【第18話:お守り】
オックスさんと別れたあと、オレたちは予定通りに武器屋に来ていた。
「フォーレスト! これはどうかしら? 凄くカッコイイわよ! あっ!? こっちのもいいわね!」
ただ、フィアが武器を見てここまではしゃぐのは予定外だったが。
「ごめんなさい。お姉ちゃん、昔、お兄ちゃんに武器屋に連れてって貰うのが大好きだったから」
「お兄ちゃん子だったんだな。ロロアはそうじゃないのか?」
「うん。武器屋はどっちかと言うと苦手で……」
姉妹なのに二人の性格はかなり正反対だよな。
でも、それでうまくバランスがとれているように思えるから不思議だ。
「もし苦手なら外で待っているか? ここの店の向かいに雑貨屋と服屋があっただろ? そこで待っていたらどうだ?」
「え? でも……お姉ちゃん、ちょっと暴走気味だし」
「ははは。気にしないでいいって。オレが何とかするから」
「わかりました。じゃぁ、お言葉に甘えて、向かいの店に行ってますね!」
「剣を買ったら迎えに行くから、適当に時間を潰しててくれ。そんなに時間はかからないだろうから」
と、思ってた時がオレにもありました……。
「ねぇねぇ! やっぱりこっちの剣の方がよくない? あ、それからおじさん! こっちの槍、ちょっと触らせて貰っていいですか?」
「い、いや……さっき薦めてくれた剣でいいんじゃないか?」
「そう? あ、そっちの槍じゃなくて、その隣のです!」
まさか武器屋で、女性の買い物の長さというのを思い知ることになるとは……。
でも、ロロアを一人で雑貨屋に向かわせてから結構時間が経ってしまったな。
フィアには悪いが、この剣を買ったら先に店を出るか。
「フィア! オレ、この剣を買う事にするよ。それで、ロロアが向かいの雑貨屋で待ちくたびれてると思うから、先に行っているぞ?」
「え? ロロア雑貨屋に行ってるの?」
え……気付いてなかったのか……。
「あ、あぁ。オレは先に行くけど、フィアはしっかり見てからでいいから」
フィアが使っている槍もだいぶんガタが来ていたので、買い替えるみたいだ。
それなら本当に納得したものを選んでもらった方が良いからな。
「ん~。悪いけどそうさせて貰うわ。武器だけは妥協したくないの」
「わかってるって。今度の依頼は、フィアが一番大変な役なんだから、しっかり選んでくれ」
結局オレは、それなりの剣を買い、ロロアを待たせてある雑貨屋へと先に向かったのだった。
◆
雑貨屋に入ると、ロロアが何やら悩んでいる様子が目に入った。
よく見てみると、たくさんの小さな水晶石に糸を通して作ったブレスレットを、真剣に見入っているようだ。
水晶石はとても綺麗だけど、手頃な値段で有名だ。庶民の宝石とも言われており、守り石としてお守り代わりに持つ人も多い。
「水晶石のブレスレット?」
「あ……フォーレストさん! 来られてたんですね。気付かなくてすみません!」
「いや、待たせて悪かったな。フィアが槍を買うって言いだしてな」
「やっぱり……。でもお姉ちゃん、前からそろそろ新しいのを買うってお金を貯めてたから、仕方ないですね」
前から買い替えを考えてお金を貯めていたのなら、じっくり選ばせてあげないといけないな。
「ところで、ロロアは何を悩んでいたんだ?」
「えっと……その、お守り代わりにこういうのも良いなぁって思って」
やっぱりお守りとして見てたんだな。
オレも気になったので手に取って見てみると、お守りとしてだけでく、丁寧な作りをしており、アクセサリーとしても凄く綺麗だ。
「良さそうな品じゃないか。これ、パーティー結成記念って事で、オレからロロアとフィアの二人にプレゼントさせてくれ」
今のオレにとっては手頃な値段だし、お守り代わりに二人にプレゼントするのも良いだろう。
「えぇぇ!? だ、ダメですよ! 私、そんなつもりで見てたんじゃないですし、その、あの……そこそこお値段もしますし!」
「いいんだ。昨日少し話したと思うけど、国からたくさんの懸賞金が出ているんだ。オレと二人を結んでくれたのはお兄さんのお陰だろ? お兄さんもお守り持たせてあげたいと思ってると思うぞ?」
「そ、そんな……ずるいですよ」
そこからも少し渋っていたロロアだったが、強引にオレが店員を呼んで購入してその場で渡してあげると、最後は凄く喜んでくれた。
「あの……大事にしますね! ありがとうございます!」
ちょうどその時、向かいの武器屋からフィアが出てくるのが見えたので、オレたちも雑貨屋を出ることにした。
「お姉ちゃん!」
「ん? ロロアどうしたの? えらくご機嫌だね?」
「そういうフィアはあまりご機嫌には見えないが、結局槍は買わなかったのか?」
「うん。良い槍だったんだけど、私にはちょっと長すぎたの……」
話を聞いてみると、気に入った槍が二本とも、長くてフィアには扱いきれなかったらしい。
フィアは女性としては背が高い方だと思うが、それでも男としては少し小柄なオレと同じぐらいなので、そういう事も多いそうだ。
「それは残念だったな」
「うん。王都には他にも何件か武器屋はあるし、今度また見てまわってみるわ」
「そうか。まぁ、槍は残念だったが、代わりにこれで機嫌直してくれ」
オレがロロアにあげたのと同じ水晶石のブレスレットを渡してあげると、目に見えて狼狽えだした。
「え? え? な、なに? 綺麗だけど……え? え?」
「ロロアが見つけたんだが、お守りに良さそうだから買ったんだ。パーティー結成記念ってことでプレゼントさせてくれ」
「ねぇねぇ! お姉ちゃんも付けてみて♪」
「え、で、でも……本当に良かったの? あ、ありがと……」
普段は結構男勝りな感じだが、やはりこういう物は好きなんだな。
姉妹でお揃いのブレスレットをして喜んでいる姿を見ると、どうやら贈った甲斐があったようだ。
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