第18話接触

「ねえ、沙夜」


僕は出掛ける前に声をかけた。



「何?お兄ちゃん」



「その、北條の妹さんと話できないかな?」


沙夜は怪訝な顔をする。



「無理よ、昨日もいったけど、お兄ちゃんとお姉ちゃんを失ったんだよ」



「そ、そうだよね。ごめん。忘れて」



沙夜は機嫌が悪くなり先に出掛けてしまった。



母さんは相変わらず寝ている。一応ご飯は作って置いていくが手をつけてる様子はない。


このままでいいのだろうか…



僕は一人で登校することになった、沙夜を一人で行かせて大丈夫だったかな。


しかし、北條の妹がやっぱり気になる。



ごめん、沙夜。やっぱり僕はその子と直接話がしたい。



僕は沙夜に今日は食料品を買うから先に家に帰るようにメールをした。



そして、放課後。校門の前ではいつも沙夜が待っているがメールを信じて先に帰ってくれたようだ。


僕はなんだか罪悪感を感じた。



中等部の校舎から生徒が出てきた。僕はあわてて声をかける。


「あの、北條さんってまだ学校にいるかな?」



突然話しかけられた女子生徒は怪訝な顔をしながら言った。


「北條さんなら、図書室に一人でいるよ、いつも遅くまで」



僕はその女子生徒に礼を言って図書室へ急いだ。



図書室の扉をあける。



司書さんがチラリとこちらを見た。



僕は辺りを見回す。しまった。北條の妹の顔がわからない。



僕はふとおもいだした。中等部の生徒は名札を着けていた。


それを頼りに探すしかないか。


しかし、図書室には女の子がひとりポツンと座って本を読んでいた。


他には誰もいない…てことはあれが妹さんか。



僕は恐る恐る近づいてみる。



女子生徒は僕に気づき立っている僕を見上げる。


僕はすかさず胸元の名札を見た。北條と書かれた名札だ。



「あ、あの僕、北條君の友達で…」


しまった、どうやって話しを持っていくか考えてなかった。



すると


「ここで話すのは嫌です。場所を変えましょう」



「う、うん。わかった」



場所っていってもここら辺にはファーストフード店とかあったかな。そんなことを考えながら僕は後を追った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る