第14話  ある夫婦の物語 sideシリル

 俺は直ぐに――――とは言えそこはアンジェリカさ……アンジェリカの体調へ気を遣えばだ。


 叶うならば二人きりで話をしたいと彼女へ申し入れた。

 そうして翌日応接間で話をすると言う彼女をリザと二人で説得し、瘦せ衰えている彼女は寝台で休んだままという形で話をする事にしたのである。




 先ず俺は最初に何を話せばいいのかなんてわからない。

 一体何が始まりでそしてこれから何処へ――――それはもう当の昔に決めてはいた。

 だから向かう先の未来へ一切の変更はない。


 ただしそれをアンジェリカが受け入れてくれるのあらば……だ。


 取り敢えず俺は自分の幼い頃からの話をした。

 一人息子故にこのアッシュベリーを、引いてはこの王国を護る立派な盾となる為にどうしたかについて語ってもアンジェリカはきっと退屈をするのではと思えばだ。


「旦那様を知る事が出来て嬉しいですわ」


 恥ずかしそうにそう呟いたかと思えば、少しはにかんだアンジェリカの微笑みにまたしても俺は心臓が射抜かれてしまった。


 そうして次は……ああこれはきっと一種の公開処刑なのかもしれない。

 だがこれを話さなければ俺とアンジェリカに未来はないと思うからこそ俺は若干落ち着かない口調だったのかもしれない。

 

 16歳のアンジェリカに対し常に大人の余裕を見せていたいと思うのにだ。


 何故なのだろう。

 彼女の前では何時も同じ年頃の青年へと戻ってしまうのは……。


 そうあの日もそうだった。

 あれは今から十年前の事だった。

 王宮で初めてアンジェリカと出会った時も俺は幼い彼女に慰めて貰えばだ。

 当時俺は14歳だったのにも拘らず6歳のアンジェリカの前で年上の癖に泣いてしまったのだから……な。

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