無能だけどこの異世界を変えてみせます

ちぃーずまん

プロローグ 二人の召喚者

カタカタカタ……

 不登校になって半年が過ぎただろうか。

オレは今日も引きこもってネトゲ三昧の毎日を送っている。生憎にも注意してくる両親はいない。

親父は会社やリストラになってからというものタバコ、酒、ギャンブル三昧、時には暴力まで振るうようになった。母親は嫌気が刺したようでオレと親父を置いて家を出ていった。


母親が出て行くときの最後の一言、これは今でも忘れはしない。

『あなた達と血の繋がりをもったことを後悔するわ』そんな言葉だった。


 クズ親父だけならともかくオレまでをも嫌ってた理由、それは単に不出来な息子だったからであろう。

オレの母親は言わば自分の子供を過信しすぎるタイプとでも言うのだろう、テストや習い事で上手くいかなかったときなんかは、

『なんで私の子はこんなこともできないの』

とヒステリックに喚き散らす。

オレは精一杯母親の期待に応えようとしたが無理だった、そんなこんなでオレは実の母親に見限られた。


 だけどそんなのがオレが不登校になる理由ではない、単純な理由、そうイジメだ。

悪口、陰口は当たり前、机にも悪口は書かれ、時には盛大に黒板にまで書かれる。

こういう精神的な苦痛はまだ耐えられたのかもしれない……トイレに連れ込まれ、みぞおちを何度も蹴られ、殴られ、気絶寸前までボコボコにされる。そして最後に便器に顔を入れさせられ、窒息寸前までもっていかされる。


もはや自尊心などなかった。

なんで生きてるのだろう、こんな辛い世界など死んでしまったほうが楽なんだろうな。

何度も挑戦した。だが死ねなかった、怖いのだ、結局怖いのだ死ぬのが。


 全てあいつのせいだ、あいつがオレの全てを壊しやがった、だがあいつは今日もオレの家に来る、罪滅ぼしのつもりなのだろうか、毎晩毎晩、学校から貰ったプリントと晩ごはんのおかずをタッパーに入れ持ってやってくる。

家も近所だから家の家庭崩壊のことも風の噂で聞いたのだろう。


いくら謝られたってあいつの事は絶対に許せない。いくら幼馴染であろうとも。


_______


 ある日の夜、オレは一冊の本を読み終えた、まあいわゆる、ラノベ。これも現実逃避の一種だ。ファンタジー、異世界系、ラブコメなんかも読んだりする。

こんなの物語が実現するとも当たり前だが思っていない。だが少し期待してしまう、もしも自分が異世界に行ったら、魔法が使えたらなんて厨二病らしい妄想を抱いてしまう。


 そして気分が高まったオレはツイッターで

"異世界"と検索をかける。

ページを最新のところに移した。5秒前、30秒前、1分前など検索キーに引っかかったツイートがズラーッとでてくる。


オレは暇なとき(ずっと暇だが)自分の好きな単語で検索をかけ、作品の感想など見たり、おすすめのラノベを聞いたりしている。ツイートを最新にするのはすぐに返信が返ってくることが多いからだ。


そんな中ツイートを下へ下へのスクロールしてく中あるツイートが目に飛び込んだ。


『私達の世界は赤い血を求めている。君等人間が俗に言う"異世界"へ来たい者がいるならば近くの教会へ行くがよい、そこで自らの血を差し出せ、それが契約となる。』

 

そんなゴミみたいな文章だった。

イタすぎにも程があるだろ、そいつのページに飛んでみるとツイートしてるのはその文だけだった、無論いいねもフォロワーも一人もいない。 


こいつも一人なのだろう、オレと同年代のやつなのか、厨二病を拗らせたおっさんなのかは分からんが少し同情してしまう。


『今から教会へ行きます、無論信じてはいませんが』


オレはそう返信してパソコンを閉じた。

まぁ、ずっと家に居るのもなんだし、散歩がてら家の近くの教会に行くことにした。


 寒い夜、一枚のコートを羽織り教会へと進む。

15分程歩き教会が姿を現した。

通りかかったことは何度かあるが、実際中に入るのは初めてなので少し緊張する。

人は誰もいなく、この静けさが少し不気味だが慣れてくると心地良い。


 教会の真ん中までつき、オレは先程のツイートの内容を思い出す、"自らの血を差し出せ"だったか。

ポケットからカッターを取り出し、腕に一線の切り込みを入れる、深くもなく、浅くもなくという感じだ。


そして、ポタッと一滴の血が教会の床に落ちたとき瞬間だった。

ズサッと黒い槍のような物がオレの心臓を貫く、だが不思議と痛みはない、


 視界はどんどん狭まっていき、両膝をつき倒れ込む、もうダメだ死ぬのか。

そう思っていると、後ろから誰かの声が聞こえてくる、オレの名前を必死に呼んでいる。

声で分かった、そいつは俺が恨んでやまない相手、幼馴染の琴音だった。

琴音はオレのとこまで来てなにやら喋っているようだった。

意識が朦朧としてるからかなにも聞こえない。

すると、オレの体は光の粒子のように足元から消え始めていく、そして最後にオレの目に写ったのは泣きじゃくる琴音だった。



_________


「召喚の儀式は完了した、時期にお前はあちらの世界へとつくだろう。そこでお前はある少女と出会うだろう。そいつとともに王都のサンヘジョロという街へ向かえ、そこにお前が召喚された答えがあるはずだ。」


視界は真っ暗だったが、誰かの声が聞こえる。一体誰なんだろうか、神様?という存在なのか………

あと、召喚の儀式と言うのはあのオレの心臓を謎の黒い槍で貫いたことだろうか。

それにある少女と出会う?

山程疑問があったが、最初に率直な質問をぶつけた。


「ほんとにオレは異世界にいくのですか?」

「そうだ、ではさらばだ」

「ちょちょ待ってくださいよ」

……………

どうやら行ってしまったようだ。

それにしても異世界かあ、今まで何度も夢見た異世界、魔法が使えたり、人間以外の特殊な生き物がいたりするのだろうか。


 何も見えないがどこかを体が進んでいるのが分かる。異空間と言うのだろうか。その異空間を流れること1分ほどだろうか、今まで真っ暗だった視界が徐々に明るくなっていく、そして俺は地面に叩きつけられた。 

「いでっ」

周りを見てみるとそこは巨大な草原だった。

(ここが異世界か……ただの高原じゃないか)


そう思ったのもつかの間、目の前の空間に大きな穴が空いた、そこから誰かの悲鳴とともに誰かが落ちてくる。

「ぐほっ」

そいつはオレの腹に思い切りケツから落ちてきた。

オレの上に乗ったやつを見ると、オレの知ってる人間ではなかった、なぜかって?

頭にツノがあるからさ、尖ってはいなく、くるんと丸まった感じの。

髪は水色で、胸元まである綺麗なロングヘアー、目の色も水色で、顔はもうこの上ない美人だった。


「ここは、もしかして異世界!!」

と少女がオレの腹の上に落ちてくるなりそう叫んだ。

どうやら、オレの存在にはまだ気づいてないらしい……


どうやら彼女は別の異世界からこの異世界へとオレと同じく召喚されたのだろう。

彼女の姿と反応を見て俺はそう悟った。


そしてあの妙なツイートがほんとうに異世界へ繋がる鍵になるとは………


かくしてオレの異世界物語は始まりを迎えるのであった。

























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