むず痒い家デート

春丸

家デート


 オレは今、デートをしている。それも家で。


 カップルの家デートと言ったら何か。最初の頃は映画を見たり、スマホをイジったりしているのだろう。

  

 しかし、オレと彼女は今日でちょうど半年。半年記念日である。


「半年だね。付き合う前思い出すと笑っちゃうよ」


「めでたいな。それは触れない約束だろ」

 

 こんな他愛のない話をベッドの上でしている。

 

 時々、バレないように上唇をじっと見つめたり、甘えたいからちょっと抱きついて良いかと、試行錯誤したり——

 

 半年になってまだエ○チをしていないオレは勇気がない。


 彼女はエ○チをする気がないんじゃないかと思う。何も無防備な格好で匂わせることがないし、誘ってくる気配もない。

  

 こっちはもう半年でそろそろヤってもいいんじゃないかと思っているのに。


 と、そこでオレが唇を見ている時に、彼女が振り返った。

 

 オレはすぐに視線を逸らし、スマホに意識を向ける。


 すると、彼女がオレの胸の中にすっぽりと入ってきた。甘える時に多い行動だ。

 

 そしていつもなら頭を撫でて終わりなのだが、勇気を振り絞る。

 

 これこそ、無防備な状態じゃないか。


 オレは胸に埋まっている彼女を上に引っ張って──唇を重ねた。

 

 ──拒絶はしてこない。


「ん……」


 オレは服の上から胸を触る。彼女は可愛らしい声を漏らして──これ以上やってもいいよと言っているような感じがした。


 ここからはもう流れだ。

 

 想像した通り、服を脱ぎ、服を脱がす。彼女は恥ずかしそうにしたが、やがて力が抜け、下着一枚になった。


「…………」

 

 彼女は言葉を発さず、行為を待つ。

 

 オレは上に覆い被さって──進んでいき——卒業した。


 信じられない。あれほど家にいる時は、キスをしていいのか、ヤっても引かれないかなど考えていたのに。

 

 そして、一線を越えれば、オレたちにもうむず痒いなんて無かった。 

 

 家デートの時は自然にキスをし、場合によるが、大人な行為をしたりと、付き合いたてのカップルではなくなった。

 

 本当のカップルとは、行為をしてから見えてくるものだろう。

 

 この初体験に、後悔はない──


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

むず痒い家デート 春丸 @harumarusan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ