第41話
ここ数年、バルト大帝国帝都ロンドではある店が評判となっていた。
それは、香水屋だ。
と言っても、普通の店のように花を使った香水はこの店には存在しない。
この店では、どんな効果の香水が欲しいかを最初に言い、出した金額の分だけ性能のいい香水を作り、決められた日数で販売する。
普通の香水屋とは明らかに違うが、それでも効果が出ているので売れているのは確か。
数年前に帝都の片隅に出されたこの店も、移転を繰り返すことで、メインストリートに出店することも出来るほど評判であった。
私は結局、旅に出た。
そして、5年ほど小国を見て回ったのち、列強国の一つであるバルト大帝国に入った。
そして困った。
路銀が尽きたのだ。
今までは、街道を襲う盗賊団を狙ったり、小さな村を襲ったりして路銀を得ていたが、この国だとそうはいかない。
まず、そもそも盗賊団なんてこの国に存在しない。
兵士たちの実践訓練や、帝国所属の十大列強の暇つぶしで簡単につぶされていくため、私が狙う分の獲物などないのだ。
次に、小さな村潰しだが、これをやるとめちゃくちゃ優秀な兵士たちとの追いかけっこが発生する。
最初に襲った時に、それを知らなくて危うく詰むところだった。
何か月も前のことを突然兵士から尋ねられた時は、危うく正体を明かしてしまうところだった。
幸い、誤魔化すことができたから良かったものを、下手したら帝国で指名手配されてしまうところだった。
ちなみに、先ほど正体を明かしてしまうところだったと言ったことから分かるだろうが、私は蟲人の姿をほかの者に見せていない。
何せ、下手な魔物よりも凶悪な姿をしているんだ。
見られたら、討伐体が派遣されること必至だろう。
ということで、今は帝都で怪しい香水屋をやっていた。
やり始めてからいつの間にか数年が経っていたが、そろそろ路銀もだいぶ貯まったので、また旅に出ようと考えていた。
具体的には、大体一月後とする予定だ。
それだけの期間があれば、大体の客に店を閉めるということを報告できる。
報告すると少し面倒な客はいるが・・・、まあ、何とかなるだろう。
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