隣のやつ

ボブ

ホジホジ症候群

今日も隣の席の相澤は鼻くそをほじっている。

何回か注意したこともあったが、やめる気配はない。

「やめた方がいいよ。そういうの」と言うと、「あ、うん。そだね」というふうに当たり前かのように流されてしまう。まぁ、人の勝手だし、ほじった手で触れてこなければ別にどうってこともないんだけど、直接ほじっているところを見ると、流石に気になって仕方がない。

どれだけ気持ちよさそうにほじるんだよ。

いつもそう思いながら、顔を黒板の方向に向けたまま横目で相澤の鼻元のクネクネと動く指を見ている。直接ガン見すると、流石の相澤も恥ずかしいのか、ほじるのをやめてしまうから、こっそりと見ているのだ。


最近は、相澤が授業中に鼻をほじっていることがクラス中に広まり、横目で相澤のことを見るやつが増えた。常に相澤のことを見ているのは、僕を合わせて計3人くらいだ。

みんな、何か言いたげな顔でニヤつきながら相澤のホジホジタイムを覗く。


「うわっ、またほじってるよあいつ」

近くの陽気な女子たちが数学の授業中にこそこそと話しをしていた。鼻を片手で覆い隠して、あたかもほじっているように反対の手の指をクネクネと動かしながら小さく爆笑している。そんな女子たちを目にして気付いたのか、近くの席の静かで無口な女子が現在進行形でほじっている相澤とその女子たちに目線を往復させると、小さく笑った。

あ、あの人の笑ったところ初めて見た。

そんなふうに思ったのか、近くの数人の男子が口を開けたまま凛々しい目で、無口な女子のことを見つめている。


僕は数学の先生に悪いなと思い、視線を黒板の方へ向けた。しかし、今日は沢山詰まっているのか、相澤の『ほじり音』がやけに大きい。授業に全然集中できないのだ。

「くちゅくちゅ」

中のブツが湿っているのだろうか。生々しい音が辺り一帯に響き渡る。みんな、相澤にバレないようにと口を押さえるやら何やらして、笑いを堪えている。

相澤のせいで授業をそっちのけにしてしまってる僕は、みんなが笑っているその光景に感激し、あることを思ってしまった。


僕も鼻ほじってみようかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣のやつ ボブ @tanigutiakira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ