第6話 婚約

 サツカア公爵家の屋敷にやって来た。

 スクリュー家の敷地より狭く、庭の草木などの手入れが行き届いていない。


 ほぼ突然の来訪に屋敷は慌ただしく、使用人たちが一斉に並び俺を出迎える。使用人は若い者は皆無であり、昔から務めているであろう者しか居ない。


 サツカア家の今の状況をまざまざと見せつけてくる。


 執事長の老紳士に案内され、俺は屋敷内の応接室に向かった。


「よく来てくれた! しかし油断が過ぎるんじゃ無いかね? 護衛はおろかお供も付けんとは……君の右腕と言われる、たしかジャイン君だったかな? 彼はどうしたのかね」


「突然の訪問をお許しください。私は王都の人間を信じてます、故に護衛など不要です。それで……例のお話しの件で伺いました」


「ああ、魔法で伺った。しかし……まさか本当に受けてくれるとわ、な」


 現当主の公爵は俺の父と比べると血色は悪くやつれ、着ている服もどこか貴族には物足りない恰好だ。しかしそんな姿であったとしても、どこか威厳がある。


 俺の軽率な行動に注意しつつも、嬉しそうに朗らかに笑っている。

 冷静に考えると誘拐未遂事件の影響で落ち目を受ける彼らには嫌味なのでは? と言いながら心配したのだが杞憂だったか。


「予想外なのですか? 噂には聞きますが、娘さんは学園でもトップクラスの成績を修める優秀な方であると」


「いや娘のことでは無い、親ばかではあるがコンサは優秀で真面目でどこに出しても恥ずかしくない子だ。――我らの家の悪評は聞いていよう。正直言って君にメリットがあるとは思えんのだよ」


 胸が痛い。

 俺は主人公やメインキャラのイベントやアイテムを横取りしないように決めていたのだが、結果的に彼らに迷惑を掛けてしまっている。


 魔王? あれはね、イベントを奪う方が彼女たちの為なのだよ。


「個人感情は無視して、双方のメリットは在ります」


「それは? と言うか個人感情は無視するってことは本人的には乗り気ではないのかね」

 その疑問は無視だ。


「まず私側としては、強い後ろ盾が得られます。言い方は悪いですが落ち目と言えど公爵家です、その恩恵は大きいでしょう」


「君に後ろ盾が必要なのかね? 最早国一番の商会に育て上げ、市民たちから絶大な信頼を勝ち得ているではないか」


「その早さが仇となって敵を多く作ってしまいました。スクリュー家の方からは力を借りる訳にはいきませんからね」

 俺たちが正妻に不当な扱いを受けているのは貴族の中では常識となっている。


「して我が家のメリットは? あと先ほどの続きだが君は娘のこ――」


「今に至るまで続く悪評を払拭できるでしょう。もちろん直ぐにとはいかないでしょうが、私たちの商会でコンサさんに働いてもらえば市民たちの見る目も変わるはずです」


「コンサに働かせるのかね」


「受付や売り子などをやっていただけたらと思ってます」

 受け付けは美女だと効果が高い。


 因みに今の受付人気ナンバーワンはルルと言う獣人の女の子だ。


「人気が出たらストーカーなどが――」


「どうでしょうか一旦この話を受け、お互いに盤石な体制が出来たら改めて結婚するか解消するかを決めるというのは?」


「今はその方がお互い良さそうだな」


 俺は他の商会や貴族に打ち勝てるだけの、彼らは悪評の払拭を。


「――お父さま!!!!」


 応接室の扉が勢いよく開き、金髪紫目の美少女が入ってきた。

 誰だ? こんな体の引き締まって出るとこ出た美少女ってゲーム内に居たかな?

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