第46話

 1度目の模擬戦を終えて、他の4人が集まって話し出したところを脇目に見ながら、一人離れて考える。



 私は今、特殊なスキルなどはほとんど使わず、ただ【近接戦闘術】のみを使って戦っていた。


 その結果がこれだ。


 本来はレベルが上がるごとに最適な動きに修正されていくはずの【近接戦闘術】だが、私の場合は前世で柏木という友人の道場で習った動きを覚えていたためか、最初からかなり動くことができた。


 それに、【近接戦闘術】のレベルもぐんぐん上がって、今では【上級近接戦闘術】にまで進化し、レベルは78というかなり高い数値でもあった。


 だが同時に、【上級近接戦闘術】より上、つまり【超級近接戦闘術】に行くことはできないだろう、とも感じていた。


 これより上は、型を当てはめるだけでは不可能。


 自分で何かを見出さない限りは、決して登れない領域。


 そして私は、それができない存在だと、自分で理解していた。


 まあ、現状でもさっき見た通りかなり強いうえに、これ一筋で生きるというわけでもないので、別にどうこうしようという気は全くないが。




 模擬戦は結局、合計5度行った。


 そのすべてに【近接戦闘術】だけで勝利した私だが、終わった後のメンバーの反応はこのように分かれた。


 隊長のアーレスは分かりやすく警戒を、副隊長のクールスは少しわかりにくいが好印象、シェラに関しては驚いたことに、かなりの好印象だった。


 どうやらシェラは、隠れ戦闘狂の気があったようで、達人4人を相手にして一歩も引かない様子は、彼女に好印象を与えたらしい。


 バラン?


 私は大商人の跡取りの、ころころと変わる顔色が出会ってすぐにわかるような、そんな才能は持っていない。




 そうこうしているうちに日が暮れたので、その日は解散となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る