第1章 妖精の愛し子と聖女①
「赤ちゃんの背中に羽が生えててね、ふわふわ飛んでるのー」
まだ小さかった私が言った時、お母さまはとても
「それは、
「誰にも?」
「特別な力は、あなたを守ってくれるとても強い味方にもなるけれど、あなたを利用したり、傷つけたりするきっかけにもなるの。だから、いつか、
その時はお母さまの言葉の意味がよく分からなかったけれど、お母さまの言葉の通り妖精さん達はいつも私の
十歳の時にお母さまが
私はずっとずっとお母さまの言葉を覚えているの。
●●●
十三歳になった時に、
「マーガレット・シルバー公爵令嬢」
初めての顔合わせの席でキース殿下は
「なんでお姉様なんかが婚約者なの? 私の方が王子様にふさわしいのにー!!」
ディナーの時に、シンシアは
「えぇ、えぇ。マーガレットみたいな
「……マーガレットの母親は、オルタナ
お父様の言葉に義母は私を
「お前の母親のせいで、私と
だけど、私は義母のその言葉を疑っている。だってお母さまは、私の前でお父様の話をすることなんて一度もなかったんだもの。
その最期の時まで、たったの一度さえも。
(王子きてるよー)
(シンシアとおしゃべりしてるよー)
(熱々の紅茶をぶちまけてやろうか)
キース殿下は、たまに公爵家にご訪問くださるけど、
「マーガレット。体調は
「キース殿下。あのっ……ご心配いただきましてありがとうございます」
「お姉様! ご無理なさらずまだお休みになっていた方が
シンシアは、キース殿下の前では、体調の悪い姉を本当に心配しているかのようなひたむきな顔をして私に話しかける。だけど、キース殿下の見えない角度からは、意地悪そうに口の
「マーガレット。
「はい。ありがとうございます」
キース殿下は、婚約をしてからまだ間もない時に、私をお茶に招待してくださった。王宮の庭園でのお茶会なのでさすがに私にも新しいドレスと、メイド長が
「キース様。マカロンもとっても美味しいです!」
フリフリのピンクのドレスとお
ガタン!
「きゃーっ!」
「キースさまぁ!」
「王宮医をすぐにっ!」
キース殿下の専属護衛であるハンクス様が、指示を出しながらキース殿下に
(どくだよー)
(王子様の紅茶に毒が入ってたのー)
(シンシアの紅茶にも毒を入れてやろうか)
のんびりと言った妖精さん達の言葉に私はぎょっとした。
毒? ねぇ、助けられる?
(いやだー王子様はシンシアとばっかり話してるからきらいー)
(それに死なないよー痛くて苦しいけど死なないよー)
(
良かった! 死なないのね。でも、あんなに苦しんでるわ。お願い! くっきー、しょこら、みんと!!
妖精さん達はなかなかうなずいてくれなかったけれど、私が必死に
キラキラ
突然キース殿下の体が光に包まれて、まばゆい輝きを放った。
「僕は……」
輝きが消えるとキース殿下は目を覚ましたけれど、何が起こったか分からずに
「キースさまぁ! 良かったですぅー!」
シンシアは、泣きながらキース殿下にすがりついた。キース殿下は、そんなシンシアを見つめた後で、ティースタンドを
そして、呆然としたままシンシアと私を何度も
後日判明したことは、キース殿下の弟であり第二王子であるレオナルド様を王太子にしたいという過激派が、キース殿下付きのメイドを
そのお茶会での出来事は、毒を飲まされても
(奇跡じゃなくて私たちのおかげなのにー)
(どうせ死ななかったのにー)
(もう一度毒を仕込んでやろう)
不満そうにパタパタ飛び回る妖精さん達に私は思わず笑ってしまった。
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