第10話 前期の合格発表 残機1つ

ああ、神様、ひどい人だあなたは


あんなに祈ったのに

何故


何が分からないって、何が不思議って

涙が出ない

力が抜けていくだけ


なぜ泣けない? なぜ泣かない?

ショック過ぎた? そこそこ覚悟してた?


覚悟はしてたかもしれない

祈りながらも、心のどこかで思ってた


この後泣くかもしれない、でも今は泣いてない



頭を回せ、まだ涙で溺れていないうちに

この正体を探せ


負け惜しみだろうか

本当にそこに行きたかった? 問題文好きだった? 好みじゃなかったね

家から通えるところ。ってとこばかりフォーカスしてた? 

正直いうとB大の方が面白そうな先生いるし、分野もよさげ、いや、まあ、私世界史下手くそなんだけどさ。点取れてないし

でも後期の小論文見ても、B大の方が文が好き。

私のいく場所はそこじゃなかったのだろうか


母さんを1人にすることが一番申し訳なく感じる

電話とかしなきゃな


後期にかけろ

神様が、私に奇跡をくれなかったというのなら、きっと後期の方が良いと思ったんだろう

まさかここで見捨てる人じゃないはずだ


大学について調べまくろう



ここまで心が落ち着いているのはきっと後悔がないから

自己採点した時点で無理だろ、とは思ってた

挑戦すら出来ないだろうと思ってた

でもやれた

親も先生もやっていいよと言ってくれた

それが嬉しかった


私の読みは合ってたらしい

あのままB大に出すのと、挑戦して落ちるかもしれないのとだと、私はきっと逃げたことを一番後悔する

本心が実はどうだったかはともかくとして、3年間行こうと決めていた大学だった。それに挑戦すら出来ずにいたら、きっと後悔している。背を向けた事に後悔する。


挑戦出来た。させてもらえた

結果はもちろん残念だ、奇跡を掴ませてもらえなかった事が悲しい


だけども後悔はない


きっとこうなったのには、何か理由があるんだろう

やってやるさ


————

朝が来ないで欲しいと。誰かに明日を切り取って欲しいと祈った前日。

自分の番号が飛ばされたのを見た時、泣き崩れるかと思った。壊れるんじゃないかと。

だけどもそんな事もなく。涙も出なかったのが衝撃だった。なぜ泣けない?

余程ショックだったのか? と困惑しながら親に報告した。


B大の方が良さげだもん! の下りは負け惜しみに見える。B大も勿論良かったけど、やっぱり第一志望のAの方が、少しでも群牌は上がってたわけで……


後悔はない、と書いていた。

これはそう。事実

今も後悔は無い。挑戦出来たことが何よりも嬉しかった。

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