マブダチの恋を叶えるため、邪魔な女(幼馴染みキャラ)の悪役になる

Rayca

第1話 マブダチからの恋愛相談

 俺の名前は宮川みやかわ亜怜輝あれき。今年で17になる。


 いかつい名前を付けられていることから察しがつくと思うが、俺の両親は筋金入りのヤクザだ。


 俺自身は不良なのかって? 俺は違う。喧嘩なんて面倒なこと、誰が好き好んでやるかっての。俺はあくまでパンピーとして、平穏な人生を送れればそれでいいと思っている。


 ただ、ヤクザの両親に育てられた以上、どうしても口調が荒くなりがちらしい。クラスのヤツらは俺と会話すると、すぐにビビってもう話しかけてこなくなる。


 口調だけなら気を付ければなんとかなるが、不幸なことに俺は図体が無駄にデカく、目つきもすこぶる悪い。そんなヤンキーみたいな見た目をしている上に、親がヤクザという肩書きも合わさって、周りは勝手に俺を恐れる。という訳で、そもそも話しかけてくるヤツがいないのだ。

 

 だがそんな俺と、ダチになってくれたヤツが一人だけいる。


「お、亜怜輝! ここにいたのか!」


「よう優人。何か用か?」


 原田はらだ優人ゆうと。俺にとって唯一のダチだ。こいつはこんな俺を恐れることなく、ちゃんと正面から向き合ってくれた。名前の通り、優しくて気の良いやつである。


「相談したい事があるんだ。聞いてくれるか?」


 いつになく真剣な表情。何か悩みでもあるのだろうか。まあなんにせよ、数少ないダチの頼みだ。聞いてやるに決まってる。


「いいぜ。何でも言ってみろ」


「サンキュー。実はな……好きな人ができたんだ」


「ほう」


 恋愛相談か。恋なんてしたことねーんだが……力になれるだろうか。


「これお前にしか教えてない秘密だからな!? 絶対に言いふらすなよ!?」


「分かった分かった」


 そもそも話せるヤツがいねーよ。会話する相手なんてほぼテメーしかいねーんだからな。


「信じるからな。話の続きだけど、俺、その子にアタックしたいと思ってるんだ。そこで、第三者の意見も取り入れたい」


「ふむ。つまりどうアタックすれば良いと思うか、第三者の俺からアドバイスが欲しい、と」


「そういうこと! 頼まれてくれるか?」


 恋愛経験などほとんどない俺が役に立てるかは分からないが、優人には世話になっているんだ。その恩を返すためにも、引き受ける以外の選択肢はない。


「任せろ。その恋、絶対に叶えさせてやる」


「ホントか! マジサンキューな! やっぱ亜怜輝って優しいヤツだぜ!」


 優人は心底嬉しそうに、純粋で無邪気な笑顔でそう言った。フッ、この俺に優しいなんて言うやつなんざ、テメーくらいだよ。


 せっかくだ。アドバイスだけでなく、できる限りのサポートもしてやろう。絶対に叶えると言った以上、やるからには本気だ。


「で、誰なんだ? その惚れたヤツってのは」


みなみ茉莉花まりかさんだよ。ほら、同じクラスの」


 南 茉莉花……ああ、あいつか。よくは知らないが、確か黒髪ショートカットのどっちかというと大人しめのヤツだ。


 目立って輝いているというわけではないとはいえ、顔はそこそこ整っている方だ。惚れるのも分からんでもない。


「なるほどな。優人はああいう見た目のヤツが好みなのか」


「い、いや、確かに見た目も可愛いと思うけど! そこだけで好きになったわけじゃないというか……」


「と、いうと?」


「何というか……南さん、優しいんだよ。例えば、日直が黒板を消しているのを手伝ってたり、皆が行きたがらない教室のゴミ捨て役を毎回引き受けてたり……あと、先生の手伝い役もよく引き受けてる。そうやって、人があまりやりたがらないことを、南さんはいつもやってくれてるんだ。それで、良い人だなって思って見ていたら、好きになったんだよ」


 照れくさそうに話す優人。……聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらい、ピュアな理由だ。ま、南がそんなに心優しいヤツだってんなら、同じく心優しい優人とはお似合いといったところか。


「テメーの本気、伝わったぜ。全力で応援してやるよ!」


「お、おう。俺も頑張るよ!」


 マブダチの純粋すぎる思いを聞いて、より一層この恋をを叶えさせてやりたくなった。こいつらの恋のキューピットとして、完璧に優人をサポートしてやろう。


 まず優先すべきは……やはりあの女、もとい邪魔者の対処だな。

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