第58話
その一言にビックリした後、どういう意味だと意思を込めて少し睨むと、彼は少し慌てた様子で言い訳をした。
「いやいや、君を見世物にしようってわけじゃない。何なら、深夜誰もいない時間帯に行ったって良い。私は君と模擬戦をしてほしいだけなんだから。」
よく聞いてみれば、僕はずいぶんと評判になっているらしい。
お供となる者たちもつけずに一人訓練をしているのに、やたらと強そうな勇者だ、と。
「そんなに評判なの?」
「ああ、少なくとも他の勇者なら大体は知っているくらいだな。」
なるほど、つまりは腕試しか。
そう結論付けた僕は急いで残りのご飯をかっ込み、訓練場へと移動を開始した。
移動中、彼は僕に何度か話しかけてきた。
どこに住んでいたのかや、好きな色や物とかを知られることになったが、まあそれはいい。
だが、少し不思議なことがあった。
「君の誕生日は?」
「10月2日、ちょうど召喚された日だよ。」
「うわー、それは気の・・・毒・・・・に・・・・?」
その返答に少し違和感があった僕は、詳しく聞いてみると
「いや、私が召喚されたのは11月に入ってからなんだよね。」
ということだった。
なぜなのかは知らないが、異世界召喚なんて非現実的なことが起きている時点で、不思議なことには変わりない。
すぐに気にするのはやめることにした。
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