第35話【病気の予測と治療方法】
「良かったのですか?」
セザンヌが契約書を準備に部屋を出た後でシミリが僕に聞いてきた。
本当に僕に病気が治せるか不安があるのだと思って聞き返すと意外な返事が返ってきた。
「あの程度の要求で良かったのですか?と聞いたのですよ。
オルト君に治せない病気なんかあると思ってませんし、オルト君で無理ならば他の誰にも治せないでしょう。
それに関しては別段心配はしてませんが領主のお嬢さんに失礼を働かないかだけが心配と言えば心配です」
シミリも言うようになったなぁ。
それでこそ僕のパートナーに相応しいと思うし、僕も気を使わなくていいから助かる。
「お待たせしました。こちらが契約書になります。
二部準備しましたので双方ご確認ください」
「これで良いだろう?さあ詳しく説明をしてもらうぞ!」
「そうですね。まず無光鏡裂傷についてですが、これはその名前に入っているとおり目の中にある光を感じ取る部分に傷が入って光を感じる事が出来なくなる傷害で病気ではありません。
そしてハイヒール等の回復魔法で治らなかったのは不運にもある条件に当てはまってしまったからです」
そう言って僕は鞄から液体の入った瓶を取り出した。
「本来ならばお嬢さんにお会いして幾つか質問をさせて頂いてから確信をもってお話したかったのですがこの場で話せと言われるのならば予測で話させて貰いますよ。
大体が患者を見ずに薬を出す薬師は居ないと思いますが・・・」
「確かにそうだが、その前に君の予測を聞いてみたい。
私が納得するならば娘に会わせよう」
「分かりました。
不運な条件とは魔力暴走です。
恐らくですがお嬢さんの天職は魔術師になるはずです。
まだ魔力制御が未熟な魔術師の卵である未成年の方が魔毒に侵されると魔力暴走を引き起こしてしまい回復魔法が正常に機能しないのです。
そこに回復魔法をかけた事により過剰に増えた魔力が体を傷つけてしまったという訳で失明したのは偶然弱い部分が傷ついただけです」
「そんな話は初めて聞くぞ!命惜しさの作り話ではないのか!?」
「信じるか信じないかは領主様次第ですが僕は分かる知識をもってお答えしただけです。
ちなみに、この薬は魔力制御薬です。
治療する際に必要な薬ですよ」
「今の話が本当だったとして、治療の手順はどうなる?そちらの手持ちの薬で治せるものなのか!?」
「はい。まずはお嬢さんから聞き取り調査をさせて頂きます。
そして確信を得ましたら少々部屋を薄暗くして頂きます。
お嬢さんに光が戻った時に強い光は危険ですからね。
次に先程の魔力制御薬を服用して貰い、この砂時計が無くなるまで待ってから点眼薬を瞳に入れて包帯で目を覆わせて頂きます。
少し時間がかかりますが半刻ほどお待ち頂いてから仕上げに師の秘薬を服用してから包帯を外してゆっくりと目を開けると少しずつ周りが見えるはずです。
最初はぼんやりとですが3日程点眼薬を続ければはっきり見えるようになるはずです」
「間違いないな?」
「僕の見立てが合っていれば・・・です。
もしお嬢さんとの話の時に違う病気と判断すればその時に違う治療方法を提示しますよ」
「分かった。君が相当な医療知識を持っている事だけは理解した。
まずは娘に会って症状の確認と娘と話をしてみてくれ。
出来るならばこの後すぐにだ」
「治療の場にシミリも同席してもいいですか?相手は幼いお嬢さんですので僕が話をするより女性の方が安心すると思いますので」
「そうだな。そうしてくれ。
セザンヌよ、直ぐに我が屋敷に帰るから馬車を着けてくれ!」
「分かりました!お気をつけて!」
こうして僕とシミリは領主邸に向かうのだった。
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