか見当がつかないんだよな。
まあ仕方ないか、もし負けても情報提供程度でなんとかなるだろう)
「了解した。お互いが審判をして不正をしたら敗けにする」
「良し!お互いの了承があったな!さあ宴の始まりだ!!マスター酒だ!酒を持ってこい!」
横で話を聞いていた冒険者の一人が勝手に開始の合図をぶちまけた。
(今からやるんかい!)
ーーー僕の心の叫びを他所に予期せぬ酒豪決闘が開始のはこびとなった。
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