第10話 ロコモティブ MODELYun×2

「いえやぁーーーい!!!」

 古典型式の蒸気機関車ロコモティブ MODELYun×2が、猛々しい狼煙のろしを噴き出しながら"モール・モース"を蹴散らしていた。

 上に跨がり、おおはしゃぎしている熊亜種ウルスの男の子を、おおはしゃぎしながら鳥亜種ハーピーの母が支え、その二人を熊亜種ウルスの父が落ち着いて支えている。

「君が一番はしゃいでないか」

「だってこんな事、私らが子どもの時にできなかったでしょ!」

「今もそうだろ。普段はだめだってちゃんと教えなよ」

「もちろんよ。でも、あなたもやって教えてあげてよね」

 彼らは、ハロウィンの夢ナイトメアの友達であり、この悪あがきに堂々と悪ノリした共宴者共犯者である。

 本来は機関車の上に跨ることは勿論、"モール・モース"を蹴散らすのに利用するのも許されない行為だが、ハロウィン収穫祭がもたらした享乱の空気と勢いがそれを実現させていた。

 その品性に欠けた往生際の悪い無秩序な祭典悪あがきに不快感を表す者も当然少なくはなかったが、そんな至極真っ当な意見よりも友人たち彼らが優先したのは、夢のような時間を純粋に楽しむ子ども息子の笑顔だった。

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