第18話 負情も時には武器になる

 巨大な紅い人型が、"モール・モース"を相手に大立ち回りを演じていた。

 ジャンボちゃんと名づけられたそれは、言うなれば呪いの人形である。

 ヒトが抱く負情ストレスの中で、特に強烈なもの-主に恋愛関係色恋沙汰-を取り込み、それに苛まれ苦しむ者に平常をもたらす存在である。怪しげな商売と思われがちだが、実際は心理学とマギア魔術を融合させた立派な医療行為である。

 ジャンボちゃんは受容に優れた魔具であるが、一定量を超えると本体が巨大化する性質を持っていた。本来は、時間をかけて取り込んだ負情の浄化を行うのだが、地名度が上がるにつれて、その暇もない程の依頼が舞い込むようになってしまい、結果ジャンボちゃんは文字通りの巨躯にまで膨れ上がってしまった。困った癒イ師ゆいしたちが目を付けたのが、近年様変わりしたハロウィン収穫祭だった。

「たまには、こういうのもいいでしょ」

「恨まれてたヒトたちは、こんな目に合わずに済んだことを感謝すべきね」

 そういう癒イ師たちも、今夜ばかりは仕事の疲れストレスを派手に発散させていた。

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