第3話【このステータスプレート壊れてないですか?】
「ふぅ疲れた、あいつら本当にしつこかったな。
僕ひとりなんかをこんなに追ってきても仕方ないだろうに、まあ国境を越えてしまえばさすがにアイツらも諦めるだろう」
外は大降りの雨が続いていた。
今にも崩れそうな山小屋の中で食事の為におこした火を見つめながら僕はこれからの事を考えていた。
いま僕は国から追われている状態だ。
罪状は“ステータスプレートの改ざん”となっているが、もちろんそんなのは
この世界では15歳の成人になる日に神により世界から天職が与えられる。
内容の確認にはステータスプレートと呼ばれる魔道具を発行して確認するやり方だった。
ステータスプレートの発行はこの世界の人族ならば貴族の子息でも孤児院の孤児でも平等に無料ではあるが絶対に作らなければならないルールがあった。
しかしステータスプレートに記載された天職は変更する事は実質不可能で勝手に違う職を営むことは重罪として罰せられた。
ただ、職種の変更は無理だが付随する数値によってエリートか凡人かのスタートが決まる現実に金持ちによるステータスプレートの数値を改ざんする事案が多発。
このような悪癖が蔓延したために能力なき人物が幅をきかせて出世し、有能な叩き上げ出身の者達が無能な上司に翻弄される事案が問題になった。
それを重く捉えた国王がすぐさまステータスプレートの数値改ざんをした者は貴族・有力者を問わずに即奴隷行きとする法律を作った。
僕も15歳になった時にステータスプレートを作成し、審査を受けたがステータスプレートに書かれていた職業は“万能職”ステータス数値は全てにおいて“Max-99999”と表示されていた。
ちなみに普通の成人男性の平均ステータス数値は100前後で特殊特化型の天才的数値でも300くらいだったのでどのくらい異常値か言うまでもないだろう。
さらに万能職と言う職業は誰も聞いた事が無い職業で、強いて言うなら“何でも出来る
僕の【このステータスプレート壊れてないですか?】の言葉を無視して・・・。
普通に考えて、初めて授かったプレートの内容を変えるとか成人したばかりの元孤児には不可能だと思うのだが、頭の固い役人達の間では数値が異常値だった場合は全て改ざんと因縁を付けて始末する悪習慣が蔓延していたらしく当然その場で捕まり牢屋に直行となってしまった。
その後、僕は奴隷として鉱山に移送中に護衛の隙をみて逃げる事に成功したが直ぐに捜索隊が組まれて山狩りが行われた。
しかし普通ではないステータスを持つ僕の逃げ足についてこれる者などおらず発見出来ずに諦めたようだった。
護衛達は正直に逃亡を許したと報告すれば関係者一同厳罰がくだるのは容易に想像出来たので恐らく上役には“魔物の襲撃にあって死亡した”との虚偽報告がいくことだろう。
上手く追手を撒いた僕は改めて自分のステータスプレートを取り出して眺めた。
(しかし、本当にあり得ない数値だけど
職業【万能職】
筋力【Max-99999】
体力【Max-99999】
知力【Max-99999】
魔力【Max-99999】
速度【Max-99999】
追加称号【魔道具創造アイテムクリエイター】
(あー、確かにこの数値は酷いな・・・。
普通に国の軍隊と戦っても負ける気がしない数値なんて驚異にしかならないからな。
本当にどこの
その時、僕はふとある事に気がついて試してみる事にした。
「ライト!」
僕の力ある言葉はソフトボール大の光の玉を目の前に出現させ、まわりをを明るく照らしていた。
(やばい、本当に魔法が使えるのか・・・)
この世界で魔法なるものが一般的に存在しているか全く知らないのだが、少なくとも僕は使えるようだ。
ステータスに【魔力】の項目があるので多分使えるような気がして試したのだが本当に使える事には驚いた。
(これはいよいよマズイ事になったぞ。
おそらく今の僕は力を覚醒・認識したばかりで手加減などは出来ないだろう)
このまま街に行っても絶対に何かやらかす自信があったし実際のところライトノベルではテンプレ(お約束)の
(前世でどれだけのライトノベルを読んだと思ってるんだ、僕のラノベ好きを舐めるなよ。テンプレごとき特訓で乗り越えてやるぞ!)
僕は前世で得た知識の中で持てる知識をフル活用させて使える魔法の種類を導きだし、書き上げていった。
僕は攻撃魔法・防御魔法・回復魔法・支援魔法と一通り試したが攻撃魔法だけは中級までしか試せなかった。
周りを破壊し過ぎると目立つからだが魔法のイメージは浮かんだ事からおそらく使えるんだろうと判断したからもある。
ただ、ファンタジーもののお約束である
魔法の実験結果に満足した僕は次に剣術や腕力の使い方の特訓をした。
と言っても当然ながら剣など持っていないのでその辺で拾った木の棒で獣相手に戦っただけなのであまり特訓にはならなかったが卒なくこなせたので自信はついていた。
しかし、一度だけ背後からいきなり獣に襲われた時に反射的に力一杯殴り付けたらグシャグシャのミンチになってしまい二度と全力で殴る事はやるまいと誓うことになった。
(ふぅ。これは予想以上にヤバイ力だな。
なんとか力をセーブする方法を考えないとうっかりで人を殺しかねないぞ。
そうだ!生前読んだライトノベルで強すぎる力をセーブする魔法を使う主人公がいたな、あれが出来ればうっかり惨事が減るかも知れない)
「魔法創造!能力封印!!」
(どうだ!?うまくかかったか?)
僕は横の木を本気で殴ってみた。
『バキバキ!ズシーン!!』
無理だった。
やはりそんな魔法は簡単には再現出来なかったようで効果は全くなかった。
(やはり無理だったか・・・)
半分諦めかけた僕はぼんやり眺めていたステータスプレートのある文字を読んだ事により全てを理解した。
(そうか、魔法で何とかしようとするから無理だったんだ。
魔道具で制御すればリミッターをかける事が出来るはず)
その後、色々試行錯誤をした僕は腕力の能力を百分の一まで押さえ込む魔道具を創る事に成功した。
まあ、それでも一般人の10倍はあるのだが悪人に絡まれた時に咄嗟に反撃するにはこのくらいあった方がいいだろう。
とりあえず能力の制御は出来そうなので明日には街に向かうとして特訓の最終日は暮れていくのだった。
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