第10話 愛莉とパーティを組む

森に到着した。

今日は愛莉が一緒なので昨日のような失態は許されない。

愛莉のことは絶対に守る。

そのためにも俺が戦闘不能になるわけにはいかない。

こっそり職業を剣聖に変更し、本気モードで狩りをすることにした。


『エリアマップ発動。』


周囲に魔物が点在しているのがわかる。

残念ながら種類までは分からない。

エリアマップを進化させるとマップEXとなり、鑑定を取り込んだことで魔物の種類もわかるようになった。

味方は白い点、敵は赤い点で表示された。

そばにいる副団長は白なので今のところは味方のようだ。


「正面にゴブリンが単独でいる。手始めにコイツから行こうか。」


「了解。私がやっても良いかな? 魔物を狩る感覚を試したいの。」


「賢者様、森の中では火魔法は火事になりますので厳禁でお願いしますね。」


「了解です。氷魔法で倒します。誠司はもし一発で倒しきれなかったときにトドメを刺してね。」


「わかった。気を付けるんだよ。」


1分ほど歩くと正面に錆びた剣を持ったゴブリンが現れた。


*鑑定

  種族: ゴブリン

  ランク: F-

  スキル: 剣術、加速、風属性耐性

  弱点: 首

  アイテム: 魔石、討伐証明部位(右耳)、錆びた剣


おっと! ゴブリンだと馬鹿にしていたが、耐性スキルを持っているじゃないか!

有難くコピーさせてもらった。

そして、隣に居た愛莉もゴブリンを確認した。


「うわっ。。。 予想以上のキモさね。ゲームの中のゴブリンはちゃんと腰ミノを巻いてたわよ。モロだしって。。。」


俺は予備知識が無かったから全裸でも違和感なかったが、愛莉にはショックだったらしい。


「燃やしてしまいたい気分だけど。火は厳禁と。アイスアロー!」


3本の氷の矢が頭上に現れ、ゴブリン目掛けて飛んでいった。

眉間、脳天、腹に氷の矢が突き刺さり、直立していたゴブリンはそのままぶっ倒れた。


「あれ? 魔法一発で狩れちゃったみたいね。」


愛莉はゴブリンが死んでもケロッとしていた。

精神耐性をもってはいるが人型の魔物を殺したショックは全く無いそうだ。

ゲームで何百匹も狩ってるから何も感じないわと言っていた。

俺も今日はゴブリンの死体を見ても何も感じてないので昨日のようなことはもう起こらないだろう。

魔石と討伐部位の耳を回収する。

愛莉はゴブリンの胸にある魔石を抜き取るときも躊躇しなかった。

水魔法で水を出し、手に着いたゴブリンの血を洗い流していた。

女の子は強いな。


「よし。愛莉、ドンドン行くよ。ジョイさん、スピードアップするので着いてきてくださいね。」


魔物が目視できたら鑑定し、持ってないスキルを持っていた時はコピー。

無い場合はそのまま討伐。

愛莉と手分けしながら連続で狩り続けた。

イチイチ魔石や証明部位の耳を回収していると時間がかかるので、死体をそのままインベントリに収納し後で魔石を取り出すことにした。


「ちょっと待った! 君たち、どれだけ異常な狩り方を行っているか分かっているかい? ほぼ周囲にいる魔物を狩りつくしているぞ。少しは休憩を取りなさい。」


「了解です。愛莉、お昼にしようよ。でも、その前に解体しちゃおうか。」


「そうね。そこの河原で解体しちゃいましょ。」


3人掛かりでゴブリンを処理しているがなかなか終わらない。


「ところで誠司。もうかなりの数を処理したけどまだ残っているの?」


「あと100はあるね。調子に乗って狩りすぎちゃったかもね。」


「笑いごとじゃないぞ。明日からE、Fランクの冒険者が魔物を見つけられなくて困るほど狩りつくしてしまったぞ。」


「それは申し訳ないことしたかな。でも、やっちゃったものは仕方ないよね。それより血の匂いでウルフが集まってきちゃったみたいだ。俺が殲滅しちゃうよ。愛莉は土魔法で穴を掘って処理の済んだゴブリンを埋葬してくれ。アンデットになったら面倒なのでちゃんと燃やしてから埋めてね。」


周囲を探知してみるとウルフに取り囲まれていることがわかったのだ。

彼らには俺の魔法の練習に付き合ってもらうことにした。

職業を賢者に変更した。


*鑑定

  種族: ウルフ(狼)

  ランク: F

  スキル: かみつく、引っ搔く、遠吠え

  弱点: 眉間、腹

  アイテム: 魔石、討伐証明部位(犬歯)、毛皮、肉、牙、爪


河原で燃えるものが無いので火魔法も使えるのだが、毛皮が焦げてしまうと価値が下がるので却下。

まずは風魔法で行こう。


「ウィンドカッター!」


頭を切り落とすイメージで首を狙ったつもりがズレ、しかも魔力を込め過ぎたために頭が爆散してしまった。

2頭目は魔力を絞り狙いを定めて撃ったが、頭から尾に向かって真っ二つになってしまった。

難しい。。。


「誠司。アイスアローで眉間を狙ってみて。」


風魔法を諦めて、愛莉のアドバイス通り氷魔法に挑戦してみた。


「アイスアロー!」


狙い通り眉間に突き刺さった。

形の見えない風魔法より、形のある氷の矢の方が狙いやすかったのだ。

周囲を取り囲んでいたウルフを次々と倒した。

すると一回り大きな狼が現れた。


*鑑定

  種族: ハイウルフ(狼)

  ランク: F+

  スキル: かみつく、引っ搔く、遠吠え、統率、光属性耐性、闇属性耐性

  弱点: 眉間、腹

  アイテム: 魔石、討伐証明部位(犬歯)、毛皮、肉、牙、爪


おっと、上位種のようだ。

おそらくこの群れの率いているボスなのであろう。

まだ獲得していなかった光、闇の耐性を持っていたのでコピーさせてもらった。

その時、また脳内にアナウンスが流れたが今は確認している暇がないので後回しだ。

それに俺の放ったアイスアローはかわされてしまった。


「やつは君たちにはまだきついかもしれないので私も手を貸そう。」


「私も参戦するわね。」


「じゃあ、俺は物理で行くね。」


俺は剣を握り、職業を剣聖に切り替えた。

ジョイさんは大きな盾を構えた。


「挑発!」


ハイウルフはジョイさんに狙いを変えた。

ジョイさんが攻撃を防いでいる隙に、愛莉の魔法が炸裂する。


「パラライズ!」


麻痺し動けなくなったハイウルフの首を俺が切り落とした。


「ふぅ。二人ともケガはないか?」


「「大丈夫で~す。」」


ウルフとハイウルフの死体をインベントリに回収した。

そして、3人で河原の大きな石に座ってお昼を食べた。


「そうだ、忘れていたよ。王様から防御力があがる指輪を預かっていたんだった。渡しておくよ。」


すぐに鑑定してみた。


*鑑定

 奴隷の指輪

 DEF:+20

 スキル: 奴隷化(合言葉により発動する。合言葉:アレク様万歳)


『愛莉、奴隷の指輪だ。やはりあの王様は黒だったね。どうやら副団長さんは知らないらしい。騙されたフリをしよう。』


『わかったわ。じゃあ。お互いに奴隷契約をしてから指輪をはめましょう。』


指輪を装備した後で午後の狩りに向かった。

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