日陰の君。

村崎 紫

第1話

…ーー次のニュースです。最初の事件から一週間が経ち、新たに5人目の行方不明者がいたことがわかりました。被害者は都内に住む女子高校生で、夜8時ごろ、『コンビニへ行く』と保護者に伝え出かけたのち帰宅せず行方がわからなくなったとのことです。一連の失踪騒動には夜に出かけてから行方が分からなくなるといった共通点から、暴行後遺棄されている可能性が高いとのことです。

〜〜〜〜〜〜

私には幼なじみという存在が居る。いや、正確には「居た」。連日起こっている失踪事件において一人目として報道され、現在生きているか死んでいるのかすら確認ができない状況がもう一週間近く続いている。失踪した幼なじみとその他の人たち含めなぜか私たち学生などの俗に言う若い世代の女性ばかりだった。

「よし。」

歯を磨き、顔を洗って、身支度を整える。氏名紡樹花奏と書かれた学生証を制服の裏ポケットにしまい、私は家を出た。

通学路を無事通りきり私の所属するいつもの教室を覗くも、同じ教室で私の幼なじみである「宇白日奈」の姿は無い。身長が160センチの私より少し低めで天然茶髪、横より後ろに伸びやすいショートヘアに活発で明朗快活な性格。犬耳をつければそれっぽく見えるようなまさに犬のような子という印象である。

「おーっす、オハヨーかなかな〜。」

「愛しの幼なじみちゃん、こちらも何も音沙汰無しだよー。」

と、クラス面子が話しかけてくる。かなかな呼びしてくるのは仲良くしてるクラスメイトの村崎由比、黒髪ツインテールで日奈より身長が低く成績が振るわないことが多いのでバカ村崎と安直な渾名で呼んでたりするが。横にいるもう一人は知らないから村崎の友人なのだろう。

「あぁおはよう。そしていつもの変な呼び方ありがとう一発殴らせろ。」

そう言いながらチョップの構えで頭を小突こうとする、が。

「そういえば仲良くしてる他のクラスメンツから噂話を聞いたんだよねぇ、例の行方不明の。」

という言葉に思わず手が止まってしまう。

「噂話だと?どういう話だ。」

まあまあ慌てなさんなと言わんばかりに平手を私の前で前後させる。

「フィクションでよくあるヤツよ、失踪した人たちが夜中に空虚な目して出歩いてたり人離れした身体能力で夜の街を自在に行き来してる、とかの。」

それはまた小説や最近よく話題になるウェブ漫画というものでみる御伽話まんまでは無いか。

「馬鹿馬鹿しいな。あまりに安直というか素直すぎる。」

流石に呆れが勝ったのか頭を抱えるような気分になり、手のひらで目を隠して天を仰ぐ。

「まあ、あくまで噂だからね。元から信じると思って話したわけでも無いけどサ。」

それじゃちょいとトイレ行ってくると教室を抜ける由比を目で追いながら中身の乏しいよくある噂話を頭の中で反芻していた。

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