第46話【ゴルドは調味料チートに驚く】
「お待たせしました。
こちらカンカンの果実飲料になります。
お料理は旦那様が来られてから追ってお出し致します」
従業員と入れ違いにゴルドが個室に入ってきた。
「お待たせしましたかな?」
「いいえ、大丈夫ですよ。
それより時間を取って貰ってありがとうございます」
僕はゴルドに礼を言ってから軽く会釈をしてゴルドが席に着くのを待った。
「それでお話なのですが、まずゴルドさんのお話からお聞きしますのでどうぞ」
「分かりました。
それでは商談になりますが先日引き受けた薬について、口コミでの宣伝を中心に店舗の広告しかまだしていなかったのですが、効き目が良くて卸して頂いたものの在庫がほぼ無くなっていると報告を受けています。
もし可能ならば卸して頂けると助かります。また、もし他にも何か新しい商品があれば商談をしたいと思いまして・・・」
「分かりました。
薬に関しては後程在庫分をお渡ししましょう。
ちょっと素材が不足してきた物に関してはギルドに発注して増産に対応していきましょう。
新作に関しては・・・後でシミリから話させます」
「おお、ありがとうございます。
商会において品切れは商売のチャンスを捨てることになりますからね。
しかし、オルト君は大した調薬スキルをお持ちですね。
あれほどの薬は今まで扱った事はありませんよ」
「ありがとうございます。
出来るだけ多くの困っている方が買えるように供給していきたいと思います」
ゴルドの話が一段落したのを見計らってシミリが話を切り出した。
「私からのお話は大きく2つあります。
ひとつは新たな商談の話。
もうひとつはこの街の貿易についてです」
「ほう。どちらも興味深いですな。
では、先に商談からお願いしても宜しいかな?」
「はい。とりあえずこれを見て貰えますか?オルト君さっきのアレを出してもらえるかな?」
「ああ、これの評価をゴルドさんに聞いてみる事にしたのか。
でも、これ単体だとあまり意味がないぞ」
「それは分かってますよ。
ゴルドさん。申し訳ないですがこの店にモージル焼きみたいに小麦粉を焼いた料理ってありますか?もしあれば味付けをしないで準備して貰えるとプレゼンがしやすいのですが・・・」
「味付けしない?もしかして香辛料とかの類いなのかい?」
「香辛料に限りませんが、今回は調味料になります。
私達はモージル焼きで試食しましたが小麦粉がベースならば大抵の料理に合うと思いますので・・・」
「ふーん、面白いじゃないか。
いいだろう。モージル焼きならばメニューに無くとも厨房に言えば直ぐに焼いてくれるよ。おーい、ちょっと来てくれ」
「はーい。ただ今参ります。
お待たせしました。
旦那様ご用件は何でしょうか?」
「悪いが厨房に言って味付けをしないモージル焼きをひとつ焼いて貰ってくれないか?私からの注文だと言っていいから頼むよ」
「はっはい。分かりました。
直ぐに伝達致します」
「ああ、頼むよ。焼けたらすぐに持ってきてくれ」
ゴルドは店員に指示をするとこちらを向いて話を続けた。
「すぐに持ってくる事でしょう。
では先に現物を見せて貰えますかな?オルト君の絡んだ案件ですので、大変興味がありますね」
「分かりました、こちらになります」
僕は鞄から調味料を取り出すとテーブルに置いた。
「こっちの黒い液体がソースでこちらの黄色いクリーム状のものがマヨネーズになります。
味は・・・食べられてみた方が分かりやすいかと思います。
どうやら頼んだ物が来たようですので」
「お待たせしました。
味付け無しのモージル焼きでございますって本当に味付けしてませんが宜しかったでしょうか?」
「ああ、ありがとう。それで大丈夫だ。
何かあればまた呼びますから下がって良いですよ」
「はい、分かりました」
店員が下がるとゴルドは調味料を興味深く見て使い方を僕に聞いてきたので説明をしていった。
「まず、先にソースをかけます。
本当はハケがあれば良かったのですがありませんので箸で広げてからマヨネーズをかけます。
量はお好みで増やして良いと思います。
そうしたら熱いうちに食べます。どうぞ!」
「凄い色だが匂いは良いですね。
それでは頂くとしますか・・・。
ん?これは!?・・・旨い!!初めて食べる味付けだが濃厚なソースの味と食欲をそそる匂い、そして程よい酸味のアクセントのマヨネーズ。
これは本当にあのモージル焼きなのか?
あんな小麦粉に野菜と肉の切れ端を混ぜて焼いただけの料理がこんなに旨かったのか?」
「如何でしたか?調味料の革命と言える驚きだと私は思いましたけど・・・」
シミリが興奮気味にゴルドに感想を求めた。
「正直、驚きましたよ。
一体どう作ればこんな味にたどり着けるのか、全くを持って理解出来ませんよ」
やはり調味料チートはゴルドにも受け入れて貰えたようだ。
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