第40話

 「ふぅ~。」


 大きなため息をついた私は、大量に創り上げ、操作していた蟲達に自由に行動してもいいという許可を与えた。


 すると、今までまるで風景のように・・・・・・・・・じっとしていてピクリとも動かなかった蟲達が、がさがさと大量に動き始めた。


 その数は、視界に映るものだけでも数百から数千匹存在しており、重なっている蟲や、壁になって見えない蟲も含めれば、数万匹は優に超える数であった。


 彼らには、今まで見たことのないほど豪華な豪邸に見えただろうが、実際は全く違う。


 彼らは、【幻光玉虫ファントムライトジュエルパール】や【幻覚蝶イリュージョンバタフライ】をはじめとした、何十種類もの蟲達によって、そう見えるよう、そう聞こえるよう、そう感じるように幻を見せられていたのだ。


 一応、幻でないものもある。


 執事のような姿をした蟲に、私が着けていた仮面、さらに言えばこの豪邸さえも、実際に存在するものである。


 最も、すべて蟲であるがのだが。


 執事のような姿をした蟲は【蜘蛛人アラクノイド】、私は着けていた仮面は【装甲蟲アーマーバグ】の亜種である【仮面蟲マスクバグ】、この豪邸は【迷宮蟲メイズバグ】という実際にいる蟲をもとに私が新しく創り上げた【住居蟲ホームバグ】。


 すべて、私が【魔蟲創造】のスキルで創った蟲達だ。


 え?【神蟲創造】はって?


 あれは、最初に使おうとしたときに、厄介な消費があることが分かったので、それ以来触れていない。


 消費を無視してしまえば、実質何でもできてしまうようなスキルは、厄ネタ過ぎて使う気になれない。


 今の蟲の位階でも、十分に通用してしまうのも理由の一つだ。



 さて、今の話はひとまず置いておくとして、これからの話についてだ。


 正直、非常に迷う。


 選択肢は無数にあるのだ。


 今の強さであれば、王権を発動させた賊王相手でも、いい勝負ができる自信がある。


 十大列強に挑むのもいいだろう。


 また、彼女の話を聞いていると、騎士というのもロマンがあった。


 国に使えるというのもいいだろう。


 食事を何が良いかと聞かれたときに、何でもいいと答えられるのが一番困るのと同じで、選択肢が無数にあるというのも、なかなかに困るものだった。


 ふと、思い出す。


 この世界に転生してから、最初のころにした選択を。


 さんざんに悩んで決めた選択を。



 答えは決めた。

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