第36話 裁縫師さんが仲間になりました
翌朝、皆が朝食を食べていると思われる時間に食堂へ向かった。
もちろん、ミレーユ様も一緒だ。
「え?! コレクター君??」
「生きてたのか?」
「おいおい。勝手に殺さないでくれよ。皆さん、お久しぶりです。今日は皆さんに話があってきました。初めにご紹介します。隣の国のパシフィックフォレストの第2王女ミレーユ・ローマン様です。」
「初めまして、ミレーユ・ローマンです。よろしくお願いします。」
「彼女は、俺たち召喚者を保護するために来てくれたんだ。」
「本当に? 助けてくれるの? 私、戦争に行きたくないの! 人を殺すなんてできないわ。」
「本当ですよ。我が国で衣食住の保証をいたします。第2の人生を楽しんでくださいね。」
「それで具体的な話に移るけど、俺たちはパシフィックフォレストに王女様を護衛しながら向かう。その後、時空間魔法でこちらと繋ぎ、みんなには移動してもらう。」
「時空間魔法? ラノベで出てきたテレポートやゲートみたいなもの? コレクター君はそんな凄い魔法も使えるようになっているの?」
「でも、長距離を移動した経験がないから成功するかわからないけど、多分大丈夫だと思う。」
「わかった。俺たちに何かしてほしいことはあるか?」
「そうだ。みんなが持っているタブレットがまもなくエネルギー切れで使えなくなっちゃうらしい。それでマイルームもアイテムボックスも使えなくなるんだ。」
「ええ!! それは困る。日本の思い出の品もあるんだ。」
「安心して、修理できるから。俺を信じてタブレットを出してもらえるかな?」
「いいわ。みんな心配だろうから最初に私ので試してみて。私は裁縫師の相原未来よ。」
「君が裁縫師さんなんだね。よろしくね。じゃあ、タブレットPCを出して俺の前に立ってくれるかな。」
裁縫師さんはスレンダーで長身の綺麗系の女の子だった。
愛莉と春菜が小柄だったので新鮮だ。
相手のタブレットは目視できない。
なので魔力感知で位置を特定し、設計図となっている魔法陣を修正していく。
春菜のタブレットを修正しているので大丈夫だろう。
ちょちょいと修正し、この世界の魔力で動くようにした。
「これでOK。問題無いか確かめてみて。」
「うん、問題無いわ。ありがとう。」
その後、次々とクラスメイトのPCを修理した。
「裁縫師さん。後でお時間頂けますか?」
「未来でいいわよ。それにこれから仲間になるのだから敬語はなしでお願いしたいわ。」
「そうだね。よろしくね、未来。」
「うん。じゃあ、この後は特に用が無いのでお話しましょう。」
クラスメイトたちは食堂に残し、朝食の続きを食べてもらった。
未来は我が家のリビングへ招待する。
当然のようにうちのリビングには王女とカレンさんが寛いでいたのだが。
「春菜ちゃん、久しぶりね。元気そうで良かったわ。」
「うん。ありがとう。紹介するね。こちらは賢者の愛莉ちゃんよ。仲良くしてね。」
「あなたがコレクター君の相棒の賢者さんだったのね。私は裁縫師の未来です。仲良くしてね。」
「うん。よろしく。」
「挨拶が済んだみたいだね。それで、未来。これからパーティに参加してもらうのだが、君のステータスを見せてもらっても良いかな?」
「もちろん、良いわよ。ステータスオープン。」
*ステータス
名前: 相原 未来
称号: 転移者
職業: 裁縫師
性別: 女
年齢: 16歳
レベル: 10
スキル
弓術、裁縫、アイテムボックス、デザイン、採寸鑑定、紡ぐ、布織り、裁断、
染色、染み抜き、洗濯、アイロン、火魔法、水魔法、風魔法
ユニークスキル
着心地向上、良品化、サイズ調整、通気性調整、防御力付与
弓も使えるのか。
前衛と後衛の中間に配置してもらって、遊撃と偵察、探索、戦況把握を担当してもらおう。
あと、王女の護衛が終わったらカレンさんを引き入れて前衛を任せようとも考えている。
これでパーティが安定するだろう。
「ありがとう。必要と思われるスキルを付与するね。俺たちとレベル差があるから当面はレベ上げ頑張ってもらうから。それから、未来部屋はそこで、隣を作業場にしておいたから思う存分裁縫を楽しんでくれ。みんなの服を作ってもらえると有難い。特に王女様に約束しちゃっているからお願いね。」
「付与? コレクター君はなんでもありね。ありがとう、よろしく頼むわ。私のお部屋まで作ってくれたのね。ここに住んでも良いってことよね?」
「もちろん。地球の材料や道具もそろえてあるから足りないものがあったら言ってくれ。それと、うちのお風呂は大きいし温泉だから後で入っておいで。」
「え! 今から入っても良いかな?」
「どうぞ。風呂をあがったらみんなと親睦を深めていてくれ。」
その後、女子同士で親睦を深めてもらった。
ギクシャクするのは勘弁してほしいからね。
それからお昼を食べながら今後のことやお互いの情報交換を行った。
「そういや加藤先生の姿が無かったけど、どうなったのかわかるかい?」
「加藤先生なら王子に助けられて第3夫人候補になったわよ。コレクター君たちが居なくなってから大変だったのよ。先生には私たちみたいにチートスキルが無かったの。それで城から追い出せってなって、奴隷商に売られるところだったの。」
「それは大変だ。」
「そこを王子様が引き取ることになったの。一目ぼれだったらしいわ。ところがね。先生には特別なスキルは無かったけど、知識チートだったの。実家は農家で子供のころから手伝いをしていたし、理科の先生だったでしょ。こちらには無い農業と科学の知識があったのよ。しかも、戦国武将オタクで武将から戦略を学んでいるの。それを知った王子は妾だった先生を側室候補にしたのよ。」
「なるほど。先生にとっては玉の輿になるのかな? 先生が幸せなら良いか。ところで、コレクター君じゃなくて誠司と呼んでほしい。」
「わかったわ、誠司君。ちなみに他のクラスメイトたちはやっとゴブリンを倒せるようになったくらいのレベルよ。あなたたちはどれだけ強くなったのかしら?」
「俺はLv.68だよ。」 >誠司
「私はLv.65ね。」 >愛莉
「私はLv.62だわ。」 >春菜
「みんな凄いわね。まだLv.10の私は足を引っ張ってしまうわ。しかも、非戦闘職だし。」 >未来
「私も料理しかできなかったけど、誠司君のおかげで戦えるようになったから安心して。」 >春菜
「それにダンジョンで一気にレベ上げするから大丈夫だよ。」 >誠司
「誠司殿たちはSランク冒険者だったのか?」 >カレン
カレンさんがソファーから立ち上がって聞いてきた。
「いや、俺はDランクだよ。今回、ミレーユ様の護衛を行えばCランクに成れるんだ。ダンジョンを攻略したからレベルだけが一気に上がっちゃっただけだよ。」
「私は元Cランクだが、なったばかりの時に騙されて奴隷に落ちたからな。私はCランクになるのに3年かかったのだが。それに普通のDランクならレベルは20弱ぐらいなのだぞ。ダンジョンで相当な数の魔物を討伐したんだろうな。」
「そうだね。ところで冒険者に復帰するならカレンさんもうちのパーティ入らないか?」
「それは非常に有難い。信用できる仲間を見つけるのは大変だからな。会ってまだ2日だが、誠司殿たちはとても良い人だとわかる。私で良かったら仲間に入れてくれ。」
「そんな顔をしてもダメですからね! 王女様なのですから私たちの危険な旅には連れていけませんから。」
「だって、仲間外れは寂しいじゃない? でも私だってわかっているわよ。私には王女としての立場があるって。」
「わかっているなら良いのですが。」
「でも、あなたを私の婚約者第1候補に推薦しておくわ。」
「いやいや。私は一般人ですから。それに俺には愛莉がいますので。」
「えへへ。」 >愛莉
「私もでしょ!!」 >春菜
「え? 3人はそういう関係だったの!?」 >未来
「私もハーレム要員候補なのか?」 >カレン
なんかカオスな状況になった。
それから女子だけの会議が始まった。
そこに俺の意思は尊重されるのだろうか。
俺は仲間に入れてもらえそうにないので自室で不貞寝することにした。
翌朝の朝食時。
「未来とカレンさんは冒険者登録をしてきてくれ。その後、未来と春菜は地元の素材を使った料理や衣服を作ってみて。愛莉とカレンさんはミレーユ様の護衛かな。」
「「わかったわ。」」
「俺はパシフィックフォレストに向かって走ってくるよ。」
「どういうことでしょうか?」 >ミレーユ
「俺さえ移動してこの部屋につなげば全員が移動できるから。それに俺が身体強化MAXで走った方が馬車より断然早いし。じゃあ、行ってくるね。」
「本当にこれでいいのでしょうか? 誠司様に頼りきりになってしまいますわ。」
「誠司が良いっていってるんだから大丈夫よ。ご飯を食べたら街に出かけましょ。」
俺は街道をひたすら走っていた。
街道を旅している旅人や馬車は、隠密を発動しているので追い抜かれても風が通り抜けた程度にしか思わない。
馬車で移動より王女の安全も確保できるし、これが最善だろう。
そして、馬車で1週間かかる距離を3日で走破した。
国境に近い町へ辿り着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます