第45話

 私は結局、隊長であるアーレスの制止によってフードを取ることを免れた。


 もし、フードを取ることになっていれば、ほぼ確実に殺し合いをしなければならなかったと思うので、少しだけ安心したのは置いておくこととする。



 私たちはその後、ある程度の戦闘の動きを相談し、実際に動いてみたが、結局はそれぞれの戦闘スタイルが全く違うので、集合がかけられたときに声が聞こえる範囲を目安に、全員がそれぞれ単独行動をするということになった。



 第32訓練場では、今回志願した兵士たちがそれぞれの技で、それぞれの方法で訓練を行っていた。


 けれども、そんなごちゃごちゃとした場所でも、その中でひときわ目立つ集団があった


 それは、訓練場の中心から少し入り口側にずれた場所で、模擬戦を行っていた集団である。


 しかし、その模擬戦は他の者たちとはいくつかの違う点があった。


 まず、お互いのその動きがすべて達人級であったこと。


 双方の動きは、こうして少数精鋭部隊として選別された者たちであっても、目で追うのが精いっぱいというほどである。


 次に、使用している武器がどちらも刃を潰していない剣などの、いわゆる本気装備であったこと。


 そして、最後の違う点。


 それは、この模擬戦を4対1で行っており、それでも1人の側が未だ押していたということである。



 1人の大きなローブを着て姿がよく分からない者に向かって、フルプレートを着た盾持ちの大男が大きな斧を持って突撃し、その影から死角へと短刀を持った人影が飛び出し、その間から隙を突くように何本もの矢が飛び、上からは少し離れたところから投げた爆弾の爆撃が降ってくる。


 その猛攻に対しローブを着た者の方は、剣で受け止め、肘あてで受け流し、手甲で逸らし、変わり身でよけ、短剣で突き返し、蹴撃で突き飛ばし、手刀で叩き折り、スリングで投げ返す。



 実に様々な方法で攻撃をしのいでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る