第8話

時は、7月30日の午後1時頃であった。


この日、家庭内で深刻な事件が発生した。


智之夫婦の家族3人が突然家を出る準備を始めた。


この時、鹿之助夫婦はひなこを連れて出かけていた。


午後2時半頃に出発準備が完了したので、家族3人は車に乗って出発した。


智之夫婦の家族3人の行き先は、ゆりかの実家がある福良(兵庫県南あわじ市)である。


鹿之助夫婦とひなこが家を出た直後に、福良で暮らしているゆりかの長兄夫婦から電話があった。


それによると、ゆりかの父親が介護つき老人ホームからタイキョしたから帰っておいでと言うことである。


ゆりかの父親は、同じ老人ホームで暮らしている人たちとトラブルを起こした。


気に入らない職員には暴言を吐きまくった…


さらにその上に、女性職員数人にセクハラをするなどのトラブルを起こしたので、タイキョしなさいと言われた。


ゆりかの父親は、老人ホーム内で過度のストレスを抱えたことが原因で認知症がひどくなった。


ゆりかの実家には、長兄夫婦の家族と母親がいる。


近くに次兄夫婦の家族が暮らしている。


それだけでは足りないので、長兄夫婦は智之夫婦に助けを求めた。


だから、急きょ福良へ帰ることになった。


いつまで福良に滞在するかについては、未定である。


かもいけの家は智之夫婦がコツコツと貯めて建てた家であると書いたが、それは頭金で払った分で全体の3分の1にあたる金額である。


残りの3分の2は、ゆりかの実家から出たおカネであった。


智之夫婦はまだ恩返しができていないので、実家の要求にこたえる形で福良へ行くことになった。


さて、その頃であった。


ところ変わって、今治国際ホテルにて…


エントランスのカフェテリア内に、鹿之助夫婦とひなこの3人がいた。


鹿之助夫婦は、26日に愛結びでひなこのお見合いを申し込んだ。


8月末に、ひなこの会員登録が満了を迎える。


鹿之助夫婦は『37歳の未婚の女にふさわしいお相手なんかいるわけない…』と言うてさじを投げた。


しかし、急に事情が変わったと言うておたついた。


ワレを忘れておたつきまくった鹿之助夫婦は、テキトーにお見合いの申し込みをした。


鹿之助夫婦がテキトーに選んだ相手は、造船所の作業員・瑛太(えいた・40歳)であった。


鹿之助夫婦がテキトーにお見合いの申し込みをしたことが原因で、深刻なトラブルが発生した。


この時、同じカフェテリアで別の愛結びのお見合いがあった。


別の愛結びのお見合いは、大きな絵画が飾られている席で行われていた。


申し込んだ男性が極度にアガッていたので、事務局の人が応対にあたっていた。


それが原因で、ひなこの番が回らなくなっていた。


いつになったら順番が回ってくるのよ…


事務局の人は、あがり症の男性の応対にクリョしているから待ってほしいと言うけど…


わしらは待てれん…


ブチ切れた鹿之助夫婦は、公衆電話に電話をかけに行った。


もう待てない…


事情が変わったからやめにします…


愛結びの登録を消してくれ…


ガチャーン!!


怒り狂った鹿之助夫婦は、ひなこを連れて勝手に帰宅した。


しかし、鹿之助夫婦の自分勝手が原因で裁判ザタになってしまった。


8月5日のことであった。


鹿之助夫婦は、裁判所から呼び出し状を受け取った。


原告は、もちろん愛結びの事務局であった。


愛結びの事務局は『お見合いをせずに勝手に帰宅したのでお相手の男性(瑛太)がひどく傷ついた…その上に、愛結びに賛同できないと言う書き込みをフェイスブックに書き込むなどしてズタズタに傷つけた…』と言う理由で鹿之助夫婦をソツイした。


ソツイされた鹿之助夫婦は、ひどくおたついた。


呼び出し状に記載されている日は、8月8日であった。


それまでに、問題を片付けないと…


ワレを忘れておたつきまくる鹿之助夫婦は、松山へ帰ったしほこに瑛太とサイコンしてほしいと頼むことにした。


時は、夜7時頃であった。


ところ変わって、松山市恵原町(えばらまち)の重秀夫婦の家にて…


家の食卓には、重秀夫婦の家族5人(夫婦と女の子3人)としほこの6人がいた。


さとみは、みんなが食べるごはんとみそ汁をついだ。


その後、みんなで晩ごはんを食べようとした。


(ピロピロピロピロピロピロピロピロ…)


その時に、赤茶色のハウディ(プッシュホン)の着信音が鳴った。


「待って、ちょっと電話が鳴っているみたい…」


さとみは、食卓を離れて電話に出ようとしていた。


その時に、子供たちが口々にさとみに言うた。


「ごはん食べたい~」

「ごはん食べたい~」

「ごはん食べたい~」


さとみは、困った声で子供たちに言うた。


「ごめんね…電話に出ないといけないのよ…大事な電話だったらどうするの?」


さとみは、子供たちに『すぐに終わるから待っていてね…』と言うて受話器をあげた。


電話は、かもいけの家からであった。


「はい、立岡でございます…(過度にやさしい声で)ああ、かもいけのフナイリのおじさまですね…どうもごぶさたしています…ああ、しほこさん…元気にしていますよ…しほこさんのお声が聞きたい…分かりました…代わりましょうか?」


さとみは、過度にやさしい声でしほこを呼んだ。


「しほこさん、かもいけのフナイリのおじさまから電話よ。」


しほこは『イヤ!!』と言うて拒否した。


さとみは、困った声で言うた。


「どうして拒否するのよぉ~」

「イヤなものはイヤなの!!」

「フナイリのおじさまは、しほこさんのお声が聞きたいといよんよ。」

「そんなことしてどうしたいのよ!?」

「どうしたいって、しほこさんにおわびがしたいからかけてきたのよ…フナイリのおじさまに今、どうしているのかを伝えてよ…」


さとみからあつかましく言われたしほこは、イヤイヤ電話に出た。


「もしもし…しほこですが…なんでアタシに求めるのよ…事情が変わった…なんで急に事情が変わったと言うのよ…イヤ…イヤと言うたらイヤ!!」


ブチ切れたしほこは、電話をガチャーンと切ろうとした。


その時に、さとみが止めた。


「待って…」

「止めないで!!」

「一体、なにがあったのよ?」

「フナイリのおじさまからセクハラを受けた!!」

「ちょっと待ってよぉ~」

「イヤ!!電話切る!!」

「待ってよぉ~」

「アタシが出るから…ちょっと待っていてね…」


再び、さとみが電話に出た。


「もしもしごめんなさい…しほこさん、ちょっとパニックを起こしてしまったの…急に事情が変わったと言われたから…パニックになったのよ…ごめんなさい…セクハラしていないよね…大丈夫よ…だから、少し落ち着いたのでしほこさんに変わる…あなた!!」


この時、重秀がやって来た。


強引に受話器を取り上げた重秀は、怒鳴り声をあげた。


「コラクソジジイ!!よくもしほこにセクハラしたな!!…いいわけぬかすな!!…事情が変わったから帰っておいでと言うたな!!…オドレの目的はなんぞぉ!?…ウソつくな!!…しほこの身体目当てで帰っておいでと言うた…変われ…オドレの奥さまに変われ!!…変われといよんのが聞こえんのか!?…もういい!!」


(ガチャーン!!)


電話をガチャーンと切った重秀は、外へ出てゆく準備を始めた。


さとみは、重秀を止めようとした。


「あなた!!」

「なんや!?」

「どこへ行くのよぉ!?」

「外へノミに行く!!」

「ごはんどうするのよぉ!?」

「みそ汁が冷めたからいらん!!」

「温めなおすから、いてよ!!」

「オドレさとみ!!」

「なによあなた!!」

「オドレがフナイリの家にめんどい頼みごとをしたから、しほこが好きな人と結婚できなくなった…しほこにわるいことしたと思っていないのか!?」

「思っているわよぅ…」

「ほんならしほこにわびろ!!」


出かける支度を終えた重秀は、強引に家から出て行った。


(バーン!!)


重秀は、より強い怒りを込めて玄関の戸をしめた。


重秀からイカクされたさとみと子供たち3人は、おびえまくった。


しほこは『アタシのせいで、兄の怒りを強めた…』とつぶきながら自分を責めた。


それから2時間後であった。


鹿之助夫婦のケーソツな気持ちが原因で、恐ろしい事件が連続して発生した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る