たのしいおるすばん
雑務
第1話
「ゆうせいくん、おはよう」
「おはよう、おひさまがきもちよくってたくさんおひるねしちゃった」
ぼくのおともだちのポン。いっしょにおるすばん。いぬのぬいぐるみだけど、しゃべれるんだ。ほんとうだよ。
「ねすぎたのかな。なんだかあたまがいたいな」
「じゃあ、すぐになおるまほうかけといてあげるね」
ポンはいつもやさしいんだ。
きょうもクルマあそびにつきあってくれたんだ。つみあげたつみきにクルマをぶつけてこわすんだ。おおきなおとがしてクルマがひっくりかえるけど、すっごくおもしろいんだよ。
「ゆうせいくんはほんとうにクルマあそびがだいすきなんだね」
「うん、もっとあーそぼ!」
「おかたづけもちゃんとね」
「あ、このうた、ぼくのすきなうただ。そとからきこえるけど、どこからながれてるんだろう」
「ゆうせいくんがいつもきいてたうただね」
ピンポーン。
「だれかきた。でもおかあさんには、だれかきてもでちゃだめっていわれてるからしずかにね!」
ピンポーン。ピンポーン。
「ピンポン、ずっとなってるね。ちょっとこわいな。ポン、おかあさんまだかえってこないのかな・・・・・・」
「・・・・・・ごめんね、がんばって」
「なんでポンがあやまるの?」
「・・・・・・だよ」
「ねえ、こえがちっちゃいよ・・・・・・ポンどうしたの」
「言いづらいですが・・・・・・。ゆうせいくんはもう植物状態からなおりません」
「あたまの手術は、しっぱいだったんですか」
「ざんねんながら。事故の衝撃でもうゆうせいくんの脳は元に戻りません。ですが今ならこちらの言葉はなんとか、ゆうせいくんにきこえているようです。脳波からゆうせいくんの気持ちも、すこしはよみとれる。しかしそれもそう長くはつづかないでしょう。今のうちにたくさんはなしかけてあげてください」
「ゆうせいのすきだった音楽、たくさん流してあげるね」
「ゆうせい、パパだよ、聞こえるか??」
「ねえ、ポン・・・・・・!」
「・・・・・・えるか」
「ポンやだ! もっとおしゃべりしようよ!」
「ゆうせい! ゆうせい! ごめんね」
「脳波が弱くなってきています。もう長くはないかもしれない」
「あたまいたい! クラクラする! ポン・・・・・! ママ! パパ!」
「・・・・・・んね、ごめんね」
「ゆうせい、ゆうせいが大好きだった犬のポンちゃんだよ。隣に置いといてあげるから、元気出して!」
「さみしいよ! こわいよ! ママ! パパ!」
「・・・・・・」
「ポン! いたい! うでひっぱらないで! ママがだれかきてもでちゃだめだっていってたよ! げんかんいきたくないよ! やだ! やだ!」
ピンポーン・・・・・・。ピンポーン・・・・・・。
たのしいおるすばん 雑務 @PEG
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