第77話【美味しい食事は最高の幸せ】
「お願いします!油の入手方法とマヨネーズの作り方を教えてください!」
ディールは僕の前で頭を下げて懇願してきた。まあ、そうなるだろうが元々教えるつもりで作ったのだから問題はない。
「いいですよ。
じゃあまずは“油”の作り方から教えましょう」
「ほっ本当ですか?ありがとうございます。
それで報酬はいかほどになりますか?」
「ああ、報酬ですか。
特にいらないと言いたいですがディールさんにだけ無償で教えたとなると何かあった時に自分にも教えろと言われるでしょうから何か形だけでも貰いますね。
何でも良いのでディールさんが決めてください」
僕は元々無償で教えるつもりだったのでディールがレシピに見合う報酬を決めてくれたらいいと思っていた。
「わかりました。では“油のレシピ”、“唐揚げのレシピ“、”マヨネーズのレシピ”の3件を教えてもらう報酬として、オルトさんとシミリさんがリボルテに居る時は“デイル亭に無料で宿泊する事が出来る権利”を報酬として出しましょう。
ですが、あくまでも“宿泊”だけですよ。
私は料理人ですから宿泊代は無料にしても料理代はきちんと頂きますからね」
ディールはそう言うと白い歯を見せてニカッと笑った。
「ありがとうございます。
十分すぎる報酬ですがありがたく受けさせてもらいますね」
僕とシミリは頭を下げてお礼を言った。
「では、あらためて“油”から教えますね。
まず、ディールさん。あなたは料理人ですから“料理調合”は出来ますよね?」
「ええ、料理人ならば大抵の人が使えると思います。もちろん私も使えます」
「では、この菜種を料理調合で油に変換します。
量は手にのるくらいで一瓶くらいの油に変換出来ますよ」
(普通、植物から油を搾るには相当量が必要だけどさすがファンタジー、一握りで一瓶採れるとか効率良すぎだと思うな)
「菜種?ですか。
それは何処で手に入る物ですか?」
「ああ、僕は菜種と呼んでますがこの辺りでは“カーナリ草”という名前の薬草がそれにあたりますので必要ならばギルドに依頼すれば簡単に手に入ると思いますよ」
「カーナリ草ならば聞いた事があります。
あの薬草から油が作れるとは知りませんでした」
ディールは僕に言われたとおりにカーナリ草を料理調合して油を作りだした。
「凄い・・・。
こんな形で新しい料理方法が使えるようになるなんて!
でも、本当にこんな革命的な事を私なんかに教えても良かったのですか?」
「そうですね。
一応、僕も料理は出来ますがやっぱり料理スキルを職業にしている料理人には敵わないんですよ。
だから知り合いの料理人に頼んで僕が考えたレシピを完成させて貰ってるんですよ。
やっぱり食事は美味しい方が嬉しいじゃないですか」
僕はもちろん料理スキルも持っているから普通の料理人クラスのものは作ることが出来るが、人が作ってくれた美味しい料理を食べるのもやはり幸せだったので、最近は出来るだけ街に一人くらいは食事に行ける知り合いの料理人をつくりたいと考えていた。
「是非ともマスターして美味しい料理を提供出来るように頑張りますね」
ディールはそう言うと製法を確かめるように調合を丁寧に繰り返した。
「油の調合は大丈夫そうですね、では揚げ方についての注意点を・・・」
僕は鞄から砂時計を取り出してテーブルの上に置き、次に温度で色が変わる温度計も準備した。
「これは、なんですか?」
「砂時計と温度計です」
「こっちの砂時計は食材を油に入れてから取り出すまでの時間を均一にするために使います。
実際は食材の色を見て判断するようになるでしょうけどある程度の目安になるでしょう」
「こんな道具初めて見ましたよ。
何処で手にいれたのですか?」
「これは僕が作ったので売ってないですね。
で、こっちが温度計です。
揚げ物に最適な温度を確認するために使います。
この棒を油に浸けて色が赤色に変わったらちょうどいい温度ですので揚げてもらって大丈夫です」
僕が説明するたびにディールは衝撃を受けていたが、いちいち相手にしていたら説明が進まないのでわざと大半をスルーさせてもらいながら話を進めた。
「次にマヨネーズの作り方ですが、卵の卵黄を・・・」
「ちょっと待ってください。
今メモを書いてますから・・・」
ディールは必死になって僕の説明を記録していった。
「ーーーとりあえずこんなものですね。
分かりましたか?」
「一応は理解出来たと思いますのでモノになるまで練習したいと思います」
(真面目だなぁ。唐揚げはそこまで極めなくても大丈夫だと思うけどね。
まあ、究極の唐揚げが完成したらそれはそれで僕も美味しい物が食べられるから良いんだけどね)
その後、説明の終わった僕達はディールが準備してくれた部屋に案内されてゆっくり休む事にした。
僕は明日から暫く冒険者ギルドで依頼を受けるつもりだった。
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