第47話【輸入品の適正価格】
「で、これを私に見せたと言う事は商談の話になるのですよね?
まさか私に食べさせて感想が欲しかっただけとは言わせませんよ」
ゴルドはニッコリと笑うと僕達にぐいぐいと言葉で圧力をかけてきた。
「えーと、実はまだ量産できる形になってないんです。
なにせ今日先程ゴルドさんに逢う前に試作を作ったばかりですから・・・」
「・・・・・・」
「ほう。それはタイミングが良かったのか悪かったのか分かりませんが、我が商会に卸す意思はあると取っても良いのですよね?」
「まあ、僕達が売り込みに店を回るよりも効率も信用も良いですからね。
とりあえず、この店舗から発信してみますか?
そのくらいならば今ある素材で何とかなると思いますからね」
「それは良いですね。
しかし、モージル焼きに使っても旨いのだけれどそれだと単価が大したことないから儲からないですね。
何か別の料理を考えなくてはいけませんね」
僕はその言葉にお好み焼きのトッピング方式がふっと浮かび提案してみる事にした。
「そうですね。
普通のモージル焼きだけだと屋台で銅貨一枚程度で買えますけど、あれは小麦粉にキャルベとモアのバラ肉を加えて焼いただけの料理なので原価もかなり安いですよね?
だからそれらに付加価値を着けてワンランク上のグレートモージル焼き・・・って名前は後から考えるとして、とにかく屋台ではなくこういった食事処で提供するような素材を使ってみてはどうですか?」
「ふむ。まあ、小麦粉とキャルベは必須として肉のランクを上げるのと他に卵を入れるとか麺を一緒に焼くとかですかな?」
「そうそう。そんな感じで色々試作してみると良いかもしれ・・・って麺があるんだ?
僕は今まで見たことなかったけど・・・」
「おや、麺をご存知でしたか。
情報が早いですね。
実は最近の事だが料理錬金をしているグループが持ち込んできたんですよ。
ベースは小麦粉らしいんだが、食ってみたら意外と旨かったから定期的に仕入れているんだ」
(うどんみたいなものなのか?ちょっと興味があるな)
「それって此処で食べられますか?ちょっと興味があって食べてみたいんですが・・・」
「いいですよ。すぐに準備させましょう。
おーい、ちょっと来てくれ」
「はい。旦那様お呼びでしょうか?」
「ああ、厨房に麺ラー焼きを注文してきてくれ。今回は普通に作って良いからな」
「分かりました。直ぐに伝えておきます」
待つこと数分・・・。そこには明らかに前世で見たことのある食べ物が目の前にあった。
(これ、どうみても“焼きうどん”だよな。
“焼きそば”ではないところが惜しいところだな。
しかも名前からすると“焼きラーメン”だし(笑))
「どうかされましたか?」
「いえ、ちょっと想像していた物と違っていたので驚いただけです。
これ、味見しても大丈夫ですか?」
「ええ、その為に注文したのですから是非試してみてください。
味付けは香辛料になっていますので少々辛いかもしれませんよ」
僕はゴルドの説明を聞いてから麺ラー焼きを口に運んだ。
(見た目はうどんだが食感はパリパリとしていて味付けは辛め・・・。
ああ、お酒のつまみだな。
イメージ的には皿うどんに近いかな?)
「如何ですかな?まだ始めたばかりですので認知度はあまり無いですが、ぼちぼちオーダーが入るようになっている商品ですよ」
「いいんじゃないですかね?
おそらくだけど相性はかなり良いものが出来ると思いますよ。
早速試作して貰いますか?調味料もある事ですし・・・」
「うーん。そうなんですが今は忙しい時間帯なんで厨房に試作を作らせるのはちょっと厳しいかと思いますから、先に話を終わらせてから厨房にてご一緒に試作をしてみるではいけませんかな?」
「分かりました。
それではのちほどお願いします。
シミリ、他に何かあるかい?」
「えっと、ゴルドさん。
この街で特に外国から来ている品物についてなんですけど、正直言って結構吹っ掛けられてないですか?
特に装飾品は暴利の域に達しているような気もするんです」
「ハハハ、シミリさんはなかなか手厳しいですな。
確かに諸外国から来る品物はどれも割高です。
しかし、何故それらが高いかを考えた事はありますかな?」
「えっと、輸送コストがかかるからですか?」
「勿論それもありますが、それだけではありませんよ。シミリさんも商人ならば“適正価格”の意味は分かりますよね?
物には全てコストがかかっています。
食べ物にも着る物にもそして装飾品にも・・・。
気にされている装飾品は我が国は後進国で加工技術が未熟な為に良い物が出来ないので外国の装飾品を欲しがる者が多い。
ですので彼らは航海のリスクを背負った上で売りに来るのです。
シミリさんはそれでも高すぎると思いますか?」
「ごめんなさい、浅慮でしたね。
でも、やっぱり悔しいですね、カモにされてる感じがして・・・。
何かこちらからも付加価値のついた高級品を売り付けてやりたいですよね」
シミリはゴルドの言葉に納得はしながらも愛国発言を繰り返しては妙案はないかを考え込んでいた。
「ハハハ。シミリさんは若いなぁ。
いいよ。若い頃はそのくらい野心を持って商売に突き進めれば運が良ければ一山当てることもあるだろう。
その運が隣にいるんだから私としては非常に羨ましいんだがね」
ゴルドは笑いながらエールを煽った。
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