キセキを求めて
くにすらのに
第1話
いじめられているわけでもないけど、クラスの輪に打ち解けられたわけでもない。
パッとしない人生を変えたくて、要領話は悪いなりに必死に受験勉強をして有数の進学校に入学した。
この高校は学年毎にネクタイあるいはリボンの色が決まっている。
彼女の首元を飾るリボンは俺と同じ緑色だった。
俺が緑色のネクタイをしてもただ地味なだけなのに、彼女が付けているととても華やかなものに見える。
背は俺よりほんのちょっと低いくらい。160㎝台後半といったところだろうか。女子の中では高い方だが威圧感はない。
校則を守っていると思われる長めの丈のスカートからすらっと伸びる脚は永遠に見ていられるほど美しい。
そして何よりブレザーを着ていてもわかる胸の膨らみ。
長く伸びた黒髪がそこに曲線があることを強調してくれている。
同じ入試を突破したから偏差値は同じと思うなかれ。その入試をどれくらいの勉強量で、何点で合格したかが問題なのだ。
自分で言って悲しくなるが俺はきっと下位グループだ。
上位グループはきっと部活と勉強を両立していて何なら中学生にも関わらず恋人がいたようなやつらだ。
なぜそう思うかって? すでにカップルみたいのがいるからだよ!
チクショー! 俺みたいのがどんなに受験勉強を頑張っても人生はそう簡単に変わらないのか。
奇跡でも何でもいい。あの美少女と接点をくれ!
俺は高校生活の運を全て使い果たしてしまったのかもしれない。
「はじめまして。
あっ、普通の人間なので安心してください。天使どころか要領が悪くて失敗ばかりなんですけど、仲良くしてくれたら嬉しいです」
天使こと
あのレベルに達すると疎まれるのではなく憧れや尊敬の対象になるらしい。勉強になった。
そう、俺は一目惚れした天使こと
俺が運を使い果たしたと思った理由は……席が隣になったのだ!
男子の五十音順と女子の五十音順で機械的に並べた結果、
廊下側から男子の列、女子の列、男子の列と交互に続いている。
俺は廊下側の席で右隣には人がいない。つまり、話し掛けてもらえる確率が少しだけ下がった状態でのスタートだ。
だけど焦ることはない。これは中学時代からそうだった。むしろ右側が完全にパーソナルスペースになっている分だけ気持ちに余裕ができる。
視線を左にずらすと、やはりそこには天使がいた。
遠目から見てもキラキラしたオーラを感じたのに真横に存在されたら自分が消し飛ばされそうだ。
画数が多いしちゃんと読んでもらえないからこの苗字が面倒くさくて仕方なかったけど、初めて
「えーっと、
これほどの幸運に恵まれておきながらさらに
自分からは勇気を出せず、さらにきっかけも掴めなかった俺にとっては絶好のチャンス!
「う、うん。よろしくね」
会話終了。たぶんぎこちない笑顔だった。何の面白みもない。発展性のない返事。終わった。会話と共にチャンスタイムが終わった。
「ねえねえ
「部活なにやってた? バスケ部なんてどう?」
「入試トップで新入生代表になってるってマジ?」
知り合いが誰もいないと言っていた
それに入試トップって? 要領が悪いとか言ってなかったっけ? ダメだ。俺とは違う世界の生き物なんだ。そうか、天使。
天使と人間が結ばれるなんてありえない。ははは……。早めに諦めが付いてよかった。これが俺にとっての1番の幸運だったんだ。
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