第52話 だ↑ん↓じょ↑ん→!!

「むんは先に行くって、早く来いって言ってたです」

 朝早くに村を出て、俺たちは整備もまともに行き届いていない砂利道を歩いて行く。


 マジカを連れていかない理由は他にもあったが、それは言うべきでは無いかな。

 ずっと聞いてくるメルナには嫌気が差すが。そんなに彼女の事を気に入ったのか。


「むんとは?」

「昨日のエルフ、そう名乗ってた」

 むん? むん……ムーンか!?


「もしかしてムーンですか?」

「……そうだったかもしれない、です」

 ここに来てムーン参戦か。と言うか俺って奴の名を把握して無かったんだな。どんだけトラウマだったんだよ。


 メルナと比較したおかげか、大分マシになってきたトラウマではある(吐き気は若干するが)。


「このままでは時間かかる、背負っていくから早く行こ」

「え、背負われるんですか私?」

 言うが早いか彼女は俺を無理やり背負うと走り出した。


 やばい、めちゃくちゃ速い。

 景色が激しく移り変わる中、俺は気を失った。





「――きろ、起きろ!」

「ぐほっ」

 誰かが俺の腹を殴りやがった。


 ガバっと起き上がり、今の状況を確認する。


 狼国に似ているが、あそこよりは神秘的と言うか、なんだか綺麗な森の町と言ったところか。


「ここはエルフの里ですか? どこの長の?」

「私だ、お久しぶりだな」


 そこには白髪のエルフが居た。

 るまいあせんと言う名だったかな?


「お久しぶりですね、るまいあせん」

「ああ、待っていたぞ」

 立ち上がり、彼女と握手を交わす。


 老人とは思えない、綺麗でしっとりした手だ。


「るーるるるるるる」

「るーるるるるるる」

 俺たちは抱き合い、お互いの背中を叩いていく。


 謎のエルフの挨拶だが、俺的には美女と合法的に抱き合えるのでオーケーだ。


「ここではなんだから、行くぞ」

「え、ちょ、引っ張らない――」


 彼女に腕を引っ張られ、俺は無理やり連れてかれる。




「――これが例の本ですか? 確かに私が来ると書かれ、その先は白紙ですね」

「そうだ、これは我々はあーかいぶと呼んでいるが、貴様が来ると言うことから先が書かれ無くてな」


 アーカイブは普通の本の様で、赤い表紙の大きい本だ。

『シンカ・スクリューがエルフの里を訪れる、その者に頼れ』と書かれている。


「むぅ……何か問題でもあるんですか? 頼れとは」

「現状問題になってる物はないな。――だがムーンより貴様が世界樹に興味があると聞いた。ならばそれこそが答えだろう」

 俺が世界樹(エルフにとっての神)に興味を持っても怒らないのか。


 エルフは世界樹の朝露を売って生計を立てている。それ故に世界樹に近づく他の種族には容赦がない。


「世界樹には何か秘密がある、そう思って来たのです」

「どうしてそう思ったのだ?」

「直感と言ったら怒りますか?」

「そう言うのも大事だ、特にお前の様に無駄に策を弄する小賢しい奴はな」

 小賢しいって……。


「――ここから話すことは、里の外には他言無用で頼むぞ」

「心得ています」

 言ったら多分エルフに殺されるわ。


「世界樹内はな……ダンジョンになっているんだよ」


「だ↑ん↓じょ↑ん→!!??」


 やばいテンション上がるんですけどぉ↑、てか別ゲーになってねえか?

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