私の妹がアホかわいいということをただひたすら語りたい

クロロニー

私の妹がアホかわいいということをただひたすら語りたい

 私の妹のミアはアホかわいくて尊い。まず、魔力が全くないのがキュート。でも魔力があるフリをしている。私の魔力をわけてあげたい。というか実際に何度か私が手を貸して乗り切ったことがある。ミアはそれに気づいていないのだろうけれど(だからきっと魔力があるフリをしている)。なんかでも周りはもう薄々気が付いていて、チラホラと不審がるような噂が聞こえてくる。なんか変じゃない?って。まあ、魔力があったとしても変な子なのは間違いない。そこがかわいい。例えば古代哲学の『科学』を妄信しているところとか、とても危うくて、でもかわいい。「世界には普遍的な安定した振る舞いがあって、私たちはそれに則っているにすぎないの」とか、真顔で言い出すのがちょっとおバカだなぁって思う。親は真剣に心配して、思念科病院に連れて行こうかどうかを検討しているくらいだ。もちろんそうなってしまうと私が困るので、「思春期によくある空想だよー」って言って誤魔化しているんだけど。今どきこんなことを言い出すのは頭の狂った人だけだから、心配になるのもよくわかる。まあ私は妹に魔力がないということをわかっているので、そういう陰謀論めいた考えにハマってしまうのもわからなくもないのかなーって思う。そんで、『科学的な思想』に毒されちゃっているから、時々変な行動をする。例えば、誰かが魔力で林檎を樹から落としているのを見て、「万有引力だー!」って叫んだり、振り子の振れ幅を変えて周期を口で数えて「振り子の周期は振れ幅によって変わらないのだ(魔力で正確に時間を測ると結構ズレてる)」って自信満々に言ったり、「光の速さは最速で不変だから」って言うから魔力でテレポーテーションしてみせたら「禁術だ! そんなこと人間に許されない!」って言い出すし、でも魔法よりも『シュレディンガーの猫』とかいう猫の主観性を無視したふざけた思考実験は信じてる。その都度「YOU、認めて楽になっちゃいなYO」って煽ったら涙目になるのがとてもかわいい。もっといじめちゃいたくなる。テレパシーで「かわいい!」って言葉を送ったら台所にあるマルチホイルを頭にグルグル巻き始めて大昔のエジプト人みたいなターバン?を巻き始めたりしてお母さんに怒られたこともあったっけ。「思考盗聴するな!」って怒ってた。まあ思考盗聴は魔法の範疇外なんだけどね(学校で習わなかったっけ)。ある日なんかとても真剣な顔で、「お姉ちゃん、もし私が実は遠い遠い大昔の人間だったって言ったらどうする?」って言い出したのも面白かったなぁ。双子の私は生まれた頃からずっとミアと一緒にいるのに、そんなわけないじゃん。記憶もちゃんとあるよ。そんな風に言ったっけ。「でも五分前世界仮説というのがあって、その記憶も全部私に合わせて五分前に出来たものかもしれないじゃない」って言い出してやっぱりミアは想像力が豊かだなーって感心したなぁ。ただ、それだとミアの持たない魔力が世界に蔓延っていることに説明がつかないから、勿論信じれるようなものではなかったんだけど。まあでも大昔の人間がみんなミアみたいにかわいい人間ばっかりなんだったら、むしろその時代に生まれてみたかったなぁってちょっと思わなくもないかな。

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