作品という名の世界
星埜銀杏
第一話、夢
…――君が、創り出す作品こそが僕にとって尊いものなんだよ。
イラストを描くのが好きな彼女。
僕は彼女の描き出す世界が、たまらなく好きだ。
ただウソつきだけど。
それがたまに傷かな。
そんな彼女の夢を見た。とても不思議な夢……。
目の前には、とても可愛い彼女。
夢の中で、薄く茶色くも長い髪が、風になびく。
小学生の時、隣の席になって、なんとなく話す仲になった。そして、いつの間にか好きになっていた。愛嬌のある容姿とウソつきでも愛らしい性格。決して美少女とは言えないけども、僕にとっては最高な人だ。もちろん彼女とは言えど……、
別に付き合ってるわけじゃない。
単なる幼馴染みで、小さい頃からの慣習で一緒にいるだけの仲。
彼女が頬を、ほんのり桜色に染め、うつむき、もじもじしながらもぽそりと一言。
「好きよ」
いやいや、好きって。
多分、友達としてだ。
「ずっと好きだったの。君と出会ってからずっと」
だから、
友達として、だよね?
「フフフ。その顔は信じてない顔。ずっと一緒にいたから分かる。そうね。もっとハッキリと言うわ。君を愛しているの。ねぇ、あたしと付き合ってくれる?」
真っ直ぐな想いをストレートな言葉に乗せてブラウンの瞳を、ゆっくりと閉じる。
僕は、どぎまぎしてしまい言葉を失ってしまう。
だって、そうだろう?
今まで、ずっと一緒に居て、飽きるほど一緒に居て、友達というのもおこがましいほどな仲なんだ。むしろ家族と言ってしまってもいい。夢の中での話とはいえ、そんな彼女から告白されたのだ。信じられるわけがない。あり得ないとさえ思う。
もちろん僕も彼女が好きだ。愛している。でも。
僕は、うつむいてしまい、彼女から視線を外す。
だって僕なんかが、君とじゃ釣り合わないから。
困って眉尻を下げる。
言葉が出ない出せない。どうしても応えられない。僕なんかじゃと思ってしまい。
「うん。そっか。それが君の応えなのね。ごめん。戸惑わせてさ」
と言うが早いか、目の前がかすむ。そののち、意識が覚醒する。
ベッドの中で天井を見つめる僕の目には、涙が、にじんでいた。
いつものカフェにて。
「うん?」
と彼女がアイスレモンティーに差し込まれたストローをくわえたままで聞き返す。
「だから君に告白される夢を見たの。あり得ないよね。君が僕にだよ? 今、欲求不満なのかな。君に女を感じるなんてさ。どうも調子が狂うよ。そう思わない?」
僕は珈琲カップを机の上に置き、人差し指を立てて、力説する。
彼女は、僕の事をどう思っているのかという反応を見たいという思いもあったからカフェに呼び出した。もちろん否定したのは恥ずかし紛れ。上目遣いで彼女を見つめる。さて、どんなリアクションが返ってくるのかと、いくらか心が逸る。
彼女は、
「そっか」
と言って、レモンティーを飲み干す。
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