常夜灯のような
新吉
第1話
黒板には明かりの妖精の文字が書かれている。
スマホやパソコンの明かりは目に悪さをする、ブルー。太陽の大きな明かりはこの世を照らすほど。アマテラスだったりラー、アポロンなどたくさん。
大昔は太陽の明かりたちがいなくなると夜とされた。夜は夜でたくさんの明かりが輝く月のツクヨミ、ルナ、アルテミス。星の明かりは数えきれない。それでも暗く、時代が進むにつれて夜はさらに多くの明かりたちをつれてくるようになった。あるいは作り出した。火事になると明るい、雷が落ちれば明るい。カグツチ、ヒノカミ、ライジン。人間のちからだけではどうしようもなかった。のちに火や電気を扱えるものが現れる。たくさんの明かりの妖精が皆さんの生活を支えています。
そんな話を聞きながら、教室を照らす電気を見上げる。天井の細長い管のなかに彼らはいる。白い妖精たち。突然すごい音がして雨が振りだした。雷様が落ちた。私も彼らは身をすくめて、教室の妖精は消えた。もちろん雷様の明かりはあるけど、怖がってるのが私くらいで、先生は大丈夫と繰り返す。迎えの車が次々とやって来て、校庭に並んでいく。
私のスマホの明かりの小さな妖精は青いからだをしている。バッテリーさんが切れそうだから暗い。親は仕事中だから電話をかけられなかった。いつもは下校時間になって友だちと遊んだりして5時の鐘が鳴って、1時間、2時間すると帰ってくる。先生がやってきた、何人かとここで待つことになった。校庭から見える車のヘッドライトは雨と雷様で暗くなった道を照らしている。
先生は教室で流行りの曲をかけてくれた。歌ったりしていたけど、歌の途中でもまた雷様の声がして、怖くてしゃがんだ。いつもの大丈夫?が聞こえた。
「大丈夫じゃない」
先生と暗くなってしまう前に体育館へむかう。体育館では私の他にも何人かいて、低学年の子はマットに寝っ転がったりしていた。先生も私も一緒にいるからね、と笑ってくれた。学校に泊まるわけじゃないよと低学年の子に声をかけていた。
体育館の明かりはなぜかついていて、妖精がいる。先生は明かりが足りないだろうと懐中電灯を持ってきた。手持ちの明かりさん。あとはペットボトルとペンライトを持ってきた。
「先生、それってアイドルの追っかけって言ってたやつ?」
「そうそう、車の中に起きっぱなしにしてたの。尊い推しが来たらこうやって振るのよ!」
細い管のなかで妖精がもみくちゃになる。先生は振っても大丈夫な陽気な妖精が選ばれているらしいと教えてくれた。ペットボトルに水をいれてふたを開けたままセット、めっちゃ明るい!しばらくいろんな色にして遊んでから電池がもったいないからと白い色の妖精だけにした。
お母さんが来るまでいろいろ話してくれた。
眠りにつくその前に夜つける明かり。オレンジの常夜灯。にしょこ、マメキュウ、こだま。いろんな呼び方がある。優しい明かりの妖精が選ばれる。
私は今年6年生、来年から中学生で、自転車で学校に通うようになる。その日眠る前に、まだ続く雨の音を聞きながらにしょこを見る。妖精は優しくおやすみと言っているようで。先生の話を思い出した。先生のような優しい人になりたい。そう思った。
仰げば尊し。先生や友だちにありがとう、これからも私はがんばります。さあお別れだよっていう歌だと教頭先生から教えられた。卒業式では歌わないけれど、入場の時に流れる。そのメロディを聞きながら私は体育館に入る。
常夜灯のような 新吉 @bottiti
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