【KAC20218】光尊機神! テンソリオン!
海星めりい
光尊機神! テンソリオン!
「っち、休みの日に来るなんてな。おちおち、出かけることも出来ないってか!」
俺――
街外れの公園から地下基地へチューブの中を飛び降りる。
その後、司令室へと駆け込んだ。
すると、俺の姿を見た少女――オペレーターである
「もう、遅いわよ!」
「だから、大急ぎで来たじゃないかよ! それで、ヤツらはどこに!?」
司令室端の簡易更衣室で戦闘服に着替えながら現在の状況を問いかける。
答えてくれたのはメグミじゃなくて司令室にいたもう一人――
「〝
〝闇上穢土〟は俺たちの敵で裏世界からの侵略者といったところだ。
ヤツらは地球上に存在する光尊エネルギーという人間が神や仏などに祈る力を求めて侵略してきた。
神社仏閣が多く、特に光尊エネルギーが多く眠っている日本を中心に攻めてきている。
そして、俺は行方不明になった父さんや善導博士が開発したテンソリオンに乗って〝闇上穢土〟と戦っているというわけだ。
しかし、なんでヤツらは富士山に現れたんだ? 今までは回収しやすい小さな神社仏閣を中心に攻めてきていたはずなのに……。
そう聞くと、メグミが答えてくれた。
「富士山山頂に浅間大社奥宮っていう神社があるの。本宮はまた別の場所だけど……でも、〝闇上穢土〟の狙いはそれだけじゃないわ」
「うむ、ライト君とテンソリオンを日本各地に転送しているシステムの根幹を成しているのは富士なのだ。あそこの光尊エネルギーが奪われるのは我々にとって致命的だ」
善導博士の話はこうだ。日本の神社仏閣は富士山を中心とした竜脈の上に建立されている。
だからこそ、光尊エネルギーを動力にしているテンソリオンは竜脈の流れに乗って、襲われている遠くの神社仏閣へとワープすることが出来ていた。
だが、富士山の光尊エネルギーがヤツらに奪われたら竜脈との繋がりが薄れてしまい、富士の力を借りたテンソリオンのワープができなくなる。
そうなれば、次からのヤツらの侵攻に迅速に対処出来ない可能性が高い。
ただ、善導博士曰く、『富士の光尊エネルギーの量は膨大だ。いかにヤツらでも今すぐ全てを集めるということはできんだろう』とのことが――……
「ヤバいじゃんかよ!?」
「だから、焦ってるのよ! 準備できた!?」
「ばっちりだぜ!」
戦闘服を着込んだ俺はメグミに返事をするとテンソリオンの元へ駆けだした。
*********************
テンソリオンのコックピットへと乗り込んだ俺は胸の勾玉型のペンダントを外して手に握る。
そして、
(父さん……今回も頼む!!)
そのままコンソールへとはめ込んだ。
コックピット内に電源が入り、一瞬で明るくなる。
両脇のレバーを握って、足下のペダルに足を乗せた。
あとは、ゲートが開くのを待つだけだ。
『大神ライトの搭乗を確認! 出撃シーケンス一~四番、問題なし! 光尊ドライブ出力安定! 行けます!』
『うむ、テンソリオン出撃せよ!!』
「おっしゃあ! 大神 ライト行くぜぇ!」
善導博士の声と同時にフットペダルを踏み込んだ。
「「「テンソリオン、出撃!!!」」」
基地から飛び出した俺は竜脈から富士へと飛び立ったのだった。
**********************
「ここが、富士だな……敵はどこに?」
と、レーダーが認識するのと同時にメグミの声がコックピットに響く。
「三時の方向に闇尊反応を確認。光尊エネルギー回収用のポッドも確認したわ!」
闇尊反応とは〝闇上穢土〟が使っている力のことだ。
ヤツらは光尊エネルギーとは対を成す力と言っていいだろう。
ただ、ヤツらは光尊エネルギーを闇尊エネルギーへと変換する術をもっている。
だからこそ、自分達の力を広げるために光尊エネルギーを狙っている。
『っち、テンソリオン……もう来たのか。まだ半分もいってないってのに!』
俺が闇尊反応の方へ近づくと中心にいたロボットがこちらを向きながら声を荒げた。
普段、こちらに進軍してきていたロボットと違う!? コイツ……隊長格か!?
「そこまでだ! 富士の光尊エネルギーを返してもらうぞ!」
『返せとは言われて、ハイ返します! なんて言うわけねーだろ! 俺様達の計画を狂わせてきたテンソリオン……ここで消えてもらうぜ! この俺様――スタグネーションの手によってな! いけ、ヤロー共!!』
『『『YAAAAAAAA!!!』』』
隊長格――スタグネーションの命令によって〝闇上穢土〟の量産型であるダーティ一型が突撃してくる。
今までよりも数は多いが――今さらダーティ一型になんて苦戦していられない。
「アメノムラクモを使う!」
背中から長剣を抜き去ると迫り来るダーティ一型目掛け、俺もテンソリオンを前に出す。
袈裟懸け、逆袈裟、横一線、縦一線、回転、幾重もの技を織り交ぜて、四方八方から襲いかかるダーティ一型を消滅させた。
〝闇上穢土〟のロボットは闇尊体という闇尊エネルギーによって生み出された塊だ。だから、一定以上のダメージを与えると消滅する。
次はお前を消滅させるという意志を込めて、アメノムラクモの切っ先をスタグネーションへと向ける。
しかし、
『ほーう、そいつがアメノムラクモか……確かにスゲー威力だな。一瞬でダーティ共が切り裂かれちまった。だが、まだまだダーティはいるんだぜ! かかれぇ!!』
部下がやられたというのに焦った様子を一切見せない、スタグネーション。
しかも、やられたのと同じダーティ一型をテンソリオンに襲いかからせてきた。
同じことにしかならないのを分かっていないのか? それとも俺の疲労でも狙っているのだろうか? と思っていると通信が入った。
『いかん! ライト君! やつは光尊エネルギーを持ち帰る気だ!』
「なっ!?」
レーダーを見ればこの場から遠ざかる敵が確認出来る。
その方向のモニターを確認してみると、空を飛べるダーティ二型がポッドを持って後退していた。
これがアイツの狙いだったのか!?
『急いで、ライト! 持ち帰らせちゃダメ!』
「分かってるよ! っく!?」
苦戦しつつも迫り来るダーティ一型に対処し、ダーティ二型をポッドごと斬り伏せることには成功したのだが、
「え!? 空っぽ」
中身は何も入っていなかった。
混乱する俺をよそにスタグネーションからものすごい闇尊エネルギーの力を感じ取る。
『俺様の手の中で踊ってくれてありがとうよ』
「お前、自分で吸ったな!」
そう、スタグネーションは持ち帰る振りをして、この場で光尊エネルギーを闇尊エネルギーへと変換させ自分に使ったのだ。
『そのとーり!! ってことで死んじまいなぁ!!』
「がはっ!?」
スタグネーションの動きは見ていたはずだったが、ダーティ達とは比べものにならない動きに対処出来ず、胸に一撃をくらい吹っ飛ばされてしまう。
「アメノムラクモを当てさせすれば……ぐぁ!?」
『無駄無駄ぁ! その剣は俺様達の天敵だぁがぁ? 今のお前じゃどうにもできまい?』
「だとしても! 諦めるつもりはない!!」
まだテンソリオンは動ける。なら、俺は諦めない!
全身でそう告げるとスタグネーションは面白くなさそうに叫ぶ。
『むかつくなぁ! なら、そんな言葉が言えなくなるぐらい嬲ってやるよぉ! 反撃出来ない無力さを噛みしめろ! まずは腕からだぁ!!』
そして、狙いどおり俺を痛めつけてきてくれた。
「攻撃したな……?」
『なに!? ぐわっ!? なぜ、俺様の放った闇尊エネルギーが俺様に襲いかかってくるんだ!? 離れろ!?』
もがくスタグネーションを見ながら、博士達の声が聞こえてきていた。
『アップグレードした新武装は上手く起動してくれたか……』
『はい……ですが、今の一回でオーバーロードを起こしているようです。想定以上の闇尊エネルギーを受けたためかと』
『うむ、まさかヤツらの力がこれほどとは思わなかった。これは他のパワーアッププランも急いだ方が良いかもしれん』
ヤタノカガミ。テンソリオンの新たな武装であり、その効力は光尊エネルギーを用いた闇尊エネルギーの反射、及び制御にある。
〝闇上穢土〟が光尊エネルギーを変換する技術を持っていることに対抗して、こちらも闇尊エネルギーを変換出来ないか試作していたときに出来たのがこのヤタノカガミだ。
少し前までは、ただの盾として運用していたのでスタグネーションはそれに気付かなかったんだろう。
と、このまま見ているだけというわけにはいかないな。
『今よ、ライト!』
「分かってるって!」
俺はレバーを操りながらテンソリオンの必殺技を起動させる。
テンソリオンの背後が金色に輝きだし、
『天照大神の名の下に、我、神器の力を借りて堕落者を払う――』
『ぐっ!? う、動けねえ!? 眩しぃぃぃぃぃぃ!? その光を止めやがれ!ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!?』
アメノムラクモを正面に構え、
『テンソリオン、フルドライブ!!
『ぐあああああああああああああああああ!? お、俺様が消えていく!?』
スタグネーションを真一文字に切り裂いた。
『闇に惑わぬ精神こそ尊い、ってな!』
消滅していくスタグネーションを後ろにアメノムラクモをしまう。
『闇尊濃度低下――敵、完全消滅です!』
『ライト君、よくやってくれた。帰還してくれたまえ』
「了解!」
こうして、本日も大神ライトとテンソリオンの活躍によって、また一つ神社仏閣が守られた。
ありがとうテンソリオン!
だが、〝闇上穢土〟はまだ光尊パワーを狙って現れるだろう。
〝闇上穢土〟を完全に倒すその日まで彼らの戦いは続く。
がんばれ、テンソリオン!
負けるな、テンソリオン!
END
【KAC20218】光尊機神! テンソリオン! 海星めりい @raiki
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