【週刊 おっぱい】毎号付いてくるパーツで理想のおっぱいを組み立てよう。創刊号は299円
シロクマKun
第1話
『週刊 おっぱい』
〜毎号付いてくるパーツで理想のおっぱいを組み立てよう。創刊号はバインダーが付いて299円〜
は?
いや、まさか。嘘だろ? 我が目を疑った。
本屋でソレを見つけた時の私の正直な感想である。
艶めかしい女性のバストアップの絵が表紙の、分厚いパッケージを恐る恐る手に取ってみるとずっしりと重量感がある。
どうやら冗談ではないらしい。
―僥倖!
―圧倒的僥倖!!(ナレーション 立木○彦)
素晴らしい。なんてこった、オーマイガッ。
ディ○ゴス○ィーニ、恐るべし。どれだけマニアックに攻めてるのだろうか?
……と思ったら、どうやら違うメーカーのようだ。
『デラゴッツィディスニー』
…………何語だよ? パチモン感、半端ないな。
でも、創刊号299円? やっす!
これは迷わず買いでしょう。
いや、安いのは創刊号だけで、2号からはいきなり4、5倍くらいになるんだよね? 知ってるよ? 勿論、知ってますとも。
されど、おっぱいである。
しかも、理想のおっぱいときたもんだ。
これは失敗しようとも挑むべきなのではないだろうか?
たとえおっぱいで失敗しようとも、それは失敗ではなく経験なのだ。
人は失敗という経験値を重ねて成長していくものなのである。
さあ行こう、ピリオドの向こうへ。
―そして私は『週刊おっぱい』の定期購読を申し込んだのだった。
◇
『週刊おっぱい』創刊号299円を購入した私は意気揚々と自宅アパートへと戻ってきた。現在私は一人暮らしであるから誰に気兼ねすることなく、おっぱい製作に没頭できる事だろう。ありがたい話である。
早速、開封してみる。
冊子、バインダー、パーツのセットか。
冊子にはおっぱいの歴史、流行ったおっぱい等のデータが綺麗な写真とともに載せられていて、実に興味深い。これは資料としての価値も高いだろう。
バインダーに綴じていくのも何気に楽しい。
さて、ここからが本命だ。
黒い袋で綴じられたパーツは、開けてみるまで中身がわからないようになっている。なんとも心憎い演出である。ドキドキが止まらない。
まず、手を入れて触ってみた。
ん? 予想に反してゴツゴツとした手応えがある。
おっぱいの何処に、こんなゴツゴツしたパーツがあったっけ?
一気に取り出してみた。
……………!?
……骨だった。
……どうやら、首から背中にかけての骨らしい。
完成図を見ると、首から上は無く、腕も肩から下は無く、ホントにおっぱいだけのリアルな胸像なんだけど、まさか骨から作るとはね。
正直ちょっと萎えたけど、まあそれだけ本格的って事なのかもしれない。
定期購読申し込んじゃったし。
次に期待するか。
次の週は肋骨が届いた。
また骨かよ!? しかも2000円になってるしっ。
ロッコツ、じゃなくて露骨だな。
完成まで21回だからざっと4万ちょいくらい?
うーん、心配になってきた。
次は肺だった。
内臓かー。
次も肺だった。
はいはい、そーですか。いや、前が肺一個だったからそーなるだろうな、とは思ったけどね。
以下、心臓、食道、動脈、静脈……と内臓ゾーンが続き、思わず挫けそうになった。
私は一体、何を作っているのだろうか?
理科室の解体模型じゃあるまいし。
おっぱいだけありゃあいいのに内臓から作るとか、どんだけマニアックなんだよ?
しかも、心臓とかホントに動くんですよ? ウネウネと。
電動コ○シかっ!
多分、おんなじ仕組みなんだろうね。動きがほぼ同じだもの。
まあ、音が心音に聞こえない事もないからいいけど。
18回目でようやくボディっぽいのが届いた。
いわゆる『皮膚』って事ですかね?
まあ、皮っていうか、側だね。
特殊なシリコンでシットリした指ざわりが心地良い。
この中に今までの解体模型くんを突っ込むわけか。
ふむふむ。
背中に切れ込みがあって、そこからゆっくり納めていく。
ちょいと苦労したが、予想以上に皮膚が伸びたんでなんとか入れる事ができた。中でグラグラするんじゃないかと思ったけど、皮膚の内側アチコチに袋状の物が付いてて、その中に注射器で特殊な液を注入する事によって、内臓がガッチリ固定されるらしい。
そして肝心のおっぱいも、特殊シリコンを注入しておっぱいの弾力を作るようだ。今はまだ萎びているのが物悲しい。
◇
20回目、届いたシリコンを注射器で注入した。
おっぱいを触ってみる。
………Eですか。
イイね。
高評価ボタンがあったら連打したいものだ。
揉むとほんのり赤く染まるのは後から注入した赤いシリコンのせいか?
そっと触るとしっとりと指に絡んでくるような感覚。
強過ぎず弱過ぎず、程良い弾力が心地よく、いつまでも触っていたくなる。
うぉぉぉぉっ! めっちゃおっぱいやん!!!!!
吸っていいですか? お客さんっ!(←誰だよ?)
いや、だが待て。
まだこれは完成ではない。
最後に残ったパーツ、『チクビ』が付いてこそ完成するのである。
因みに、今の状態でもポッチは付いているのだけど、色がまだ入っていないのだ。普通に肌色なのである。
このチクビの部分に注射器でピンクのシリコンを注入するのが最後の大仕事なのだ。なお、乳輪の色と大きさも入れるシリコンで自分好みに調節できるらしい。これは非常に楽しみだ。
◇
いよいよ最後の週を迎える前、突如として大問題が発生した。
『週刊おっぱい』最終巻が届くその日に、田舎から妹が受験の下見にやって来るのである。
しかも恐ろしい事に、2、3日泊めてくれと言う。
これはまずい。
この狭いアパートの何処に『おっぱい様』を隠せと言うのか?
ベットの下? 押入れの布団の間?
いや、すぐ見つかりそうだし、見つかった時に絶叫されそうだ。
変態と叫ばれるのならまだしも、人殺しと叫ばれたら終わってしまう。
それほど『おっぱい様』はリアルなのだ。
仕方ない。
ひとまずトランクに詰めて駅前のロッカーにでも預けるか。
……それこそ猟奇的殺人犯みたいだけど。
◇
そしてついに『週刊おっぱい』最終巻が届いた。
パーツはピンクのシリコンと茶色いシリコン、それに注射器2本のみ。
これを好みに調整しながら注入すると、おっぱい様が完全体と成られるのである。ありがたや、ありがたや。
い、いかん。こんな物を見てしまうとつい、仕上げたくなってしまう。
この後、妹がやって来るというのに。
まあ、来るのは夜になるって言ってたけど。
……仕上げて預けに行く時間はあるな。
うーん、誘惑に勝てない。ちゃっちゃとやっちゃうか。
注射器を手に持ちピンクのシリコンをチクビに注入する。
おおっ、凄くおっぱいらしくなったけど、ちょっと赤すぎるな。
今度は茶色いシリコンを慎重に注入し、チクビと乳輪を渋く染めていく。
どうだ?
…………
うっひょーっ!
おっぱいだ。いや、神だ。
そこにあるのは紛れもなく神おっぱいだった。
なんという神々しさ。
尊い。
ただひたすらに尊い。
な、長かった。
途中で挫折しそうにもなった。
だが私はやりとげたのだ。
おっぱいに対する執念の積み重ねの結果が、今私が辿り着いたこの場所なのだ。
エ○.プサ○.コン○ルゥ。いや、特に意味はない。
よし、感謝の儀式だ。
私は二回パンパンと柏手を打ったあと、深くお辞儀をした。
「では、失礼して……」
ギュッと前から抱きしめてみる。
や、柔らかい。
谷間に顔を埋めると、仄かな暖かみと共に心音が聞こえる。
こっ、ここは天国ですか?
胸の谷間ナウすか?
ははぁ〜、ありがたや〜。
では続いて喜びの舞をお納め下さいませ。
ほほほ〜い、ほほほ〜い、ほほほ〜い、ほ…………
神おっぱいの前で喜びの舞を踊り、くるりとターンした私はそのまま凍りついた。
いつの間にやら入ってきてた妹と目が合ってしまったのである。
エエッ!? 夜になるんじゃなかったの!?
我が妹の冷え切った目が、私の剥き出しの心に突き刺さる。
頭の中で火○サスペ○ス劇場のテーマが流れる中、私は恐る恐る妹に尋ねる。
「えーっと……どっから見てた?」
「おっぱい拝んでるあたりから」
ほぼ最初からやんっ!
胸の谷で
ヤバいヤバい、
「いや、あの、誤解だからっ」
と、言い訳しようとする私を妹が手で制した。
そして私を憐れむように見ながら言う。
「まあ、気持ちはわからない事もないから。でもねぇ……
そんなモノ拝んでも貧乳は治らないと思うよ? お姉ちゃん」
ほっといてっ!
完
【週刊 おっぱい】毎号付いてくるパーツで理想のおっぱいを組み立てよう。創刊号は299円 シロクマKun @minakuma
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