第6話 城の外とスライム

昨夜も俺の部屋に愛莉が来ていたのだが、当然のように何もなく朝を迎えた。

俺は前日寝ていなかったので、ベットに入った瞬間に意識を失ったからだ。


「良く寝た~。おはよう、愛莉。今日もかわいいぞ。」


「おはよう、誠司。朝っぱらから何を言っているのよ。でも、ありがとう。チュッ。」


ほっぺにキスをした愛莉も俺もお互い顔が真っ赤になってしまった。

誤魔化すように愛莉は自分の部屋に戻った。

俺はしばらく放心した後、装備を整え食堂へ向かった。

食堂に着くとガモジール団長が2人の兵士を連れて近づいてきた。


「おはよう、田中殿。今日はこの二人が君の護衛を務める。初級の魔物を狩るだけだが、予期せぬ強敵に遭遇してしまう場合もある。この二人に任せれば問題無いとは思うが十分に気を付けてくれ。」


「了解しました。よろしくお願いします。」


「俺はサム、こいつはジンだ。よろしくな。」


鑑定してみると2人ともLv.15程度で剣術ぐらいしかスキルを持っていなかった。

頼りにならないな。

朝食を済ませ、2人の案内で街の外へ向うことになった。

門までかなり距離があるということで馬車で送ってもらえることになった。


城は町の中央にあり、ここは王都と呼ばれる国の中心都市なのだそうだ。

街並みは中世ヨーロッパ風だった。

城も某ネズミの国のシンデレラ城のような作りになっていた。

俺は帰ったら愛莉に見せてあげようと思ってタブレットで写真を撮りまくった。


「田中殿、何をしているのですか?」


「まだ城から出ていない仲間たちに街並みを見せてあげようと思いまして。」


「なるほど。」


こいつら、護衛と言いながら俺の監視しているな。

俺が何かするたびに何をしているのかとしつこく聞いてくるのだ。

それに、もっとバレないようにメモを取ろうよ。

聞きながらメモとってたらバレバレだから。

しばらくすると門に着いたらしく、一旦止まった。

門番に止められたが城の馬車なのですぐに開放された。

程なくして草原に到着した。


「この辺りでいいでしょう。まずは初心者向けの魔物であるスライムを狩ります。」


「スライム?」


「田中殿の住んでいたところにはスライムは居なかったのですか?」


「いませんでした。」


「あれがスライムです。こちらから攻撃しない限り襲ってくることはありません。体内に黒とオレンジの核がありますが、黒は魔石、オレンジがコアです。どちらかを破壊すれば討伐できます。魔石は売ることができるのでコアの方を破壊することをお勧めします。」


残念ながらドロップ型でクリクリ眼で倒すと立ち上がり仲間になりたそうに見つめてくる某ゲームのかわいいスライムとは違っていた。

理科の授業で出てきたアメーバーに近い見た目だ。

俺はスライムという魔物を鑑定してみた。


*鑑定

  種族: スライム

  ランク: G

  スキル: 再生、分裂、物理攻撃耐性

  弱点: コア、魔石

  アイテム: 魔石


スキルをコピーさせてもらった後で、短剣で素早くコアを貫いた。

身体が弾け、魔石と破壊されたコアが残った。

魔石は拾い、インベントリに収納した。


「アイテムボックスですか?」


「まあ、そうです。」


インベントリというと驚かれてしまいそうなので、あえてアイテムボックスということにした。

アイテムボックスはクラスメイト全員が持っているのでバレても問題ないだろう。

スライムの気配を覚えたので気配探知で周囲を探った。

周囲には意外とたくさん隠れているようだ。

素早く移動しながらコアを貫いて次々と倒していった。

3匹目を倒したところで脳内にアナウンスが流れて力が湧いてきた。


《レベルが上がり、Lv.1からLv.2になりました。》


更に5匹狩るとLv.4に、10匹狩るとLv.5に上がった。

どんどん移動しながら狩っているとLv.10になっていた。

ふとそばに護衛の兵士が居ないことに気付いた。

いつの間にか巻いてしまったらしい。

仕方なく戻ると息切れしながら走ってくる兵士がいた。


「追いかける方の身にもなってください!」


「すいません。。。」


なんで怒られなきゃならんのだ。

俺に着いて来れるもっと優秀な護衛をつけてほしい。

帰ったらガモジール団長に抗議しよう。


「あの、兵士さん。Lv.10になったし、スライムに飽きてしまったので他の魔物が狩りたいです。」


「まさかこんなに早く狩場を替えることになるとは。召喚者のレベルアップ速度は異常ですね。私たちは1レベルを上げるのに数か月かかりますよ。じゃあ、次の狩場に向かいます。あそこに見える森が次の狩場です。ゴブリンという人型の魔物がいます。多少知恵があり、武器も使いますので注意してください。人型なので殺すときにためらう人がいます。躊躇するとこっちがやられますから今から覚悟を決めてください。」


魔物だが人型だとやはり後味が悪いな。

平和な世界で暮らしていた俺に殺せるだろうか。

足取り重く森へ向かった。

森の入口に着くと木の陰に気配を感じた。

陰から現れたのは身長1m程の緑の肌をした小鬼だった。

耳は尖り、牙を持ち、手には木の棒を握っている。


*鑑定

  種族: ゴブリン

  ランク: F-

  スキル: 棒術、回避

  弱点: 首

  アイテム: 魔石、討伐証明部位(右耳)、木の棒


俺を敵と認識したゴブリンは棒を振りかぶり走ってきた。

やらなきゃやられると心で何度もつぶやき覚悟を決めた。

攻撃をかわしながら背後にまわり、背中を斬りつけた。

うめき声を上げながら血を吹き出し倒れ動かなくなったゴブリン。

精神的に結構くるものがあった。

ストレスMAX状態になるとまた脳内にアナウンスが流れた。


《精神耐性を獲得しました。》


すっと心が軽くなった。

これで何とかなりそうだ。

ストレスから解放され、油断してしまった。

突然、矢が足に突き刺さった。

矢が飛んできた方を見ると弓を構えたゴブリンが居た。

足から矢を抜き、近くに落ちていた石を拾い、矢を撃ったゴブリン目掛けて投げつけた。

眉間に石が当たったゴブリンは息絶えた。

すると足が麻痺してきた。

鏃に毒が塗られていたらしい。

やばいぞ、このままでは毒で死ぬかもしれない。

護衛さんは毒消しの薬を持ってこなかったらしく慌てているだけだ。

本当に使えない護衛だ。

とにかく、職業を回復師に替えてみたが、どうやって治せば良いのかわからない。

おそらく回復魔法を使えるのだろうけど、魔法を使ったことがないのでどうしたら良いのかわからない。

幸い回復師とスライムからコピーしたスキル再生のおかげで何とか時間稼ぎができているようだ。

そこで一か八かで再生を進化させてみた。

再生から超再生となったことにより、毒に侵されるよりも再生が上回った。

そして、新たなスキルを得た。


《毒耐性を獲得しました。》


耐性を獲得したこともあり、毒を無害化し何とか危機を免れた。

まだ日は高いが今日は狩りを続行する気にはなれず、城に帰ることにした。

帰ったら愛莉に魔法を教えてもらおう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る