私の推しがめちゃくちゃ可愛い/KAC20218作品「尊い」
麻井奈諏
第1話
「昨日の配信生ライブ見た!??」
鼻息荒く朝私の席に近寄ってくる私の友人。
「あー、観たよ。新曲発表あったね」
昨日はこの子の好きな新進気鋭のアイドルグループの新曲。それも彼女がグループの中で一番好きな娘が初のセンターを務める新曲が発表された。
「めっっっちゃ良かったよね!!いやー、推ししか勝たん」
「デビュー当時からずっと応援してたもんね。またCDも買うの?」
「もちろん!保存用布教用含めて3つ買うよ!」
「えーっと、握手券が付くんだっけ?」
「そうそう凄く近くに行けるんだよ!」
本当はアイドルの魅力って言うのはよくわからない。昨日も熱心に勧められたから観たけどあんまり良さがわかっていない。フリフリの衣装に身を包み激しいダンスとテンポイイ音楽が一部の人を熱狂させているのはよくわかる。
歌も踊りももっとうまい人はいると思うし、もっと美人な人が居ると思う。彼女曰く、頑張ってるところが凄く応援したくなるらしい。
あーだこーだ言って昨日のライブの良かったところを語り始める。一番の推しの子だけでなく、前のセンターを務めていた娘の話や新曲の話。語り始めたらもう止まらない。遂には今朝発売の雑誌に書いてあった記事の話をし始めた。
「そんなことより今日テストだよ。対策大丈夫?」
「大丈夫!多分!!」
「ホントかなぁ」
でも、きっと本当に大丈夫なんだと思う。ここ最近私は彼女にテストの点で勝てたことなんてないんだから。
彼女昔はこんなに明るくなかった。アイドルにハマってそれから笑うことが多くなった。家がとても厳しくてそれでも必死に両親の期待に応えようと努力していた。
「ふわぁ~、昨日DVD見てたら夜遅くなっちゃって。ちょっと眠いや」
「授業中寝ないようにね」
「はーい」
彼女の場合アイドルのDVD見ていたことは嘘ではないだろう。でも間違いなく勉強もしていたに違いない。
きっとそんな努力家なあなただからきっとアイドルにハマったんだろうね。
「……」
彼女の持ってきた雑誌をパラパラと捲って眺めて見るけどやっぱり彼女みたいにこの娘にハマることは無い。いや、推すって言うんだっけ?こういうときは。
だってそのアイドルより彼女の方がよっぽど可愛いから。握手券なんて無くても会えるし。歌とダンスはできなくてもアイドルに負けないほど笑顔が素敵で。
何よりもそのアイドルっていうのがどれ程の努力をしているのかわからないけど少なくとも私は彼女が努力してきたのをずっと近くで見てきたから。
彼女が好きだから観てたけどやっぱり私に良さは伝わらなかった。
「あー、私がテスト不安になってきた」
「それこそ大丈夫でしょ」
「そんなことないって、テストまで少しでも見直ししとかなきゃ」
「じゃあ私も見直ししとこっかな。じゃあ、また後でね」
軽く手を振って自分の席へと帰っていく。
自分の席で参考書を開いている姿を見ると自分もやらなきゃなと言う気持ちになって自分の参考書を開く。再度ちらりと見ても彼女が勉強する姿は絵になっている。
(まぁ私は彼女みたいに推しへの愛を叫んだりはしないけど)
それでも私はこう思う。
私の推しはめちゃくちゃ可愛い。
私の推しがめちゃくちゃ可愛い/KAC20218作品「尊い」 麻井奈諏 @mainass
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます