第190話俺は…お前しか愛してたりしないからさ。

  「ううっ…!」自分の真っ赤になっていた耳殻に当てて来ていた彼女の消え去っていく温もりと、自分のズボンを濡らしに来ている彼女の胸元から零れている赤い液体に苛まれては、体中が悔しい心境に爆ぜられていたような気がしてならないでいる父親は必死に歯を噛んでは、震えているような顎を軽く自分に抵抗する事が出来なくなっている彼女の肩に当てて行きつつ、彼女の体を抱えていく彼、「ううう…」とめどなく赤くなっている目の下を越えていく涙の粒に強張っている口角を撫でられては、強く黄色の歯を噛んでいた父親はつい彼女の左側でしか彼女の体を抱えることが出来なくなっている自分の事を思うと、酒に全てを委ねていた自分に死ぬことよりずっと苦しい場面に追い詰められているような気がしてしまう彼は、まるで自分の膝に甘えに来てくれているような床にある液体に心の防波堤を完全に潰されているように感じては、もう少し彼女の顔が見たいと願ってしまう彼は酷く震えている両手を彼女の温かい体から離れていき、「うあ…」


  否応なしに自分の唇をこじ開けて来ているような彼女の胸元に突き刺しては、まるで自分がしでかしていたことを見せつけて来ているようにと、自分に体を動かされていたせいで微かにずらされていた包丁の周りから微かに飛び出て来ていた小さなブリッジに、自分は愛しい彼女を殺めていたんだと、小さな赤いブリッジにそのような文字が刻まれているようにと見えている彼、「うああああああ…!」


  自分が殺人犯となっていた現実から逃げ出したいと思うと同時に、何としても愛おしい彼女を失いたくないと強く思っている父親は必死に彼女の体を抱き留めては、喉を引き千切ろうとしているように叫んでいく、「ごめん…!ごめん…!!」何度も鼻翼に力を入れていく彼は眉間に皺寄せては、激しく鼓動を刻んでいる胸元を彼女の項垂れていた左腕に当てては、自分の鼓動を彼女に分けてやりたいと願っている彼、「俺が…俺が間違ってたんだ…!」痺れては痛く感じてしまう鼻腔に、酒に酔わされていた頭が刺激されているような感覚に歯ぎしりしてしまう父親は苦しそうに鼻水を垂らして行きつつ、母親の微かに温かく感じている体を抱きしめている彼は叫んでいき、「戻って来い…!頼むから…!」自分が彼女を無くしてしまうと、一体何のために今までずっと上司に叱られるような毎日を送って来ていたんだと思ってしまう父親は、苦しそうに大きく赤くなっている唇を開けては、唾液を垂らしながら喉から声を絞り出していた、「戻って来いよぉ…!」自分の鼻水と涙に濡らされている母親の弱り切っている肩を感じて行きながら、どうか彼女を自分から奪わないでと誰に祈ったらいいのかがわからないでいる父親は強く内心で叫んでいた、「実千子(みちこ)…!!」


  胸元から命のエキスが全てが零れてしまったような不思議な感覚に体を抱かれているように思えては、さっきまでに地面のずっと奥に沈んでしまいそうなぐらいに重たくなっていた体が訳の分からないに軽くなっては、頭がぼんやりと浮いているように思えては、温かく淡い黄色の場所に体を包まれては、幸せな気分になれている母親はぼんやりと凛とした顔立ちをしていて、格好良くスーツを着こなしていた父親の軽く右手で胸元にある少しばかり崩れていたハートが沢山、刺繍されていたワインレッドのネクタイを直していく様に目を細めては、淡い笑みを浮かべてしまう母親は幸せそうにとすらりとした右足を彼に近づいては、ぽつりとピンク色の唇を開けていた、「迎えに来てくれてたんだね…竜炎(りゅうえん)さん…」


  竜炎のまるで自分の存在に気が付いてくれているようにと右手をネクタイから離れては、照れくさそうにと右手で後頭部を擦っている様に苦笑いしていく実千子、「まったく…」不貞腐れているようにと軽く艶やかな唇を開けては、彼の喉元にある華やかなネクタイを両手で丁寧に直していく彼女、「大事にしてくださいね…」横目で彼の自分にネクタイを直して貰っていた事に、嬉しく思ってくれているように笑ってくれている様を見つめてしまう実千子は言う、「私のバイト代で買ってたものなんだからさ…」忽然、否応なしに自分の体を倒しに来ているような眩暈に立ちくらみしてしまう実千子はつい体が倒されているに感じては、急いでいるように大慌てで両手で自分の無力な体を抱えに来てくれている竜炎の顔を見つめては、幸せそうに笑おうと思っている。


  「ああ…」刹那、自分に抱えられていた母親の体がやけに重たくなっては、まるで自分の体を潰そうとしているようなぐらいに鈍くなっているような感覚に驚かされては、眉毛を上げられているような気がしてならないでいる父親、「ああ…」絶望に満たされている息を口から漏らしていく彼は恐る恐ると震えている両手を母親の体から離れては、まるで肉の塊と化していたような母親の体に、彼女は血塗れになっていた胴体にいないんだと否応なしに知らされているように思えてしまう父親は、呆然と母親の胸元で佇んでいた包丁を見下ろしていき、「俺は…俺は…なんて事をぉ…」


  ぼんやりと唾液を零していく父親はゆっくりと微動だにしないでいる母親の体を床に置いていき、霞んでいく視界の中で母親のまるで綺麗な夢でも見ているかのようにと軽く口角を上げている様に、眉毛を上げられているように感じている父親はぽつりと弱っている声を漏らしてしまい、「俺は…」震えているような顎をゆっくりと彼女の胸元に向けていく父親は血走っていた眼で彼女の命を奪っていた包丁と自分の両手を交互に睨んで行き、ごくりと固唾を飲み込んでいく彼は痙攣しているような両手で包丁を握って行きつつ、母親の服を真っ赤に染め上げていた包丁の柄に掴んでは、自分への悲憤が胸元を満たしているような気がしてならないでいる彼は何度も鼻翼に力を入れては、母親を殺していた自分には何のためにこれからの日々を頑張っていけたらいいのかと考えては、チラッと微かな期待が宿っている眼を寝室の入り口に向けてしまう彼、ぼんやりと唇を開けて行く彼は霞んでいる視界の中で、まるで自分の存在を怯えているようにと震えているにも見えてしまうドアフレームから、ゆっくりと視線を包丁を握りしめている両手に向けていく彼。


  彼女の事を殺していた自分には死刑にされなくとも、子供が成人になるまで牢屋から抜け出すことなんて出来ないのだろうと、ぼんやりと考えてしまう父親は必死に歯を噛んでは、牢屋にぶち込まれたまま、毎日のように母親に向けていく負い目に苦しめられている日々を過ごしていくぐらいなら、いっそ彼女と共にあの世でまた会おうと強く思っている彼、ぽつりと絶望と悲憤に満たされている吐息を漏らしていく彼は何度も母親の生き血に濡らされていた包丁を睨んでは、母親にこれ以上包丁に苦しめられたくないと強く思っている彼は猛然と黄色の歯を噛んでいた。


  ”シュー”刹那、鋭い刃が血肉と混じり合っては強く体を母親の温度を帯びている肉の塊から抜け出していく力につられているようにと、彼女の胸元から咲いていく一輪の花に見開かされてしまう父親、あんぐり口を開けている彼は呆然と宙を舞ては仲違いしていたようにと散っていく赤い花を睨んでは、恐る恐ると震えている視線を自分の両手に向けていく彼は、母親の体から抜け出していた包丁の体越しで伝われて来ていたまるで自分に懇願しているような、微かに痺れているような肉と肉の間から物を抜け出す摩擦していた歯がゆい感覚に苦しめられては、自分の両手にある包丁を見つめては、鮮やかにも感じてしまうバイブレーションと化していたような包丁の血に染め上げられていた柄を見つめては、心臓がやけに強く鼓動を刻んでは、手のひらがバイブレーションとなっていた包丁に刺激されては、麻痺しているように感じている彼は必死に歯を噛んでは怯んでも、自分に待っている未来は全部ろくなものではないんだと何度も内心で自分に言い聞かせて行きつつ、無理矢理酷く震えている両手で包丁を握っては、ゆっくりと微かな白い粒が残されていた包丁の尖っていた先端を胸元に向けていく彼。


  「うっ!」猛然と震えているようにと感じてしまう両手を胸元に向かって突っ込んで行こうと考えては、強く目を瞑ってしまう父親は自分の胸元の前で止まっていたようにも思えてしまう尖っていた包丁を見下ろして行きつつ、自分の真っ赤なペンキに塗りつぶされていたようなシャツを見てしまうと、つい自分がもし死んでしまったら竜祥に、まだ子供の彼に一人で両親が死んでしまう事実を受け入れてもらわないといけなくなるだけではなく、一つ一つ彼が警察たちに彼が見えていた物を全部教えて貰わないといけなくなると思っては、ぼんやりと戦慄している両手を見下ろしていく父親は自分の死へ怯えては、怯んでいる心を隠そうとしているように、何度も自分にはもう一度身勝手な真似をしてはならないと言い聞かせては、自分に置かれていた母親の左手に一瞥していくと、何度も鼻翼に力を入れていく彼は急いでいるようにと両手にある包丁を隣りに置いては、急いでいるようにと両手で母親の左手を握っていき。


  必死に母親の徐々に体温を無くしている左手を強く握っている父親は彼女が自分に見せて来るまるで自分に笑ってくれているような表情に、微かに彼女も自分に自殺して欲しくないはずだと考えてしまう父親はごくりと固唾を飲み込んでは、何度も小刻みに首を横に振っていきつつ、強く歯を噛んでいく彼は血走っている眼で足元にある彼女の鮮血を睨んでは、汗ばんでいる額から滴り落ちて来ている汗の粒の感覚を感じて行きながら、まるで自分の瞼を撫でて来ているような汗の粒の感覚を感じては、既に一人を殺してしまった自分にはどうせ罪に問われてしまうと言うのなら、いっそもっといっぱい悪さを働いては、綺麗そうな女を無理矢理自分だけの物にしてたり、気に食わない奴を徹底的に殺しては、自分の方が決定的に強いんだと思い知らせて行けるんじゃないかと思ってしまう父親、「へへ…?」


  引き攣っているような笑い声を上げていた事を気にすることなく、脳内を過っていく自分を何度もこっぴどく叱って来ていた上司の事を思い浮かんでしまうと、真っ先にそいつを殺してやっては、そこから美人が揃っている学校にでも行って、いっぱい可愛い学生を自分の物にしていき、ハーレムを築いてやろうと強く思ってしまう父親、自分が今まで散々社会に苦しめられて来た分、社会から取り戻して行くだけなんだと自分に言い聞かせていく彼は徐々に自分の可笑しな発想について納得しているようにと何度も頷いていき、歪なまでに右側の口角を上げていく彼は自分の両手にある母親の左手の感覚に理性を微かに引かれているように思えては、ぼんやりと霞んでいく視界の中で彼女の微笑んでくれている頬を見てしまい、「う…!」


  悶絶して仕舞いそうなぐらいに苦しい唸り声を上げていた自分に眉間に皺寄せてしまう父親、軽く鼻を啜ってしまう彼は母親の胸元にある彼女の鮮血に固定されていたヘンテコなポスターを見下ろしては、思わず彼女がさっき死に際に自分に向けて来ていた言葉に目を細められてしまい、強く畏怖に震わされていた両手を握っていく彼は恐る恐ると右手を軽く彼女の繊細な首筋に向けて伸ばしていき。


  忽然、まったりと彼女の黄ばんでいたような喉元に触れていた父親はまるで自分の内心で考えている彼女はもうすでに自分の傍にいないことを知らせてくれているような、微動だにしないでいる喉元の感覚に心を苛まれているように思えては、軽く右手を上げては、向きになっていた自分が砕けていたビールの瓶の欠片に破られていた手の甲を見てしまうと、つい鼻水も拭けないでいる自分は無様だと思ってしまう父親、ぼんやりと朧気になっていた視線を母親の胸元にある破られていたポスターに向けていく彼は母親の残してくれていた言葉を何度も思い返して見れば、彼女が可笑しなポスターに取り付かれているようになっていたきっかけは、自分がちゃんと彼女に気を遣っていなかったんだと思い返してしまうと、もう彼女の命を奪っていた自分に、これ以上の間違いを繰り返してどうするのだとぼんやりと考えていく彼は、母親のまるで自分の全てを受け入れてくれているような笑顔に口角を斜め下の方向に固定されているように感じては、ずっと自分を大切にしてくれていたはずの彼女のもとから離れたくないと強く思っている彼は、チラッと視線を寝室のドアフレームに向けていき、「竜祥…?」


  ”ドクンー”忽然、父親が弱り切っては微かに震えている声で自分の名を呼んでくれていた事に見開かされては、一刻も早く立ち上がって逃げないとと強く思っている竜祥は、まるで自分の臀部に縋って来ているような小汚い床に苦しめられては、上手く臀部を床から離れることが出来ずにいる彼は悔しそうにと強く歯を噛んでは、母親を見捨てていたのに、結局自分は父親に殺されてしまうのかよと内心で強く叫んでいる彼は、悔やんでいるようにと震えている両手を上げては自分の汗ばんでいる頭を抱えていた。


  中々自分に返事しようとしないでいる竜祥の態度に口角を斜め下の方向に向けて、引っ張られているように思えては、軽く右手を自分の床に置いていた包丁に触れていく父親は自分の右手とシャツにある鮮血を見下ろしてしまうと、もし自分がこんな殺人犯とひとつ屋根の下にいると言うのなら、自分もきっと竜祥と同じ態度を取ってしまうのだろうとぼんやりと考えている彼は母親の微笑む顔に一瞥しては、軽く右側の口角を上げていきつつ右手にある包丁を握りしめてい来ながら、小汚い壁と相談するように言葉を紡いでいく、「俺の代わりにお巡りさんを呼んでくれないかえ…?」


  「ううう…!!」父親が紡いだ話はきっと自分の事を試して来ているのに違いないと強く思ってしまう竜祥は急いでいるようにと両膝を床に付けては、合掌して行きつつ充血しては潤んでいる赤い眼を入り口に向けては、顎を引いている彼は必死に喉を引き千切ろうとしているような声を上げていき、「死にたくないですぅ…殺さないで…!」嗚咽まじりの声で言葉を紡いでいく竜祥はどれだけ愚かでも、人を殺めた程の罪を犯していた後で大人しく警察に自首するはずもないと思っては、父親はきっと自分が振り返って行く時に、自分が電話をかけていく際、背後からいとも簡単に自分の喉や心臓を母親にしていたように自分の事を殺しに来るんだと強く思っている彼、「僕は…僕は小夜と…」鼻水が赤くなっている鼻先から飛び出しては、まるで自分の唇を封じようとしているような鼻水を気にする余裕を無くしては、懸命に唇を開けては、何とか父親に自分の事を見逃して貰いたいと願っている彼、「まだ一緒にいたいのですぅ…!お願いします…!」何度も痙攣している両手を上げては埜哉様でも何でもいいから、自分の事を見逃してくれるような神様に願い事を聞いて貰いたいと願っている彼は叫んでいき、「お願いします…!警察にお父さんのことを言いつけたりしないから…!」


  まったりと立ち上がっては竜祥の苦しそうにと叫んでいる声色を耳にして行きつつ、呆然とトレイの中で佇んでいた父親はやけに澱んでいる眼を便器の微かに罅が入っていた蓋

の上にある使い古されては、まるで小さな深い青色の煉瓦のような携帯電話を軽く左手で握っていきつつ、チラッとまるで自分の右手にくっついては離れようとしないでいる包丁に一瞥していく。


  「秘密はずっと守るから…」まるで自分の存在を奪おうとしているような激しく鼓動を刻んでいる心臓に苦しめられては、何度も鼻翼に力を入れて行きつつ、涙を零している竜祥は喉から嗄れている声を絞り出していき、「邪魔と思わないでください…!物だって…!!」切羽詰まった心境に駆り立てられては中々自分の懇願していた言葉に返事をしようとしないでいる父親に、自分を生かしていく価値を言い聞かせてやらないと、ただ願っているだけだと、無様にも思えてしまう母親のように、ただ殺されるのを待っているだけでしかないと強く思っている彼は猛然と左手を胸元に当てていき、「いっぱいビールを買って来ますから…!」


  瞬きしてしまうと父親は雷の如く自分のもとまで駆けつけて来ては、目から飛び出してしまいそうな眼で自分の酷く震えている体を睨みながら、有無を言わせずに冷たい包丁を自分の体にぶち込んで来るんだと思っている竜祥、「パシリとして使ってもいいのですから…!」必死に瞼をこじ開けてはひんやりとした空気に眼を嬲られているような感覚に耐えて行かないと、自分には二度といっぱい親切にしてくれていた小夜に会うことも、彼女に恩返ししていくことも出来なくなるんだと強く思っている彼は叫んだ、「殺さないでください…!!」


  どうしても自分に返事をしようとしないでいる父親の態度に彼はもしかしたら殺人の味を知れていたから、もう簡単に人を殺す事に飽きているんじゃないかと思っては、内心で募っていく不安が爆発して仕舞いそうな気がしては、父親はきっと自分の泣きわめく様を壁越しでゆっくりと楽しんでから、もう泣く気力すら無くしてしまう自分の事をゆっくりと殺しに来るんじゃないかと思っては、頭が可笑しくなっているぐらいに疼き始めているような苦しみに、口角を頬から離れて仕舞うぐらいに斜め下の方向に強く引っ張られているように思えている竜祥、「お願いですぅ…!」必死に懇願していく彼は痙攣しているような両手を合わせては、嗄れてはカラスのような声で絶望から守ってくれている希望を声に乗せては、どうか父親に命を見逃して貰いたいと願っている、「小夜に会いたいんだよぉ…!」


  「もしもし…」ぼんやりと両膝を母親の左側に付けては、頭がやけに冷静になれているようにと感じている父親、「警察ですか。」目を細めて行きつつ母親の顔を暗闇と化していたような眼で映し出していく父親は、電話の向こう側から伝わって来ている厳かな声色をぼんやりと聞きながら、相手は誰なのか、どんな人なのかはどうだって良く思えている彼はぽつりと声を上げていた、「自分、嫁を殺したんで、捕まえに来てくれ。」


  呆然と両膝を強く床に付けていた竜祥は父親のまるで誰かと会話しているような声色に眉間に皺寄せられては、思わず間の抜けた声を上げてしまい、「えっ…?」「いや、真面目な話なんで。」小汚い壁越しで聞こえて来る父親の話にごくりと固唾を飲み込んでいく竜祥は軽く歯を噛んでは、痛く感じてしまう喉のまるで火に焼かれているような感覚を気にする余裕を無くしては、疑っているような眼差しを小汚い壁に向けていく彼、まったりと宙を頼っては自分の痺れているような鼻腔を刺激しに来ている鉄さびの臭いに苦しめられている彼は、父親はもしかしたら誰かと電話をしている振りをしているだけなのではないかと疑っては、自分が下手に一歩を動いてしまうと、間違いなく命の危機が訪れてしまうんだと思っている彼は何度も鼻翼に力を入れて行きつつ、ドアフレームを睨みながら、もしかしたら次の瞬間では父親は片手で空気で出来上がっていた携帯電話を握りながら、もう一つの手で母親の命を奪っていた包丁で自分の息の根を止めに来るんじゃないかと思っている竜祥。


  「冗談みたいに聞こえるこけれどさ?」目を細めて行きつつ電話越しで伝わって来る相手の、自分が相手を馬鹿にしていないかと確かに来ている話を聞きながら、右手にある包丁を眺めているようにと左右を見ている父親、「マジなんだ。」一刻も早く相手に警察を呼んで来てもらっては、自分と彼女の事を任せて行きたいと強く思っている父親は右手にある包丁の天井にある光を頼っては、自分のやけに平然としている姿を映し出してくれている包丁の体に微笑んでいく、「急いで俺を捕えに来ねぇと、」チラッと横目で携帯電話を睨んでは、自分は死にたいのに、自分に死なせる協力もしてくれないでいる社会はあまりにも厳し過ぎたものなんじゃないかと、ぼんやりと思っている彼は軽くひんやりとした息を吸い込んでは、母親の微笑んでくれているような表情を見つめていく、「いっぱい美人ちゃんたちを犯していく犯罪計画を立てていくぞ?」


  ”ドクンー”忽然、父親が紡いだまだ犯罪しようとしている話に見開かされては、絶句されてしまう竜祥は猛然とまるで自我が芽生えたようにと酷く震えては、自分の言うことを聞いてくれないでいる両手を握って行きつつ、自分の唇に当てていく彼は霞んでは震えているような視界を自分の右側にある小汚い壁に向けていき。「ああ、そう、その住所でな、」まったりと左手にある携帯電話を耳元から離れて行きつつ、目を細めている父親は見下しているような眼差しを左手にある携帯電話に向けては、ぽつりと血の粒に汚されていた唇を開けていき、「じゃ、待ってます。」


  軽く左手にある携帯電話にある赤いボタンを押していた父親は軽く顎を上げては、天井にある自分に光を与えてくれているライトを見上げていく彼は、ゆっくりと左手の手首を捻っていき、”カター”まったりと自分の熱くなっていた左手から抜け出しては軽く体を床に当てて、小気味いい音を立てていた携帯電話から伝わって来る液体に触れていた音に目を細めてしまう父親は、左手を軽く上げていたまま、天井を見つめながら声を発していた、「なぁ、竜祥よ。」


  「ううっ!!」父親のやけに平坦な声で自分の名を呼んでくれていた事に体が起爆されては、激痛が全身に何度も走ってはループしているようにと自分を苦しめに来ている感覚に、涙が勝手に目から飛び出ているように感じている竜祥。「俺みたいな大人になるんでねぇぞ?」小首を傾げて行きつつ、右手にある包丁を自分の胸元に当てていく父親は横目で寝室のドアフレームを見つめては、頑なに自分に返事をしようとしないでいる竜祥の存在に口角をくすぐられているように思えては、目を瞑っていく彼は言う、「それじゃ、立派な奴になれよ。」真っ暗闇の中で感じて来る自分の右手の動きに連れて、自分の胸元を刺激して来ている微かに痛く思えるひんやりとした感覚に、眉をひそめられている父親、ごくりと固唾を飲み込んでしまう彼は軽く歯を噛んでは、体を冷やしに来ているような冷たい空気を吸い込んでいつつ、まったりと両膝を床から離れては、ゆっくりと臀部を母親の左側にある生き血に汚されていた床に付けていく彼は言う、「酒なんか決して飲んだらダメだかんな?」


  ”ドクンードクンードクンー”人を殺していた父親が自分に向けて来ているまともそうな言葉はどうだって良く思えている竜祥は何度も鼻翼に力を入れて、中々自分の目の前で現わしてくれないでいる父親はいつ自分を殺しに来るのかが分からなくなるのが、尋常じゃないくらい早く募って来る不安に体を殺されてしまうんだと思い、自分の目の前に現れてしまうと、自分はきっと否応なしに速やかなまでに殺められてしまうんだと強く思っている彼はごくりと固唾を飲み込んでいた。


  「うぅっ!」まるで自分の体を解放しに来ているような激痛に汗ばんでいた額が一気に爆発していたように思えては、酷く冷たくなっているようにと感じている父親、「さっきの話を聞いてた…?」自分の両手を撫でて来ている温かい水のような感覚を感じて行きつつ、自分は決して弱い男ではなければ、ちゃんと彼女に頼って貰える程の強い奴であるのを証明されているんだと思えている父親は、自分の身体を受け入れてくれているようなひんやりとした床の感覚を感じて行きつつ、母親の横顔を見つめていく彼は言う、「安心していいよ…」軽く右側の口角を上げては、右手にある自分の胸元にあるシャツを濡らしていた包丁を抜けていく父親は、否応なしに自分から飛び出していく生き血を感じて行きながら、可笑しそうと笑っている彼は震えている右手を母親の左手に向けて行きながら、言葉を紡いでいき、「思ってみただけだ。」


  目を細めては軽く顔を母親の左頬に近づいていく父親は左手で強く彼女の腰を抱えに行きつつ、霞んでいる視界の中で静かに眠っているような彼女を見つめている彼は嬉しそうに笑っていき、「俺は…お前しか愛してたりしないからさ。」まったりと目を瞑っては、軽く唇を母親の温かい頬に近づいていく父親はぽつりと小さな声を漏らしていた、「待っててね、実千子…」胸元から広がって来るひんやりとした感覚に口角を硬直されているように思えては、自分が彼女にこれ程の絶望を与えていたのかとぼんやりと考えている父親は言う、「ちゃんと迎えに行くからさ。」ゆっくりと左手を母親の腰から離れては彼女の右頬に触れていこうと思っている彼は微笑んだ、「お前だけの男としてな…ちゃんと…」やけに眠たくなっているような感覚に瞼を否応なしに瞑られているように感じてしまう彼、「迎えに行くから。」まるで自分を飲み込もうとしているような暗闇の中で、自分はちゃんと彼女に触れることが出来ていたんだと知らせてくれているような、唇に当てていた温かい温度に微笑んでいた父親。

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