第9話 調べるべきこと
私とロコは、しばらくシェルドラーン家という公爵家でお世話になることになった。
その屋敷の一つに、私は部屋を与えてもらえた。私とロコには、もったいないくらい大きな部屋だ。
「うーん……」
「クゥン……」
しかし、その部屋には少しだけ問題があった。
それは、ロコが過ごすためのゲージがないのだ。
そのことは、仕方ないことである。この世界でなくても、犬がいない場所で犬が過ごすためのものがあるはずがない。
「まあ、今は仕方ないけど、いずれは必要だね」
「クゥン……」
とりあえず、今はゲージがなくてもいいことにする。
だが、いずれは必要になるだろう。その方が、私にとってもロコにとってもいいはずである。
「よく考えてみれば、こちらの世界では犬を飼うのは珍しい訳だから、色々と不便なんだろうね」
「クゥン?」
「それに、私はこちらの世界のことを知らないし……」
考えてみれば、この世界でロコと暮らしていくには色々と問題がありそうだ。
そもそも、私にはこちらの世界の知識がない。色々と学ばなければ、ロコとの生活は豊かなものにならないだろう。
「あ、そうだ。食べ物とかは一番気をつけないと……」
そこで、私はとても重要なことに気づいた。
よく考えてみれば、ロコの食べる物を考えておかなければならないのだ。
以前の世界には、ドックフードというとても便利な食べ物があった。もちろん、それだけを与えていた訳ではないが、主な食事はそれだったのである。
しかし、こちらの世界にはそのようなものはないだろう。そのため、ロコは人間が食べる物と同じ物を食べることになる。
だが、人間には無害でも、犬には有害になるものはたくさんある。それを把握しておかなければ大変なことになるだろう。
「そもそも、この世界はどんなものを食べているんだろう?」
そもそも、この世界での食生活について私はまるでわかっていない。
もしかしたら、私の世界と変わらない食生活の可能性はある。しかし、それでも本当に私の世界と同じものとは限らない。
何にしろ、ロコが食べられるものについて把握しておきたい。食事は、一番の問題であるため、迅速に対処しておきたい所だ。
「とりあえず、アムルドさんに相談かな?」
「ワン!」
とにかく、色々と調べた方がいいだろう。
という訳で、私はアムルドさんに相談することにした。
◇◇◇
私はロコを抱きかかえながら、アムルドさんの部屋に向かっていた。
そんな私は、廊下の前方から歩いてくる人を見つけた。その人は、私も知っている人だ。
「おや、ミナコ様、どうかされましたか?」
「ホーデインさん、実はアムルドさんを探していて……」
「おや、アムルド様をですか? 何かご用件があるのでしょうか?」
その人物とは、執事のホーデインさんである。
ホーデインさんは、使用人の取りまとめで執事長であるらしい。アムルドさんからの信頼も厚い人で、何かあったら頼ればいいと言われている。
よく考えてみれば、アムルドさんではなくホーデインさんに聞けばいいのではないだろうか。アムルドさんも忙しい人らしいので、その方がいいはずである。
「実は、調べ物をしたいんです。そのことをアムルドさんに相談しようと思っていたんですけど……ホーデインさん、何か本とかありませんか?」
「なるほど、そういうことでしたか。それなら、書庫に案内しましょう。あそこなら、色々な本があります」
私の質問に、ホーデインさんはそう言ってくれた。
どうやら、この屋敷には書庫があるらしい。しかも、そこに案内してもらえるようだ。
「ありがとうございます。そこなら、色々と調べられそうです」
「いえいえ、何かあったら、まず私達を頼ってください。大抵のことなら、解決できると思います」
「はい」
ホーデインさんが解決策を教えてくれたため、私はアムルドさんの元に行かないでよくなった。
アムルドさんは、色々と忙しいらしいので、これからはこうして使用人の誰かを頼った方がいいのだろう。
こうして、私は書庫に案内してもらうのだった。
◇◇◇
私はホーデインさんの案内で、書庫まで辿り着いていた。
「それでは、これが書庫の鍵ですので、調べ物が終わったらお返しください」
「はい、ありがとうございます」
「いえいえ、ごゆっくりどうぞ」
ホーデインさんは、私に鍵を渡して去っていった。
それを見届けてから、私は書庫の中を見渡す。
その書庫の中には、たくさんの本が広がっていた。これだけあれば、食べ物や犬についての本もあるはずだろう。
「さて、まずはどの本がいいかな? あれ?」
ロコを抱えながら、私は本棚を見ていく。
しかし、そこであることに気づいた。よく考えてみれば、私は本が読めるのだろうか。
「えっと……」
そう思って、私は一つの本を手に取った。
すると、表紙の文字を理解することができる。
その本の表紙は、私が知っている文字になっているのだ。これも、神様がくれた力なのだろうか。
よくわからないが、読めるなら問題はないということだ。別に、その辺りのことを気にする必要ないだろう。
こうして、私は書庫で本を読むことにするのだった。
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