微睡み
乙藤琥珀
朝(仮)
今日も結城(ゆうき)は、カーテンからさす眩しい光とともに夢の中で見た。
なんともリアルな夢から目が覚めた。
そして無造作にスマホを手探りで探す。
そこで、また朝が来た…と。
そして手に取ったスマホを放り投げる。
背伸びをして、一階へ降り。
母の趣味で選んだマグカップに、お気に入りのコーヒーを注ぐ。
まだ母は起きていない。
今日も時間だけは沢山ある。
「今日はどんな1日になるのか」
結城は時間について考え始めた。
小さな頃から、時間に囚われるのが嫌いだからだ。
そして一つため息をつく。
部屋へ戻り、机に置かれた束になった新聞を眺めた。
「今日は何曜日だったっけ」
気づくと部屋に時計がない。
一階から響いた、ドアを閉める音でハッとする。
今日はゆっくり過ごそう。
学生の時に通っていた喫茶店を思い出す。
…喫茶店の店主は僕が学校をサボっては…
パンにバターをのせてブラックコーヒーを一杯『コーヒー代はいらないよ』とご馳走してくれた。
***
「結城、ゴミ出しよ!」
母の声が部屋まで聞こえてきて。
いつもする様に僕は階段を降りた。
「今日、火曜日か」
僕は白い壁にかけられているカレンダーを見て…さらに上の方の時計を確認した。
バタバタとベランダの方へ急ぎ。
ゴミ出しの準備をする。
火曜日は火曜日でも何週目の火曜日なのか…分からない。
母はニコニコしながら僕に言った。
「今日も散歩行くの?」
「朝ご飯は作っておくから!」
小さくなった母の背中を眺める。
時間…自由でありながらも限られている。
***
結城は茶色の玄関のドアノブを回し開ける
カラスが外で大騒ぎしていた。
それも大量の群れで……だ。
何日か前の日には住宅街で出されたゴミ袋の中から一羽のカラスがパンの食べ残しを食べようとしていた。
***
その身を包む羽毛は、朝日を浴びてきらめく漆黒。
真っ黒なまなざしは、結城の興味を引きつける闇の色…。
結城は、カラスの様子をじっと眺めた。
カラスは結城がいることに気づいていないといったふうだ。その瞳はキョトンとしていて、視線を合わせないように精一杯つとめていた。
続く
微睡み 乙藤琥珀 @Otofuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。微睡みの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます