第38話
議論を始めて1時間ほどたった時、唐突に何かが振動するような音があたりに響き始めた。
その後、騎士団員の怒号や悲鳴があがり始めると、その音に掻き消されないほどの、さらに大きな振動するような音が響き始めた。
私を含めた3人が、慌てて野営地の周囲に設置した天幕から出ると、そこには黒光りする巨大な1体の蟲が存在した。
その蟲は、剣を構えようとした騎士団員たちに対して、何か音で攻撃をしているのか、周囲を大きな音を放って威圧していたが、その蟲が私の方を見ると、急に音が収まり始めた私の目の前に着地した。
どうしたものかと、副団長たちに確認を取ったが、いいと思う返事が帰ってこず困惑していると、空中に浮いていた巨大な蟲は、ゆっくりと地面に近づいてきて、私の目の前に着地した。
そして、私にお尻側を向けると唐突に、背中の羽がパカリと開いた。
・・・ん??
そこには、大の大人が広々と使っても数人が入れるスペースがあり、4脚の椅子と共に手紙が1通、括り付けられていた。
疑問に思いながらも、その手紙を読んで見るとそこには、驚きの内容が記されていた。
『突然のことに謝罪する。私は数か月前からこの森に住んでいる者だが、人と会うのは久しぶりなので、いろいろと情報を聞きたい。その時に、こちらにしてほしいことがあればある程度のことはするつもりだと、伝えておく。もし、教えてくれるのならば、その蟲の中に入ってきてほしい。その蟲は私が従えているもので、あなたの指示には従うよう命令を出している。最後に、騒がせたことをここに謝罪する。』
読み終わった後に2回ほどじっくりと読み返してから、手紙を副団長たちに見せて私はこう言った。
「もう手遅れじゃないか?多分これ、あの家の住人からだぞ。」
その問いに対して、副団長たちは肯定を返すと、早速向かうメンバーの選抜を始めることとなった。
結局、メンバーは私と護衛3人の4人で行くことにした。
椅子が4脚までしかないのも恐らく、4人までなら連れてきてもいいという許可なのだろうし。
出発前の準備時間で、私は副隊長と話をしていた。
「しかし、こんなところに住んでいるなんて、いったい何者なんでしょうか?」
「さあ、見当もつかん。だが、とても強い御仁というのは分かる。」
「まあ、そりゃあ、この森で数か月も生活できたのなら強いのは分かりますけど、そこまで言うほどですか?この森で生活することぐらいなら団長だってできますよね。」
「確かに、この森で私は一人で生活できるが、そういうことではない。この蟲の話だ。」
「え?この蟲ですか?確かに巨大ですけど、それがどうかしたんですか?」
「はあ、まだわかんないのか。この蟲は恐らく位階4はあるぞ。」
「なっ!!位階4!?てことはこの蟲を従える主も・・・。」
「ああ、最低でも人間進化者であることは確実だろう。私たちはそんな相手から生き延びなければならないというわけだ。」
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