第25話 巨漢同士の激突

登場人物

―メタソルジャー/ケイン・ウォルコット…軍を辞めた超人兵士、ヒーローチーム「ネイバーフッズ」の臨時リーダー。

―ローグ・エージェント…暗躍するソ連の軍人。



一九七五年、八月:ニューヨーク州、マンハッタン、停泊中の貨物船上


 状況は変わった。照り付ける夏のニューヨークの陽射しの下で、両者は構え直した。

 彼らがいる金属製コンテナの上では熱気が立ち上っていたが、しかし二人の巨漢の持つ雰囲気に気圧されて、やや遠慮して歪曲しているようにも見えた。

 ケインは一気に踏み込んで攻撃を仕掛けた。外側から左右に二発ずつパンチ、胴に連打。しかし相手はガードと筋肉での受け止めを駆使してダメージを抑えた。

 やはり肉体は強固か。ケインは相手の脚を壊すつもりで左右のキック連携を放ち、そこにはジェームズ・フィグのサイエンス・オブ・ディフェンス的な、未知の痛みが混入されていた。

 しかしそれでも相手は耐えた。ケインの隙ができるまで強引に耐えて見計らい、軽く前に出ているケインの腕を掴むと同時に顔面を抑え込んで転倒させた。

 追い打ちの踏み付けを転がって回避し、相手の胴向けて両足を打ち付けた。しかし破定槌じみたそれを相手は胴を反らすようにして押し出し、ケインは逆に弾き飛ばされた。

 その勢いを利用して後転で起き上がったところへと、大人が子供に残虐な暴力を加えるかのごとく、外側からのパンチが何度も襲い掛かった。

 腕を壊すつもりだと察知し、相手の技を真似して肘でガードをした。肘でガードした上でも、凄まじい衝撃であったが。

 汗すら流れぬまま両者は技量を発揮し合い、巨漢同士――と言っても相手が圧倒的に大きいが――の戦いは介入不能にすら見えた。

 胴を狙う相手の掴もうとする腕に、ケインは腕を外側から絡めてぐるりと円を書くように回して阻止し、逆側の手の付け根部分で頬骨を殴打しようとしたが、それを相手は腕を下から突き出して受け止めた。

 ローグ・エージェントは解放された逆側の腕をケインの首に押し当て、後退したケインは数歩の時点でくるりと一回転しながら肘で殴打しようとした。

 相手の肘と激突し、今度は逆側に回転してまた放ち、それも肘で防がれ、ケインは相手の胴を軽く蹴って反動で後方へ側転気味の前転をしながら下がった。

 巨漢は軽くステップを踏んで、金属で補強された巨躯が軽やかに揺れた。やがてケイン目掛けて踏み込み、下から振り上げるような蹴りで飛び込んだ。

 斜めに逸れてそれを回避したケインは互いに振り向いてから打撃の応酬に入った。見掛け以上、いやそれどころかかなりの高速で次々に放たれる打撃を回避し、捌き、打ち返した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る