第2話【テンプレ通りにならない現実】
ーーーどうしてこうなった?
現実の世界で死んだ筈の僕の記憶は異世界へ飛び、ひとりの孤児に刻み込まれ記憶の上書きをした。
なぜだ?僕の好きだったライトノベルの主人公は下級ながらも貴族に生まれ、家のしきたりに囚われない三男あたりで幼少年期には不自由なく暮らしていけ、成人してからは将来の夢として騎士などになり、身近な令嬢を妻にして幸せに暮らすのがテンプレじゃないのか?
だが、現実では意識が戻った時には僕は孤児院になっている教会で他の孤児達と雑魚寝をしている状態だった。
(なんでこんな状況になってるんだ?本当に転生していたのには正直驚いたがこの状況は元々の世界での境遇より悪いんじゃないか?)
僕は自分の体を確認してみたが14~15歳位の体にみすぼらしい服を身に着け、肉体労働をさせられていたのか、真っ黒に日焼けした体には筋肉だけはしっかりと付いていて体調は悪くなかったのが唯一の救いだった。
しかし、ぐるりと周りを見ると自分より小さな子供達ばかりで状況から自分が一番の年長者の印象を受けた。
(あまり良い状況ではないようだな。
逃げ出そうにも周りの小さな子供達の事を考えるとそうもいかないだろう。
この状況をなんとかしなければこれからの人生ここで終わってしまうぞ。
ん?待てよ、そう言えばこの体の持ち主の名前も分からない上にこの世界の事も全く分からないじゃないか。
転生したのに神様らしきものも出て来ないし誰も説明してくれないなんて現実はどれだけ厳しいんだ・・・)
僕は色々と考えてみたが、今はいいアイデアも浮かばずとりあえず現状の把握をするために周りの言動に合わせる行動をとるようにしようと決めたその時、背後から声がかけられた。
「おはようオルト兄ちゃん。
神父様に兄ちゃんを呼んでくるように言われたから早く行ってきてよ」
10歳くらいの男の子が僕を見つけて“オルト兄ちゃん”と呼んできた。
(僕の事を言っているんだよな?なるほど、この体の持ち主はオルトという名前なのか。
全く・・・前世の記憶があるのはいいが今までの記憶を上書きしたら駄目だよな。
せめて体の持ち主の記憶も残しておいて欲しかったな。
転生テンプレってそんな感じじゃなかったかな?)
転生について神様?だか何かに対して色々と思いをぶつけながら僕は呼ばれた部屋に向かって歩いていった。
ーーーコンコン。
「オルトです。お呼びですか神父様」
「入りなさい」
オルトがドアを開けて部屋に入ると神父の男性が書類を片手に持って待っていた。
「オルト君、今から君にいくつかの大切な話をします。
それをよく聞いてこれからの身の振り方を考えてください」
神父はそう言うとオルトに向き直りひとつずつ説明をしてくれた。
「あなたは今日が15歳の誕生日ですね、少し前から言っていたとおり児院の規定で15歳になり成人した者は孤児院を出なければなりません。
今まで孤児達の兄貴分として下の子供達の面倒を見てくれてありがとう。
これからはあなたの弟分だったカルムがあなたの役割を引き継ぎますから安心して下さい。
この街には孤児院出身の者も多く居ますがあまり裕福な街ではありませんので仕事も多くありません。
あなたには健康な体があるので隣のガルマの街で仕事を探すと良いでしょう。
本来ならこの街でステータスプレートの登録を行いたいのですが、あいにく役所においてある魔道具が何者かに盗まれる事件が発生してしまい現在この街では登録が出来なくなっているのです」
神父はそう言うと机の上にあった手紙を僕に差し出して言った。
「ここに、あなたの未成年時保護証明書がありますのでこれを持って隣街で登録してもらいたいのです。
授かったステータスプレートにはあなたの天職が記載されていると思われますので出来るだけその職業につくようにしてください。
もし、書かれた職業に不満があるならばギルドで冒険者登録をして冒険者として依頼で生計をたてると良いでしょう。
冒険者はプレートの職業に関係なくなれる唯一の職業なのですから」
神父はそう言うと僕の荷物、僅かな食料と簡易な水筒、隣の街までの路銀として銅貨を数枚渡してくれた。
「ーーー今までありがとうございます。
父のように育ててくれた神父様には感謝の言葉しかありません。
これからは自分の力で生きて行き、いつかはこの恩を返せるようになりたいと思います」
正直、転生前の記憶が曖昧になっていたので何となくそれらしい言葉を並べてお礼を伝えると神父は涙を流して神に感謝の言葉を捧げていた。
(さて、自由を手に入れた訳だがどうするかな・・・)
いきなり路頭に迷ってしまったが、もとより孤児院は出るつもりだったので結果オーライと思う事にしておく。
(しかしまさかいきなり追い出されるとは想定外だったけどなぁ)
しかし神父様に道標は貰ったので言われたとおりにガルマの街に行き、まずはステータスプレートを授かることにしてから仕事を探すことに決めて移動手段を考える事にした。
街の案内に聞くと、ガルマまでは馬車も出ていたが当然ながら運賃が高く、オルトに払えるものではなかった。
仕方なく徒歩で向かう事も考えたが距離にして歩いて2日位の所にあるらしい街でも右も左も分からない世界での旅はかなりのリスクになる。
そこで僕は行商人に頼みこんで荷物の積み降ろしを手伝う代わりに馬車に歩いて同行させてもらう事にした。
予想に反して旅は順調だった。
そもそもこの街道は比較的ひらけた場所が多く、盗賊や魔物といった危険は他の街への街道に比べたら安全と言えるくらいで何かある方が難しいらしかった。
そして、オルトと行商人は無事にガルマの街に到着した。
「よーし、これが最後の荷物だ。重いから気をつけろ、ぶつけて壊すなよ」
商人は雇った者達に指示を出していく。
全てを運び終えたオルトは商人に作業が終わった事を報告した。
「お疲れさん、これは少ないが労賃だ。
昼食代にくらいはなるだろうからひとりずつ受け取ってくれ」
商人は商品を運び込んだメンバーに対して労賃を渡すと次の準備が急ぐのかさっさと奥に入っていった。
僕は労賃を貰えると思ってなかったので嬉しくなり、銅貨を握りしめて屋台へ走り昼飯を買い込んだ。
その後、オルトは昼食を食べて昼飯を買った屋台の店主に国の機関の場所を聞いて証明書とともにステータスプレートの発行手続きに向かった。
これから自身に起こる災難など全く予想もしないで・・・。
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