第3話
時は流れて…
4月24日の午後2時くらいであった。
ところ変わって、道後温泉街にあるメルパルク(ホテル)にて…
この日、友人知人だけの挙式披露宴がとり行われていた。
挙式披露宴の主役は、奈良原温史(ならはらあつし・35歳・大学院の研究主任)と20代後半の女性である。
研究の成果が世に認められて、表彰された。
好きなカノジョにプロポーズして、結婚を決めた。
気持ちにゆとりができた。
そんな時に、ややこしい問題が発生した。
新郎の控え室にて…
温史は、後半のお色直しの衣装合わせをしていた。
そこへ、おばのきぬよ夫婦が控え室に土足で上がり込んだ。
きぬよは、ものすごくつらそうな声で温史に言うた。
「温史。」
「おばさま!!控え室に土足で入らないでください!!」
温史は、ものすごく怒った声で言うた。
きぬよは、ものすごく困った表情で温史に頼みごとをした。
「なんでそんなに大声上げるのよぉ…」
「あんたらが、土足で控え室に入ったから怒っとんや!!」
温史に怒鳴られたきぬよは、居直った声で言うた。
「あやまるわよ…ごめんなさい…はい、あやまりました!!」
温史は、ムッとした表情できぬよに言うた。
「それが人にあやまる態度か!?」
きぬよは、ますます居直った声で温史に言うた。
「それじゃあ、どうすればいいのよ!?」
この時、通りかかった男性スタッフさんがきぬよ夫婦に怒った声で言うた。
「関係者以外は、勝手に入らないでください!!」
きぬよの端にいた鹿之助が逆ギレを起こした。
「なんじゃあオドレ!!帰れと言うのであれば帰るわ!!」
このあと、きぬよ夫婦はブツブツ言いながら控え室から出ていった。
温史は甘ったれている…
誰のおかげで、想い描いた学園生活をエンジョイできたと思っている…
大学卒業後は、今治市内の事業所へ就職しなさいと言うたのに…
わしらの想いに背いて、大学院へ行った…
研究研究研究研究研究研究研究研究研究研究研究…
温史は、大学院でなんの研究をしていたのだ…
理解できん!!
鹿之助夫婦は、よりし烈な怒りを抱えたまま帰宅した。
翌日の午後1時半頃であった。
ところ変わって、智之夫婦の家にて…
家の広間には、鹿之助夫婦としほこと温史と温史の母(きぬよの義妹)の5人がいた。
ひなこは、キッチンでお茶の用意をしていた。
智之夫婦の家族は、家に不在であった。
広間に、どす黒い空気がただよっていた。
前日、鹿之助夫婦は温史に『花嫁さんと別れてくれ』とお願いするつもりでいたが、温史から反発を受けたので失敗した。
温史と彼女は、結婚したけども市役所に入籍していなかった。
ふたりは、この日に婚姻色を出しに行く予定であったが、温史の母親が待ったをかけたので出すことができなかった。
待ったをかけられた温史は、怒り狂っていた。
温史の母親は、つらそうな声で温史に言うた。
「温史、お願いだから首をたてにふってよ…」
「首をたてにふれだと!?」
「温史が怒る気持ちは分かるけど、おかーさんは困っているのよ…」
「ほやけん、首をたてにふれと言うのか!?」
「温史が首をたてにふらないと、困るのはおかーさんなのよ!!」
「はぐいたらしいのぉ!!なにに困るから首をたてにふれと言うのだ!?」
温史の向かいに座っている鹿之助が、し烈な怒鳴り声をあげた。
「温史!!オドレはどこのどこまで甘ったれているのだ!!」
鹿之助の横にいるきぬよは、あつかましい声で言うた。
「温史!!」
「(ひねた声で)なんぞぉ~」
「おばさんの言うことを聞きなさい!!」
きぬよは、ひねた表情を浮かべている温史に対して、よりあつかましい声で言うた。
「温史が大学まで行くことができたのは、誰のおかげだと思っているのよ!?」
温史は、キョトンとした表情で言うた。
「誰のおかげって?」
きぬよは、よりあつかましい声で温史に言うた。
「温史が『高校へ行きたい…大学へ行きたい…中卒で働くのはイヤだ…』とビービービービービービービービービービービービービービービービー泣きまくっていたけん、おじさんとおばさんは4人の子どもたちの学資保険を全部解約したのよ!!」
温史は『だからなんじゃあ言いたいんぞ!!』とつぶやきながらひねていた。
きぬよは、温史に怒った声で言うた。
「温史!!お前はおじさんとおばさんとヤクソクしたことを思い出しなさい!!」
「ヤクソク…」
「おじさんとおばさんは、温史に対してこう言うたのよ!!…大学卒業したら、宅間の漬け物工場に就職することが決まっていたのよ…それを温史がけとばした…だから、おじさんとおばさんは会社の人に『大学院卒業まで待ってほしい…』とお願いしたのよ…温史!!」
「もうやめろ!!」
鹿之助は、きぬよを止めたあと温史になにに不満があるのかを言うた。
「温史、お前はなにが不満なのだ!?もしかして、(花嫁さん)と結婚できんかったことに不満があるのか!?」
「そうです。」
温史の答えに対して、鹿之助は居直った声で言うた。
「(花嫁さん)と別れさせたことについてはあやまるよぉ…(花嫁さん)のジンテキホショウはするから…それでいいだろう…」
鹿之助の言葉に対して、温史はだまりこんだ。
鹿之助は、ものすごくつらそうな声で温史に言うた。
「それじゃあ、ここにいるしほこさんはどうするのだ…」
しほこは、泣きそうな表情を浮かべていた。
鹿之助は、つらそうな声で温史に言うた。
「温史には、しほこさんの泣き声が聞こえていないようだな…」
だから、ジジイはなにが言いたいんぞぉ…
温史は、よりひねた表情でつぶやいた。
鹿之助は、つらそうな声で温史に呼びかけた。
「しほこさんは、ご両親を亡くした上におうちをなくした…松山で暮らしているおにいの夫婦から疎まれた…他に身よりはいない…どうするんぞ!?」
だから首をたてにふれと言うのか…
温史は、ますますひねた表情を浮かべた。
鹿之助は、ますますつらそうな声で温史に言うた。
「温史!!ワシもヤクソクする…別れてしまったカノジョのジンテキホショウをするから…知人に頼むから…この通りだ…」
きぬよは、あつかましい声で温史に言うた。
「おじさんは、温史と別れたカノジョのジンテキホショウはすると言うているのよ…お願いだから、首をたてにふってよ…」
温史は、シラけた表情を浮かべた。
きぬよは、あつかましい声で温史に言うた。
「温史が結婚したい気持ちはよくわかるわよ…だから、しほこさんにひと言『お願いします』と言うてよ…『お願いします』と言えば結婚できるのよ…」
温史の横にいる母親は、温史の頭を両手でつかんでしほこの前で頭を下げさせた。
「お願いします…」
お願いしますと言われても困るわよ…
しほこは、つらそうな表情でつぶやいた。
きぬよは、過度にやさしい声でしほこに言うた。
「しほこさん、どうしますか?」
きぬよから過度にやさしい声で言われたしほこは、つらそうな表情で首をたてにふった。
きぬよは、自己満足の表情でほこらしげに言うた。
「引き受けてくれるのね…おじさんとおばさんは安心したわ。」
「ああ、そうだな。」
しほこと温史は、鹿之助夫婦の怒りを鎮めるために仕方なく結婚することになった。
その翌日、しほこと温史は今治市の市役所に婚姻届を出した。
温史は、大学院の研究所をやめて宅間の漬け物工場へ再就職した。
しほこは、九王の運送会社にパートで就職した。
ふたりは、智之夫婦の家から20歩先にある借家へ移り住んだ。
借家は、キッチンはあるけど浴室はない…
トイレは、家の外にレンタルのニッケンの簡易トイレが1台あるだけ…
おふろがないので、智之夫婦の家のおふろを使わせてもらう…
朝と晩のごはんも、智之夫婦の家でいただく…
鹿之助夫婦は、しほこと温史に『家族だからエンリョすることはない…』と言うてすすめたが、それでいいのだろうか?
しほこと温史が幸せになれる保証は、全くないと思うけど…
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