第21話
気づけば、知らない場所にいた。
いや、訂正。
この場所は、何度も見ているからよく知っている。
とても豪華な装飾がなされた列車の客室と、その窓からまるで宇宙のような、しかし星々の輝きではない光がいくつも見える場所。
そう、この場所は夢で幾度となく見ていた光景だ。
しかし、俺は一度この場所を知らない場所と言った。
何度も夢で見ているはずの場所を、知らない場所と表現したのはもちろん理由がある。
それは、今までとは大きな違いがあったからであった。
以前までとは違い、自由に動けるという点である。
何を言ってるのか分からないと混乱するやもしれないから説明しておくと、今まではただ窓の外を眺めているだけで、何も自分の意思で行動することができなかったのだ。
それが今では、席から立ち上がり、やろうと思えば客室から出ることも可能な状況なのだ。
混乱してしまうのも無理はないと自分に言い聞かせていると、突然客室のドアにノックをされた。
さらに困惑した状況でいながらも、ドアを開けるとそこには、何かの制服を着た靄のかかっていて顔の分からない男が一人立っていた。
しばらくポカンとしていると、この部屋にノックしてきた靄のかかっていて顔の分からない男が話しかけてきた。
「今回は、【■■■■】レード・ラード号にご乗車いただきありがとうございます。わたくしは、当列車の車掌である【■■■■】レード・ラードでございます。」
「あ、どうも。あれ?でも、いつの間に俺、列車になんか乗ったんですか?」
混乱した状態で俺は問いかけると、車掌のレード・ラードと名乗った靄のかかっていて顔の分からない男は、
「その件については、1人のお客様が乗車券を購入されておりますので、ご安心ください。」
と、返してきた。
全く状況のつかめない俺は頭に?を浮かべていると、車掌のレード・ラードと名乗った靄のかかっていて顔の分からない男が、さらにこう言ってきた。
「実は、先ほど言った乗車券を購入されたお客様から面会を求められております。今から向かっても大丈夫でしょうか。」
何も分からない俺は、とりあえずハイと頷いておき、車掌のレード・ラードと名乗った靄のかかっていて顔の分からない男の道案内で客室を出て、食堂車へと向かうこととなった。
食堂車に向かっている最中にも、列車の豪華さに驚いていたり、他の乗客がいないことを不審に思っていたりしたが、それも食堂車に到着した時点で終了となった。
「お客様をお連れしました。」
そう言って、車掌のレード・ラードと名乗った靄のかかっていて顔の分からない男が案内した場所は、広く縦に長い食堂車の中でも1番奥に位置する席だった。
そこには、真っ黒なタキシードを着た、顔全体を覆う灰色の仮面をつけた男がいた。
「やあ、『&コ#7!』君。君にとっては初めましてかな?」
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