モブ村人の立志伝 〜バグゲーにて愛を求めて〜

おもちさん

プロローグ

 目覚めし者フェリックよ。


 ようこそ万緑の園へ。


 私は今、貴方の魂に語りかけています。


 夢から覚めてしまえば、きっと忘れてしまうでしょう。


 ですが伝えねばなりません。


 整然と管理された時代が、間もなく終わろうとしているのですから。


 この世界は大いなる脅威に晒されています。


 バグの侵食、その猛威は留まる事を知りません。


 世界は破滅への道を、絶えず着実に、今この瞬間も歩み続けているのです。


 この声が聞こえた貴方にすがります。


 どうか安住の地を捨て、旅立ってください。


 そして行く先々で成長し、巨悪を討ち滅ぼす力を養ってください。


 か細いながらも縁をつむぎました。


 まるで見えない道が敷かれたかのように、貴方を誘うことでしょう。


 私も可能な限りお力添えします。


 ですからフェリック。


 どうか私の願い、聞き届けてください。


 はい。


 困惑するのも無理からぬ事、質問をどうぞ。


 はい。


 その紅茶には、冒険に役立つ因子が組み込まれています。


 今はまだ芽吹かずとも、いつの日か、必ずや大いなる力となるでしょう。


 おや。


 不味い、ですか。


 どうやらお口に合わないようですね。


 次回は別の味に替えておきます。


 はい。


 違います。


 私は決して不審者ではありません。


 毒を盛る理由だってありません。


 やめてください、衛兵を呼ぼうとしないでください。


 この仕打ち、傷つきました。


 仕返しです。


 フザんなよカス野郎。


 尻穴に一輪の花を挿し込んでクッソ素敵なインテリアにしてやろうか。


 ええ。

 

 そうですか。


 少しばかり、怖がらせてしまいましたね。


 でもご安心ください。


 貴方は目覚めれば忘れてしまうのですから。


 さぁ、目覚めし若人フェリックよ。


 耳を塞いでも無駄です、フェリック。


 旅立ちの日は間近。


 まずは神託所を目指しなさい。


 縁なら既につむぎました。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る